世界史の独学におすすめの本はこの8冊【参考書から歴史小説まで】

「なんか急に世界史の勉強がしたくなってきたんだけど、わかりやすい本とかってある?かといって質の低いのは嫌なんだけど…」

このページでは以上のような問いかけにお答えしたいと思います。

実は僕も大人になってからにわかに世界史熱が高まり、世界史関連の本を集中的に読んだ経験があります。少なくとも100冊は読んだはず。

その経験をもとに、質が高くおまけに理解しやすい、そんな良書を紹介させていただこうと思います。

青木裕司『世界史B講義の実況中継』

高校生用の有名な受験参考書ですが、大人が読んでも圧倒的に効果があります。まずはこれで高校レベルの世界史の基礎知識をざっと身につけるのがおすすめ。もっと本格的でレベルの高い名著を読んでいくための土台になります。

といっても日本の高校生が習う世界史はむやみにレベルが高いので、本書をマスターするだけでも相当な高みにまで行けますけどね。

CDが付いているのも実況中継シリーズの大きな長所です。オーディオブックみたいに耳で内容を聴けるので、予習・復習に役立ちます。復習もかねて寝る前に本書を聴くと、知識が深く定着するとともに、睡眠導入剤にもなって一石二鳥です。

受験生ではないのですから、律儀に赤文字を全部覚えたりする必要はありません。あくまでも大きな流れを把握するためにざっと通読していきます。基礎固めはこれで完了します。

定番になっている山川の世界史教科書とか、マクニールの『世界史』(中公文庫)とかは読まなくていいです。記述が無味乾燥で、よほどの気力がなければ途中で挫折するので。読むにしてもある程度の知識が身についた後にしたほうがいいと思います。

 

岡本隆司『世界史序説 アジア史から一望する』(ちくま新書)

アジアから世界史を語り直す野心作です。アジアといっても日本や中国などの東アジアではなく、シルクロードが貫く中央アジアが主役。

このエリアの動向が、いかに世界の歴史を駆動してきたか。日本史も西洋史も、中央アジアを核とする統一的な世界史のなかに位置づけられていきます。

西洋を中心にした世界史、あるいはそれをモデルにした日本史が、基本的に現代のわれわれの頭を洗脳していますよね。その常識が覆されていって目からウロコが落ちますよ。

関連:中央アジアこそが世界史の中心だった 『世界史序説』【書評】

ちなみにこの著者は中国史を専門にしているお方。『世界史とつなげて学ぶ中国全史』などの良書を多数出しているので、中国史に興味のある人にはそっちもおすすめです。

 

『フランス革命 歴史における劇薬』(岩波ジュニア新書)

世界史の教科書でもっとも大きな扱いをされる事象といえばフランス革命。でもフランス革命がなんなのかっていまいちよくわからないですよね。ナポレオンとかでも、結局なにした人なのみたいな。

本書はそれを学生向けにわかりやすく解説した名著にして、岩波ジュニア新書を代表する作品のひとつです。大革命がもたらした光の部分だけでなく、影の部分にも着目します。

圧倒的にわかりやすく、「これそういうことだったのか」と膝を打つ場面がなんどもあると思います。そして文章から静かにあふれるパッションが独特の雰囲気を醸し出します。

ちなみにフランス革命を扱った書物でもっとも有名なのは、ミシュレの『フランス革命史』(中公文庫)です。ちょっと笑ってしまうほど熱い文体が個性的。別に必読ではありませんが、興味のある人は読んでみても面白いと思います。

 

ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』

イスラエルの歴史学者による世界的ベストセラー。日本でも2016年に発売されるやいなや飛ぶように売れました。

人類7万年の歴史を一気に物語る本。とくに3つの革命(認知革命、農業革命、科学革命)に焦点が当てられます。

認知革命がいかにホモサピエンスを人類の王者に押し上げたか(人類はホモサピエンス以外にもいた)、農業革命がいかにホモサピエンスを貧困の罠に閉じ込めたのか(狩猟採集時代のほうが豊かだった)、科学革命がいかにホモサピエンスを種の終わりへと導きつつあるのか。鋭い観察が、すこぶるわかりやすい文章で綴られていきます。

