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岩波文庫ならこれを読んでおけ【おすすめの名作11冊】

2024年7月12日まとめ記事, 文庫おすすめ

今ではそこらじゅうで見かける文庫という形態。

これを日本で最初に実現したのが岩波文庫です。ちなみにモデルはドイツのレクラム文庫。

背表紙の色によって次のように種類がわかれています。

・青 哲学などの人文系
・白 社会科学系
・赤 世界文学
・緑 日本文学
・黄 近代以前の日本の古典文学

岩波文庫に収録されている作品を読んでいけば、世界で古典とされている重要書にはだいたい目を通せます。

どれから読めばいいのか?

以下、僕の独断と偏見でおすすめ作品を挙げるので、参考にしてみてください。

最近はnoteに書評とか哲学解説とか書いてます↓

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

イギリス文学を代表する作家ディケンズの自伝的小説。

たとえばジェイン・オースティンやドストエフスキーなら岩波文庫にこだわる必要はないのですが、この本に関しては岩波文庫で読むのが正解です。

ディケンズの最大の武器はユーモアにあるのですが、それを日本語に移し替えるのは並大抵の技じゃないんですよね。しかしこの石塚裕子の日本語訳はそれを成し遂げています。読んでてむちゃくちゃ笑える。だから岩波文庫バージョンで読むのが正解。

もちろん笑えるだけでなくて、喜怒哀楽のすべてがつまった最高の作品です。

関連:世界文学最高傑作のひとつ『デイヴィッド・コパフィールド』

 

サマセット・モーム『世界の十大小説』

こちらもイギリスの小説家であるモームが、独断と偏見で世界文学からベスト10を選んだ本。

いわゆる文芸批評ですが、単純に読み物としておもしろいです。知っている作品の評価を読むのも楽しいですし、知らない作品について興味をかきたててくれるのもグッド。

モームといえば『月と6ペンス』などの小説で有名ですが、個人的にはこういう評論文を書かせたほうがおもしろいと思います。

関連:海外文学ならこれを読んでおけ【おすすめ名作13冊】

 

オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』

12世紀ペルシアの詩人オマル・ハイヤームによる伝説的な作品。フィッツジェラルドによる英訳で、西洋でも有名になりました。

当時のイスラム世界は中国やインドと並ぶ、あるいはそれ以上の文化的覇権地域でした。オマル・ハイヤームはこの時代を代表する科学者・哲学者でもあります。

とはいえ、『ルバイヤート』はわれわれが「イスラム」と聞いてイメージするものとはだいぶトーンが違います。

もともと無理やりつれ出された世界なんだ、
生きて悩みのほか得るところ何があったか?
今は、何のために来たり住みそして去るのやら
わかりもしないで、しぶしぶ世を去るのだ!

(オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』小川亮作訳)

ハイヤームは諦めの境地を突き抜けた果てで刹那の宴会を開き、ひたすら酒を飲みまくります。何気に日本人と相性のよさそうな世界観です。

 

ミルトン『失楽園』

シェイクスピアと並び称される英国の大詩人ミルトン。彼の代表作『失楽園』(パラダイス・ロストの名でも有名)が平井正穂の名訳で読めます。

主人公はサタン(堕天使ルシファー)です。神に反抗し地獄へと落とされたサタンが、神への復讐を誓いそれを企てている。

この時点で中二感がありますが、実際、いい意味で中二エネルギーがほとばしる名作です。シェイクスピアとはまた違った方向性で名文のオンパレード。

本作ラストは旧約聖書の創世記につながります。サタンにそそのかされ、悪魔の実を口にするイブとアダム。地上に降り立つふたりの描写には涙を禁じえません。

関連:神vsサタンに巻き込まれた人間 ミルトン『失楽園』【書評】

 

永井荷風『断腸亭日乗』

永井荷風は死の直前まで日記をつけていたといいます。全集で3,000ページにもおよぶその日記から、インパクトのある部分をピックアップし、文庫化したのがこの作品。

上巻は1917年から始まり、下巻のラストは1959年。ハイライトはやはり戦時中の東京大空襲の記述でしょうか。しかしどうでもよさげな日常にも趣があります。謎の中毒性。

文章はすべて古文ぽい文体です。最初は面くらいますが、古文が苦手な僕でも慣れればわりとスラスラ読めました。最強の散文家・森鴎外に憧れ、その技を観察した荷風だけあって、キリッとした格好いい文章です。

関連:純文学嫌いが選ぶ日本文学おすすめ12冊【古典から現代まで】

 

ハイデガー『存在と時間』

哲学書からも一冊。20世紀ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーの『存在と時間』を挙げておきます。なぜこれなのかというと、僕がいちばん好きな哲学書だからです。

岩波文庫には昔からこの本の日本語訳があったのですが、このバージョンは2013年に熊野純彦によって訳された新しいバージョンです。

ハイデガーは最難関みたいなイメージができあがっていますが、実際にはそうでもありません。入門書で全体像をつかんでおけばわりとなんとかなります。そしてなにより、ハイデガーの本は読み物としてめちゃくちゃ面白い。

関連:ハイデガーに入門するのは意外と難しくない【おすすめ入門書7選とおまけ】

僕の好みを抜きにして岩波文庫から哲学書をおすすめするとしたら、やはりプラトンになります。

プラトンの主要作品はだいたい揃っているので(そしてどれも読みやすい)、片っ端から読んでいけば相当な経験値がたまると思います。

関連:哲学の古典ならこれを読んでおけ【初心者から中級者までおすすめ10冊】

 

