政治を独学したい人におすすめの本8冊【入門書から古典まで】
「政治のこともうちょっと理解したいけど、何から始めればいいのかわからないな…。鉄板の入門書みたいなのないのかい?」
このような思いを抱えている方に向けて、おすすめの独学方法を解説したいと思います。
まずは中学高校レベルの基礎知識に欠損がないかどうかを確認し、それを埋めていくのが近道です。これには動画を使いましょう。
中高レベルの基礎知識がついたら、次に良質な入門書(おもに新書)を読んでいきます。以下、色々とおすすめ書を紹介します。
そして入門書レベルの知識が固まったら、最後に政治系の古典に手を出してみるのがよいでしょう。
それでは具体的に解説していきます。
中学~高校レベルの基礎知識獲得にはスタディサプリ
政治系ジャンルの本を効率的に読んでいくには、中学~高校レベルの政経の基礎知識はあったほうがいいです。基礎知識が不足しているせいで本を読んでもなかなか知識を吸収できないというケースが少なくないので。
どうやって勉強したらいいのか?
佐藤優などは高校の政経の教科書を読むようにすすめています。それができるのならいいのですが、教科書はあまりに無味乾燥で通読が苦行なので、僕はおすすめしません。
むしろ動画を利用しましょう。特にスタディサプリがおすすめです。
スタディサプリは大学受験生用のサービスとして圧倒的な人気を誇りますが、実は大人が使っても効果が大きいです(実際これを使って勉強している社会人も多い)。
一流の塾講師による授業が見放題。基礎テキストを熟読していくよりも圧倒的に楽で、記憶にも残りやすいです。
まずは無料体験(2週間)を試してみるとよいでしょう。
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浅羽通明『右翼と左翼』
政治ジャンルではしょっちゅう右翼とか左翼とかの言葉が出てきます。
これはどういう意味なのか?そもそもなぜ右と左なのか?そしてなぜ翼のメタファーなのか?
この概念の意味と歴史をわかりやすく解説してくれる良書が浅羽通明『右翼と左翼』(幻冬舎新書)。
両概念のルーツたるフランス革命にまでさかのぼり、フランス革命以降の政治史を整理してくれます。
後半は戦前日本と戦後日本の政治史を右翼・左翼のフィルターを通して整理する構成。スッキリとした見取り図が描けるようになります。
宇野重規『民主主義とは何か』
民主主義を理解するにはこれがおすすめ。歴史的記述と理論的解説のバランスがいい入門書です。文章もわかりやすい。
歴史面では古代ギリシアからはじまりフランス革命、アメリカ独立革命、近現代の日本などが取り上げられます。
理論面ではトクヴィル、ルソー、コンスタン、ミル、ウェーバー、シュミット、ダール、アレント、ロールズなどが随所に登場する感じ。
民主主義の定義ってそもそも何?ポピュリズムってむしろ民主主義なのでは?自由主義と民主主義って矛盾しないの?議会主義がもともと民主主義と相容れなかったって本当?共和制と民主主義ってどう違うの?ていうか共和制って何?
