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哲学の古典ならこれを読んでおけ【初心者から中級者までおすすめ10冊】

2024年1月9日まとめ記事

哲学書に興味のある人向けに、読みやすい古典を紹介します。

入門書とかじゃなくて、すべて古典です。ガチガチの哲学書ですね。哲学書だからといってかならずしも難解な文体で書かれているわけじゃないんです。

異常な文体で書かれているようなのを上手く避ければ、いきなりガチガチの哲学書に突撃してもけっこう読めるものです。

今回は伝説的な古典にして初心者にも読みやすい、10冊の哲学書を紹介します。

哲学の解説記事はnoteに書いてます↓

初心者におすすめの哲学書

まずは初心者レベルの読みやすいやつから。

プラトン『ソクラテスの弁明』

まずは哲学の王プラトンの作品から。プラトンはギリシア哲学の代表者にして、西洋哲学の流れを支配する大ボスです。

そのプラトンの最初の作品が『ソクラテスの弁明』。

ソクラテスはプラトンの先生。アテネによって死刑を宣告されたソクラテスが、自分の無実を訴えるのが本書の内容です。そのなかでソクラテスの思想が浮き彫りにされていきます。

プラトンは師のソクラテスを主人公にした対話篇(劇みたいな形式で書かれた哲学書)を後にいくつも書き、後の世界に深刻な影響をあたえます。ただ、ソクラテスを主人公にしているものの、その内容はプラトン本人の思想なんですね。

しかし第一作目の『ソクラテスの弁明』はプラトンによる脚色が薄めで、ソクラテス本人のすがたが鮮明に浮かび上がります。

文章も読みやすいです。プラトンは文学者としても異常な才能にめぐまれた美文家でした。

アマゾンのオーディブルからオーディオブック版も出ています。

プラトンのざっくり解説はnoteのほうに書きました↓

 

なおプラトンと並び称されるアリストテレスは師プラトンと違って難解さをきわめているので、基本的にはおすすめできません。

関連:アリストテレスの形而上学をわかりやすく解説【プラトンとの違いはこれ】

 

マルクス・アウレリウス『自省録』

ローマ帝国の五賢帝がひとり、マルクス・アウレリウス・アントニヌスの著作です。

プラトンは哲学者が国を統治する哲人王を理想としましたが、その唯一に近い例がローマ帝国の皇帝マルクス・アウレリウスです。

彼が打ち出すのはストア派の思想。エピクテトスのそれを受け継いでいます。初期仏教を思わせるような自律的な倫理学が、短い、無数の断章のなかでつづられていく。とても読みやすい構成です。

エピクテトスは奴隷の身分でした。その思想を皇帝が引き継いでいる。この事態そのものが、ストア思想を体現しているといえそうです。

アマゾンのオーディブルからオーディオブック版も出ています。

関連:哲人皇帝のストア哲学 マルクス・アウレリウス『自省録』【書評】

 

デカルト『方法序説』

近代哲学の祖デカルトの著作です。プラトンの次に影響力の大きな哲学者といえば、アリストテレスかデカルトになるでしょう。

現代は近代の乗り越えをテーマにしていますから、現代の哲学や科学ではデカルトはたいてい敵として登場します。それだけ巨大な存在ということですね。

『方法序説』は彼が一般の読者向けに書き下ろしたもの。ゆえに原書はラテン語ではなく、フランス語が使われています。

文章も平易。おまけに分量が少ない。文庫で本文100ページ足らずです。長いのは挫折のもとですから、まずはこういう短いのを読むのがいいです。

「我思う故に我あり」を始めとした、デカルトの根本思想をつかめます。

アマゾンのオーディブルにオーディオブック版もあります。

 

