海外文学ならこれを読んでおけ【おすすめ名作11冊】

2023年1月14日まとめ記事, ディケンズ, ドストエフスキー

海外の小説はどれを読んだらいいのでしょうか?

僕は日本文学よりも世界文学のほうが肌に合うらしく、読んだ冊数も海外作品のほうがずっと多いと思います。たぶん500冊ぐらいは読んでるんじゃないかと。

以下、モームの『世界の十大小説』も参考にしつつ、古典から現代作品まで、とくにおすすめの小説を紹介していきたいと思います。

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

19世紀イギリスの小説家ディケンズの自伝的作品。ディケンズは英国を代表する小説家で、日本でいうと夏目漱石みたいなポジションです。

個人的にはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』と並び、この『デイヴィッド・コパフィールド』が世界文学でもっとも面白い本だと思います。

モームが『世界の十大小説』で言うように、ディケンズの長所はユーモアと人物造形にあります。これが本当に強力無比。なかでも本作に登場するミコーバー氏は魅力的にすぎる。モームいわくこのキャラクターはシェイクスピアのフォールスタフと並ぶ喜劇的人物とのこと。ちなみに吐き気を催すような邪悪ユライア・ヒープも本作の登場人物です。

『デイヴィッド・コパフィールド』のユーモアはディケンズ作品のなかでもとくに強烈で、声を出して笑ってしまうシーンがしょっちゅう出てきますね。もちろん涙を誘うシーンも、絵画的な美しさをたたえたシーンも数多く出てきます。読むならユーモアの訳出が見事な岩波文庫バージョンがおすすめ。

関連:世界文学最高傑作のひとつ『デイヴィッド・コパフィールド』

 

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』

女流作家の頂点に君臨するジェイン・オースティンの代表作。18世紀前半のイギリスの人です。

『高慢と偏見』は現代にいたってもなお大衆的な人気を誇り、映画化もしょっちゅうされています。

この小説は本当に面白いですよ。僕は最初に新潮文庫で読み、想像していた以上に面白かったので、続いて原書も買って読んだほどです(英文は非常にむずかしい)。

恋愛小説なのだけど、恋愛小説に興味のない人間が読んでも楽しめるところがすごいです。とくにエリザベスのキャラクターは奇跡的であり、強さと爽やかさを兼ね備える稀有な女性主人公として輝きを放ちます。

ちなみにモームはオースティン作品のなかで『説き伏せられて』と本書が双璧をなすという評価を与えています。逆に『エマ』に対しては辛辣で、笑ってしまいます。これは僕も完全に同意見。

関連:ジェイン・オースティンの最高傑作はエマなのか?

 

バルザック『ゴリオ爺さん』

19世紀フランスの文豪バルザックの代表作です。

モームはバルザックを最大の天才と言い切っています。最大の長所は作品の多さとのこと。上の下から上の中ぐらいの作品を連発できるタイプです。

またバルザックがロマン主義者であったことを指摘しているのも興味深し。ロマン主義とは超簡単にいえば現実嫌いのことで、現実を超えるなにか大きなものに惹かれる傾向のことをいいます。僕がイメージしていたバルザックと違う感じ。

バルザックは人間喜劇というシリーズを思いつき、そこですべての作品がシリーズの一部を成し登場人物などが共通するという構成を発明しました。現代のエンタメ作品ではわりとよくある手法ですが、この手法を発明したのがバルザックです。

僕が唯一読んだことのあるバルザック作品がこれ。けっこう読みやすかったですね。パリという都を舞台に、俗人たちの欲望がうずまきます。

 

フローベール『ボヴァリー夫人』

19世紀フランスの小説家フローベールの代表作です。

モームいわく、フローベールはロマン主義者にしてリアリスト。現実嫌いだけど、その現実の醜悪さを暴くことで現実に復讐するというタイプ。

また題材の醜悪さを文章の美しさで補おうとしたようで、その美文にもモームは注意を向けています。

フローベールの伝記を見ると、どうもてんかんの持病をもっていたふしがあります。ドストエフスキーと同じですね。これは相当めずらしく、興味深いです。

病気の影響もあり、とても孤独な生活を送っていた模様。モームの『世界の十大小説』を読んでフローベールという人物に興味をもつ読者は多いと思います。僕はこの人の作品を読んだことがなかったのですが、今回にわかに興味が出てきました。

 

ハーマン・メルヴィル『白鯨』

19世紀アメリカの小説家メルヴィルの代表作。アメリカ文学最大の古典とも言われます。

メルヴィルは相当に破天荒な性格だったらしく、若い頃には家出をして船に乗って世界中を旅したそうです。『白鯨』に登場するような生活を実際にメルヴィルがしてたんですね。