このような疑問に答えてくれる良書です。
仲正昌樹『精神論抜きの保守主義』
保守思想の解説ならこれがおすすめ。この著者は哲学とか政治とかの難しい議論をわかりやすく解説する名人。
フワフワした精神論ではなく、制度(システム)論としての保守主義のルーツを解き明かしていく良書です。
過去に存在した(と見なされている)美徳を現代に蘇らせようみたいなのは本来の保守とは関係ないとのこと(それは保守主義ではなく政治的ロマン主義と呼ばれます)。
現行システムの背後にあって暗黙のかたちで秩序や自由を成りたたせている慣習に着目し、理性の力ですべてを思いのままに改造しようとする革新勢力から、それらの慣習を守ろうとするのが保守主義です。
取り上げられる保守系思想家は以下の6人。それぞれに一つの章が割り当てられ、けっこうがっつり解説されていきます。
ヒューム
バーク
トクヴィル
バジョット
シュミット
ハイエク
さらに最終章「日本は何を保守するのか」では日本独自の歴史的文脈がおさらいされ、現代日本において保守がどのような内容を持ちうるかを検討しています。
飯尾潤『日本の統治構造 官僚内閣制から議院内閣制へ』
日本の政治システムを理解したいのならこれが一押し。
2007年の新書なので登場するエピソードはやや古いですが、政治構造そのものを理解する目的で読むのであればまったく問題なし。
戦後日本は議院内閣制というシステムを採用しています。アメリカの大統領制などと比較して、この議院内閣制はどのような特徴があるのか?記述が明快ではっきり理解できます。
しかし日本ではこの議院内閣制が奇妙なかたちに歪み、官僚内閣制とでもいうべきものへと変質しました。
これがまたわかりやすく解説され、官僚と社会が直接結びつく独自の日本政治のあり方、そしてその限界が理解できます。
日本の政治システムと対比されることで、アメリカの大統領制などの他の統治システムまでもが明確に把握できるようになります。
塩川伸明『民族とネイション ナショナリズムという難問』
民族やナショナリズムの問題に関心があるのならまずはこれ。
民族、エスニシティ、ネイション、ナショナリズム…
まずこれらの言葉をはっきりと理解できていなくても当然だということがわかるだけでもスッキリします。学界においてさえこれらの言葉は曖昧に使われているらしい。
その上で著者は議論を整理し、これらの用語の明快な定義を導きだします。
本書後半ではそれに基づき、アメリカ、中国、ロシア、東欧などの個別ケースの歴史を解説していく流れになっています。
巻末の読書案内も有益。各章ごとにかなりの数の重要書が掲載されていて、読者はこれをたどってどんどん知識を広げていくことができます。
関連:ネイションは国民か?民族か? 塩川伸明『民族とネイション』【要約】
イアン・ブレマー『Gゼロ後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか』
現代世界の政治的状況を理解しておきたいのならこれ。
2012年の本ですがいまだに有効です。世界各国がどういう文脈で動いているのか明確につかめるようになります。
「Gゼロ」とはリーダーがいないという意味。
経済から環境問題にいたるまで、国際協調なしでは問題の解決はできないのに、協調を成立させるために不可欠のリーダー役がいまや不在である。
世界はどうなってしまうのか?
ブレマーは4つのありうる将来像を描き読者に提示していきます。
岡義武『国際政治史』
こちらは国際政治史の本。岡義武は日本の政治学界の大ボスの一人で、本書はこのジャンルを代表する古典的名著です。
絶対王政期のヨーロッパから始まり、第二次世界大戦の終結にいたるまでがコンパクトかつ異常な明快さで解説されていきます。世界史が好きな人が読んでもおおいに興奮できるでしょう。
岡義武は大物政治学者で文章もアカデミックなのですが、その著作はなぜか読み物として異様に面白いという特徴があります。
『明治政治史』と『転換期の大正』も両方とも岩波文庫で読めます。戦前日本の政治史に関心のある人にはこっちもおすすめ。
国際政治史のジャンルでは、文庫化されていないので入手の敷居は高いですが、キッシンジャーの『外交』も名著(しかも異常に面白い)なのでおすすめ。
ウェーバー『職業としての政治』
最後に古典にも手を伸ばしてみましょう。
興味が湧くのを読んでみればいいのですが、個人的におすすめするならマックス・ウェーバー『職業としての政治』です。その理由はおもに以下の5つ。
・最高度に名高い古典である
・内容が現代でもすこぶる重要
・講演の書き起こしだからウェーバーにしては読みやすい
・文庫でわずか100ページと通読が容易で挫折しにくい
・入手が容易で値段も安い
文庫で読める政治的古典といえばカー『危機の二十年』(岩波文庫)もおすすめ。比較的読みやすいうえ、読み物としても面白いです。
ロックとかホッブズとかモンテスキューとかモーゲンソーとかは難しいうえにあまり面白みはないかも。シュミットは面白いですが文章がドイツ哲学のそれ。ルソーはまあまあ読みやすいような気がしなくもない。
日本の古典的名著なら丸山真男の『政治の世界』(岩波文庫)が比較的読みやすいです。『超国家主義の論理と心理』とかも文庫化されているので、興味の湧いたひとはそっちも読んでみるとよいでしょう。
以上、政治系のおすすめ本でした。また名著に出会ったらアプデしていこうと思います。
経済学のおすすめ本はこちら。
社会学のおすすめ本はこちら。