ハイネ『ドイツ古典哲学の本質』

哲学といえば近代ドイツを外すことはできません。古代ギリシアと近代ドイツ、これが双璧ですから。

しかし残念なことに、初心者におすすめできるような古典がないのがドイツ。正常な精神の持ち主が書いたとは信じられないような、異常な文体の著作ばかりなんですよね。

カント、ヘーゲル、ハイデガーあたりはぜひとも読みたいものですが、あんなのを読めというのは無茶がすぎる。

ということでここでは、ハイネの『ドイツ古典哲学の本質』をおすすめします。詩人のハイネが、フランス人向けにドイツ哲学を解説した本。

哲学の古典といえるかは微妙ですが、偉大な名著であることは確かです。知る人ぞ知る、マニアックな名作。

近代のドイツ哲学史がわかりやすく、しかもユーモアを混じえて、解説されます。楽しく読める本です。

カントとかヘーゲルとかハイデガーとかを読みたい場合は、さすがに入門書を何冊か漁ったほうがいいです。いきなり読むのはまず無理ですので。

カントの『純粋理性批判』に入門するにはこの本【おすすめ5冊】
ハイデガーに入門するのは意外と難しくない【おすすめ入門書7選とおまけ】

 

老子

次は東洋哲学からも一冊。中国哲学を代表する老荘思想から、老子の文章をおすすめします。

東洋哲学のなかでもっとも深い思想のひとつがこれ。おまけに読みやすい。

中公文庫のバージョンがおすすめです。値段が安いからです。また、わかりやすい日本語に訳されているだけでなく、元の漢文と読み下し文も掲載されています。

たとえば第20章の「絶学無憂」という漢文を、「学を絶たば憂い無からん」と読み下し、「学ぶことを捨てよ、そうすれば思いわずらうことはなかろう」と訳しています。

ボリュームの少なさもポイント。170ページくらいですから、挫折する危険性が低いのです。

莊子も中公クラシックスから出ていて文章も読みやすいのですが、あっちは分量が多いんですよね。だから最初は老子にしたほうがいいです。

関連:東洋哲学の独学におすすめの本7選【入門者向け】

 

脱初心者におすすめの哲学書

次に初心者レベルよりもやや難しめの本。意味不明レベルではありませんが、このへんになると負荷が強くなってくる感じ。

ニーチェ『喜ばしき知恵』(河出文庫)

ニーチェといえば『ツァラトゥストラ』が有名ですが、あれはよっぽど相性がよくないと意味不明で冗長な作品なので、最初に読むのはおすすめしません。

読みやすいのは『喜ばしき知恵』か『善悪の彼岸』のどっちか。

『喜ばしき知恵』は初期と後期をつなぎニーチェ思想のあらゆる要素を反映するような作品ですから、こっちをおすすめします。

訳も新しいものが出ていて、村井則夫による新訳(2012年)が河出文庫で読めます。

われわれはあのエジプトの若者の二の舞を演じることはなかろう。夜も更けてから神殿で悶着を起こし、ご神体を抱擁し、しかるべき理由あって薄物で蔽われているものをことごとく剥ぎ取って、丸裸にして、日の光のもとにさらけ出そうとする、あの若者の二の舞は―。いやはや、こんな悪趣味、この真理への意志、「何を失おうとも真理を」求めるこの意志、真理への愛に憑かれた青臭い妄想―そんなものは願い下げだ。(『喜ばしき知恵』村井則夫訳)

ちなみにニーチェの入門書でもっとも明快なのは清水真木の『ニーチェ入門』です。

関連:ニーチェ入門にはこの6冊がおすすめ【解説書から本人の著作まで】

 

バークリー『ハイラスとフィロナスの三つの対話』

次はイギリス哲学から一冊。哲学史ではよく、ドイツやフランスなどヨーロッパ大陸の大陸合理論に対して、イギリス経験論と呼ばれます。

イギリス哲学は大陸哲学に比べて文章が易しめですが、なかでもオススメなのがバークリーの『ハイラスとフィロナスの三つの対話』。

なぜこれがいいかというと、タイトルに対話とあるように、プラトンのような対話篇で書かれているからです。すごく読みやすいんですね。

マイルドな雰囲気のわりに、内容がぶっとんでいる点もグッドです。退屈しません。

イギリス哲学ではヒュームの『自然宗教をめぐる対話』も対話篇ですが、あっちはかなり読みにくいので入門者向けではないです。ただヒュームはむちゃくちゃ重要な思想家なので、いつかは読むべきですね。