ウィリアム・ジェイムズ『宗教的経験の諸相』

アメリカ哲学界の大ボスにして、プラグマティズムの元祖のひとりでもあるウィリアム・ジェイムズ。彼の代表作のひとつがこの『宗教的経験の諸相』です。ハーバード大学で行われた講演が元になっています。

宗教を内在的に理解しようとする試み。宗教的経験はどのような色彩を帯びてたち現れるのか。それは信仰者にとってどのような意味をもっているのか。宗教の内的な核心を、前向きかつ肯定的に語ります。

この本はウィトゲンシュタインの愛読書でもありました。また夏目漱石や西田幾多郎もジェイムズから影響を受けています。

関連:宗教学のおすすめ本はこれ【入門書から古典的名著まで11冊】

 

『ブッダのことば スッタニパータ』

最強のアウトサイダーにして人類の心の救世主ゴータマ・シッダールタ。仏教の祖である彼のことばを収録した聖典がこの『スッタニパータ』です。

音声に驚かない獅子のように、網にとらえられない風のように、水に汚されない蓮のように、犀の角のようにただ独り歩め。(『ブッダのことば』中村元訳)

仏教書は何冊もありますが、本書はもっとも古い聖典であるとされます。したがってゴータマその人の教えに近いと考えられます。

ちなみに「ブッダ」とは覚醒者の意味で、ゴータマ以前にも以降にもブッダは何人もいます。ゴータマは悟りを開いた偉大な覚者のひとりです。

巻末には中村元の膨大な訳注がついていて、かなり有益。最初はブッダのことばだけに集中すべきですが、2回目に読むときは訳注を参照しながら読むといろいろな発見があると思います。

またインドの宗教書といえば『バガヴァッド・ギーター』が最重要ですが、これも岩波文庫に入っています。文学作品としても異様に優れているためか、こちらは赤に収録されています。

関連:東洋哲学の独学におすすめの本7選【入門者向け】

 

トマス・ア・ケンピス『キリストにならいて』

キリスト教からも一冊。聖書につぐベストセラーともいわれる『キリストにならいて』です。作者のトマス・ア・ケンピスは14世紀ドイツの人。

キリスト教徒でなくとも、この本からは尋常ならざる感興を得ることができます。

今(この世で)もしあなたが自分自身のために心配しておかないなら、だれが将来(先の世で)あなたのために心配しようか。今こそ極ごく貴重な時機、今が救いの日、今がありがたい時である。それなのに、この機会をあなたがもっと有益に用いないとは、なんという悲しいことだろう。この時にこそ、それによってあなたが永遠の生に至る、その功徳を得るにも値しように。(トマス・ア・ケンピス『キリストにならいて』大沢章・呉茂一訳)

死の後に、誰があなたを覚えていよう。また誰があなたのために祈ろう。おこないなさい、今おこなうのだ、最愛のわが魂よ、することのできるどんなことでも。(同書)

さればその方(イエス)に愛をささげ、あなたの友として保持しなさい。彼はすべての人があなたを捨てても、立ち去らず、あなたがついには滅びることを放っておかれないであろうから。すべてのものと、いつかあなたは別れなければならないのだ、欲しようと欲すまいと。(同書)

キリスト教ならカール・ヒルティもおすすめ。『幸福論』と『眠られぬ夜のために』が岩波文庫で読めます。

ちなみにイスラム教なら井筒俊彦の『イスラーム文化』が非常に強力な入門書です。コーランも井筒訳で岩波文庫に入ってます。

関連:宗教とスピリチュアル系の名著はこれ【おすすめ7冊】

 

岡義武『明治政治史』

日本を代表する政治学者・岡義武の『明治政治史』。明治維新前夜の江戸の封建体制から始まり、日清・日露戦争後までを語りきります。

岡はアカデミズムの重鎮でしたが、その文章力にはなにか魔術的なものがあり、グイグイと読者を引っ張っていきます。易しい文章とはいえない堅い文体ではあるのですが、なぜか読みやすく、そしてとてつもなく面白いのです。

『転換期の大正』も岩波文庫から出ていて、こちらは大正時代を扱っています。ただしこっちはやや読みにくい(たぶん対象となっている大正時代の性格のせい)

岩波現代文庫のほうでは『国際政治史』という名著もあります。こちらはヨーロッパの近代史をメインに語っていて、個人的には岡の著作でナンバーワンだと思います。

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カー『危機の二十年』

最後に白版からも一冊。20世紀を代表する政治学者カーの『危機の二十年』です。

第一次世界大戦と第二次世界大戦のあいだの20年を分析した名著。国際政治学のジャンルを代表する古典です。現実主義的な観点から当時の国際政治の展開をたどっていきます。

岡義武もそうでしたが、カーも文章力に独特の味があって、読み物としても大きな魅力を放っています(同じく岩波文庫で読めるモーゲンソーの名著『国際政治』にはこれがない)。カーは19世紀ロシア文学の研究者でもありますから、それが影響しているのかもしれません。

白版ではシュミットの『現代議会主義の精神史的状況』もおすすめ。タイトルはなんだか渋いですが、実はシュミットならこれが一番面白いです。

あとはトクヴィルの『アメリカのデモクラシー』やマルクスの『ドイツ・イデオロギー』も面白いです。

関連:政治を独学したい人におすすめの本8冊【入門書から古典まで】

 

以上、岩波文庫のおすすめ本でした。新しい名著を見つけたらまたアプデしていきます。

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