東洋哲学の独学におすすめの本7選【入門者向け】

2021年7月6日仏教

「東洋哲学に興味が出てきたんだけど、どうやって入門すればいんだろう?」

このような疑問をもつ方には、まずインドと中国と日本の哲学史をざっくり把握してみることをオススメします。

哲学というものは思想家同士の対話で成り立っていますから、その歴史を眺めてみることで、個々の議論がどのような意味をもつのかがつかみやすくなるんですね。

したがってまずは哲学史をざっくり勉強するのが最適解なのです。

ではどのような本を読めばいいのか?以下、特におすすめの良書を紹介します。

なお初心者でも読みやすい哲学書については以下の記事を参考にどうぞ。

飲茶『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』

一冊目にはこれをおすすめします。河出文庫から出ている『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』です。

飲茶とかいう謎の人物が著者だし、ふざけたタイトルだし、中身をパラパラめくってみると変なイラストとか載ってるしで、スルーしたくなる気持ちはわかります。しかし侮るなかれ。これは本物の良書です。

説明が例えが異様にわかりやすく、しかも面白い。しかし真に重要なのは、説明の対象となることがらがきわめて本質的だという点です。

著者は東洋哲学と西洋哲学を対比して、西洋哲学は伝達可能性をベースにした論理の体系、東洋哲学は伝達不可能性の体験知をベースにした方便の体系であると述べます。この体験知というところが重要。ところどころに挟まれるコラムで、著者はこの事柄をなんども繰り返します。

わかりやすいだけなら他にもあると思います。しかし東洋哲学のコアをここまで口を酸っぱくして叩き込んでくれる入門書(というか入門書に限らず)は非常にレアだと思う。

哲学史の良書がかならずしも哲学的とは限らないのですが、本書は例外の一つ。わかりやすく東洋哲学の流れをインプットできるうえに、哲学的な見方や考え方にも感染することのできる超良書です。

 

「仏教の思想」シリーズ

実は仏教には最強の入門書シリーズが存在します。それが角川ソフィア文庫から出ている「仏教の思想」シリーズです。

全12巻という異常なボリューム。最初の4巻がインド編、次の4巻が中国編、最後の4巻が日本編です。

それぞれの巻のおもな内容は以下の通り。

・1巻 仏教の始原ブッダについて
・2巻 古代インドのアビダルマ哲学について
・3巻 古代インドの中観思想について
・4巻 古代インドの唯識思想について

・5巻 中国の天台思想について
・6巻 中国の華厳思想について
・7巻 中国の浄土思想について
・8巻 中国の禅について

・9巻 空海について
・10巻 親鸞について
・11巻 道元について
・12巻 日蓮について

 

全部を通読するのは大変どころの騒ぎではないので、気の向いたときに、気になった巻から読んでいくのがいいと思います。

中盤に対談が掲載されている構成もグッド。理論的な説明パートは正直かなり難しいので、まず最初に全巻の対談パートだけ読んでいくというのもいいですね。それだけでも大まかな全体像はつかめると思います。

このシリーズを理解することができると、相当なレベルに行けます。とくにインド哲学や中国哲学を解説してくれる入門書はレアなので、とても重宝しますね。

難解なパートはスルーしていいです。まずは全体像をつかむことが重要。難しい箇所も、時間が経てば自然に理解できるようになりますので。

 

森三樹三郎『中国思想史』

隠れた名著。中国哲学をざっくり理解するならこの本で決まりです。新書サイズで読みやすく、上下巻にわかれています。

上巻はまず中国思想の一般的性格を説明し、続いて戦国時代の諸子百家の思想へと筆を進めます。

中国哲学に西洋ほどの論理性がないのは中国語が孤立語(be動詞みたいなコプラがない)ためだとか、中国思想が政治的なのは文化の担い手たる知識人がみな官吏になる社会だったからだとか、明快な整理に頭がほぐれます。諸子百家は雇用を求めてさまよう政治コンサルタントだ、という例えもわかりやすい。

下巻は漢帝国から清朝までの思想を一気に駆け抜ける構成。中国における仏教、儒教、道教の展開が把握できます。

意外なことに中国思想史の本で仏教を論じるのは珍しいらしく、そこが本書の個性と強みになっています。

 

加藤周一『日本文学史序説』

ここからは日本の哲学に入っていきます。

日本の哲学史を学ぶのに最適の本は何か?僕は加藤周一の『日本文学史序説』(ちくま学芸文庫)をおすすめします。

「文学史」とありますが加藤周一は空海の仏教思想や西田幾多郎の哲学も文学に含めて考えるので、まさに日本の思想史を学べる本なのです。

また日本には文学者や文芸批評家が思想家としての役割を引き受けてきた過去があるため、アカデミックな「哲学史」よりもこっちのほうが全体像を把握するうえでは適していたりします。

タイトルは控えめですが、その内容は日本思想史大全とでもいうべき代物。何ヶ国語にも訳されて海外でも出版されている超名著です。

加藤周一自身がひとりの強力な思想家ですから、その人の本を丁寧に読むのはかけがえのない読書体験になるでしょう。猛烈におすすめ。

 

菅原潤『京都学派』

鎌倉時代の仏教思想と並び、日本が世界レベルの哲学を生み出した希少な場。それが戦前の京都大学でした。

西田幾多郎をボスとして、そこに引き寄せられた天才たちが高度な哲学を展開。彼らは「京都学派」と呼ばれます。

京都学派メンバーの多くは大戦に加担した容疑でGHQによって追放され、戦後日本ではタブー化してしまいます(ドイツにおけるハイデガーみたいな感じ)。したがって日本人でも京都学派の哲学に馴染みのない人は多いかと思います。

しかし日本の哲学史を理解するには絶対に避けて通れない巨峰なんですよね。その京都学派の流れを明快に解説してくれる本が『京都学派』(講談社現代新書)です。新書にこういう本があるのはありがたい。

鈴木成高、高坂正顕、高山岩男、西谷啓治の4人(京大四天王と呼ばれます)を中心に、大ボス西田幾多郎、ナンバーツー田辺元、さらには三木清や戦後の新京都学派にいたるまで、わかりやすく流れがつかめます。

 

仲正昌樹『集中講義!日本の現代思想』

さらに現代よりの思想史を把握するなら、仲正昌樹の『集中講義!日本の現代思想』(NHKブックス)がオススメ。

このへんになると「東洋哲学」というカテゴリーには入りませんが、現代の思想状況を把握するには最適の本です。

戦争への反動から、日本の戦後思想をリードしたのはマルクス主義やそれに関連する左翼でした。したがって本書ではおもに戦後のマルクス主義と、そこから派生した現代思想の流れが解説されます。

戦後日本がどのような思想に取り組み、その顛末がどうなったのか。そしてその結果として現在の日本はどのような思想状況にあるのか。わかりやすく、全体像がつかめます。