関連:ヒュームを読むならこれがおすすめ『自然宗教をめぐる対話』【書評】

 

ジェイムズ『プラグマティズム』(岩波文庫)

アメリカ哲学といえばプラグマティズム。簡単にいうと「現実の役に立てばそれは真実だ」という考え方です。

たとえばある人物がとある神様の概念を発明し、それに従って善行をほどこしまくり、世の中を良くしたとしましょう。プラグマティズムによれば、この神の概念は「善」であるばかりか「真」でもあります。

そしてこのプラグマティズムの始原の一人がウィリアム・ジェイムズです。彼の『プラグマティズム』は岩波文庫で読むことができます。

ついでにいっておくと、英米系の哲学はヨーロッパのそれと比べると文章がずっと易しいです。

関連:アメリカ哲学の祖ジェイムズ『プラグマティズム』【書評】

 

ヘーゲル『哲学史講義』(河出文庫)

ヘーゲルといえば西洋哲学の最難関。『精神現象学』や『大論理学』といった著作に手を出そうものなら、心を折られ哲学が嫌いになること必定。

しかし実は彼の講義録は文章がていねいで易しく、中級レベルの読みやすさを誇っているのです。

ヘーゲルの講義で有名なのは『歴史哲学講義』ですが、あれは西洋中心史観を体現する文化的骨董品でしかないのでスルー推奨(序言は有益ですが)。

むしろ『哲学史講義』のほうがいいです。哲学史の復習をしつつヘーゲル独自の考え方に入門できるという優れもの。

2017年に文庫化されました。長谷川宏の流れるような訳文が読みやすいです。

関連:ヘーゲルの精神現象学が難しすぎる件【入門におすすめの本はこれ】

 

柄谷行人『探求』

せっかくだから最後に日本の作品も入れておきたい。ということで柄谷行人の『探求』を推しておきます。

柄谷は文芸批評家であり、アカデミックな分類でいえば哲学者ではありません。したがって彼の著作を哲学書扱いすると、哲学分野の人たちから白い目で見られるリスクがあるので注意が必要。

しかしその思考は鋭いです。しかも日本だけでなく、アメリカやアジアなど海外でも評価されています。

さらに凄いのは、文章が易しい点。やや堅めのエッセイみたいな文章で、極度に凝縮された思考をつづるのです。この芸当はきわめてレア。初心者に柄谷をおすすめできる理由のひとつです。

この『探求』は1980年代の著作です。デカルト、スピノザ、キルケゴール、マルクス、フロイト、ソシュール、ウィトゲンシュタインなど様々な思想家に依拠しつつ、オリジナルの思想が構築されていきます。

日本の哲学書でしたら戦前の大ボス西田幾多郎の『善の研究』もおすすめです。ただし相当に難しいので後に回すのが賢明でしょう。

関連:柄谷行人に入門するならこれ【前期~後期のおすすめ本】

 

まとめ

以上、初心者~脱初心者におすすめできる哲学書を紹介しました。

・プラトン『ソクラテスの弁明』
・マルクス・アウレリウス『自省録』
・デカルト『方法序説』
・バークリー『ハイラスとフィロナスの三つの対話』
・ハイネ『ドイツ古典哲学の本質』
・老子
・ニーチェ『喜ばしき知恵』
・ジェイムズ『プラグマティズム』
・ヘーゲル『哲学史講義』
・柄谷行人『探求』

このへんでしたら比較的読みやすいので、いきなり突撃してもそこそこなんとかなると思います。

哲学入門には哲学史から入るのもおすすめです。

哲学の解説記事はnoteに書いてますのでよろしければ↓