ただしハラリはむやみに唯物論的かつ悲観的な人なので、そこにあまり染まらないように注意したほうがいいと思います。

関連:【洋書】『サピエンス全史』を英語で読んでみた【書評】

 

川北稔『世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界』(ちくま学芸文庫)

ウォーラーステインの世界システム論と呼ばれる有名な学説があります。世界全体をひとつの社会システムと捉え、マルクスが時間的に捉えた地域ごとの発展段階の差を、空間的に捉えなおすものです。

たとえば発展途上国はマルクス的に捉えれば発展レースの劣等生にすぎませんが、ウォーラーステイン的に見ると、それは世界システムの中心が栄えるために必要な搾取の対象として周辺に存在するのです。中心の発展のためには周辺が必要。このように世界全体をひとつのシステムとして捉えるのが世界システム論です。

本書はその世界システム論にのっとり、近代以降の世界システムの歴史をわかりやすくコンパクトに解説した良書。なぜ西洋が発展したのか?なぜアジアは急に西洋に追い抜かれてしまったのか?こうした疑問に答えてくれます。

関連:移り変わる覇権国家『世界システム論講義』【書評】

なおこの著者の本は『砂糖の世界史』(岩波ジュニア新書)も有名です。こちらは砂糖という一商品に着目して世界システムの歴史を語るような構成になってます。

 

岡義武『国際政治史』

戦後の政治学界の大ボスによる古典的名著。17世紀のウェストファリア条約以降のヨーロッパ国際政治がテーマです。

フランス革命、ナポレオンの登場と没落、ウィーン体制の成立、第一次世界大戦、第二次世界大戦…これらの歴史が国際政治の視点から語れていきます。近世~近代史としても読むことができるわけです。

いかにもアカデミックな堅い文章、なのに魔術的に面白い。それが岡の作品の特徴で、本書もその例に漏れません。世界史が好きなら間違いなく楽しめるはず。

関連:ナポレオン戦争とはなんだったのか?岡義武『国際政治史』【書評】

ちなみに同タイプの本ではヘンリー・キッシンジャーの『外交』もすさまじく面白いので、気が向いたら読んでみてください。

 

フェルナン・ブローデル『歴史入門』

20世紀でもっともビッグな歴史学者といえばフェルナン・ブローデル。本書は彼が行った講演を本にしたもので、代表作『物質文明・経済・資本主義』への入門編になっています。コンパクトな本でページ数は本文だけだと140ページくらい。

ウォーラーステインにも通じる空間的な世界史把握、そして民衆生活への着目、この2点がブローデルの特徴です。本書を読むとその世界観をざっくり味わえます。『歴史入門』というタイトルですが、実際には「ブローデル入門」だと思っておいたほうがいいかも。

必読というわけではないけれども、頂点に君臨する歴史学者の著作を味わっておくのは一興だと思います。

 

マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』

最後に歴史小説も紹介しておきます。「歴史を学習するときに歴史小説は使うな」とはよく言われることですが、まあ補助的に楽しむぶんには問題ないでしょう。

マーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』はアメリカ文学でもっとも人気のある作品のひとつ。実はこれアメリカ南北戦争を題材にした歴史小説でもあります。

南部の白人から見た南北戦争が描かれているので、教科書的な記述からでは得られない視点を知ることができます。普通は勝者となった北部の白人や、あるいは南部の黒人奴隷の視点で描かれますからね。

他の有名所ではトルストイの『戦争と平和』はナポレオン戦争の時代を描いた歴史小説でもあります。登場人物としてふつうにナポレオン出てきます。

現代ではケン・フォレットが有名です。ベストセラーになった『大聖堂』に代表されるように、中世ヨーロッパのキリスト教社会を描くことが多いです。

以上、世界史の独学におすすめの本を紹介しました。これはと思えるようなテキストを見つけたら、随時アプデしていこうと思います。