ホーソーンと親しくなる機会もあったそう。メルヴィルはホーソーンに熱烈なリスペクトを表し、『白鯨』をホーソーンにささげています(ホーソーンは白鯨を気に入らなかった模様)。ちなみにホーソーンの『緋文字』もアメリカ文学を代表する古典です。

関連:ホーソーンとロマン主義とキリスト教『緋文字の断層』

『白鯨』は普通の小説じゃないです。博物学やらなんやらの記述まで盛り込まれた謎の書物。僕は原書も読んだことがありますが、おそろしく難しくて読めたもんじゃないですね。

メルヴィルは17世紀の作家をモデルにしていたらしく、文章にはミルトンの影響も見られるとモームは指摘しています。

 

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』

19世紀ロシアの小説家ドストエフスキーの最後の作品です。世界文学史上の最高傑作ともいわれる有名な小説。

すべての近代小説を過去にしたと言われるドストエフスキーですが、勢いあまってすべての哲学をも過去にしてしまいかねない威力をもっています。

面白いとか面白くないとかそういう次元じゃない(面白いですが)。小説家というものがここまでの化け物たりえるのかと人びとを震撼させてきた名著です。

関連:ドストエフスキーの小説はどれから読むべきか?【この順番がおすすめ】

 

チェーホフ『退屈な話』

こちらもロシア文学の巨匠から。チェーホフといえば後期の戯曲が有名ですが、小説も書いてます。とくにおすすめなのは『退屈な話』。

チェーホフは根源的な退屈をテーマにものを書きますが、若い日のこの作品にすでにその真価が発揮されていて驚かされます。

主人公は老境の解剖学教授。絶対的な地位と名声を手にした彼ですが、その心中はわびしいものでした。なにか決定的に重要なものを欠いた人生が、どん詰りに達しようとしている。

それは彼の周りにいる家族や友人たちも同じでした。苦しみに意味を見出すこともできず、低俗な時間だけがただ過ぎていく。「こんな生き方は続けられない、どうすればいいのか」。自分に助けを求める養女カーチャの問いかけに、老教授は答えるすべを持ちません。

ミハイール・フョードロヴィチが毒舌を振るい、カーチャは耳を傾けているが、二人とも自分たちのこういう、身近な人びとをこきおろすという一見無邪気な気晴らしが、どれほどの深みへ自分たちを少しずつ引きずり込むかということには気がつかない。(チェーホフ『退屈な話』松下裕訳)

関連:戯曲のおすすめ本はこれ【喜劇から悲劇まで古今東西の名著8冊】

 

トルストイ『戦争と平和』

これまた19世紀ロシアの小説家トルストイの『戦争と平和』。ドストエフスキーとロシア文学を、いや世界文学を二分する巨匠の代表作です。

モームいわく世界でもっとも偉大な小説がこれ。ナポレオン戦争時代のロシアを舞台にした歴史小説のような作品です。

トルストイは家庭生活が悲惨だったそうです。最後は家出して、途中の駅で野垂れ死にします。トルストイはシェイクスピアの『リア王』を認めていなかったそうですが、皮肉なことにリア王のような最期となりました。

関連:トーマス・マン『ゲーテとトルストイ』自然vs精神【書評】

 

ブッツァーティ『タタール人の砂漠』

20世紀の幻想文学を代表するイタリアの作品。個人的には20世紀世界文学の最高傑作のひとつなんじゃないかと思ってます。

退屈をテーマにしている点でチェーホフに通じるものがあります。しかしチェーホフが終わってしまった人生を描くのに対して、本作はいつになっても始まらない人生を描きます。

砦に配属された主人公ドローゴ。地平線の彼方から現れる敵を、英雄的な戦闘を待ち焦がれる砦の兵士たち。しかしいつになってもその時は訪れず、人生は始まらないまま、それでも時間は無情に過ぎ去っていきます。

年老いていく身体。疎遠になってしまった故郷の家族、友人たち。そして近づいてくる終わりの時。ドローゴはたったひとりで、他のだれにも代わってはもらえない最後の戦いに臨みます。

「ジョヴァンニ・ドローゴよ、気をつけろよ」と彼に言う者は誰もいなかった。青春はもうしぼみかけているのに、彼には人生は長々と続く、尽きせぬ幻影のように見えた。ドローゴは時というものを知らなかった。この先き、神々とおなじように、何百年と青春が続こうが、それさえも大したことではないだろう。ところが、彼にはただの、人並みな人生しか、両手の指で数えられるほどの、ごく短い青春しか、そんなみすぼらしい贈り物しか、与えられていないのだったし、そんなものは気づくよりも前に消え失せてしまうだろう。
まだまだ先は長い、と彼は考えた。でも、ある年齢になると(おかしなことに)死を待ち始める人間もいるとのことだ。しかし、そんな、よく耳にする、馬鹿げた話は彼には関係なかった。ドローゴはそう思って微笑むと、寒さにせきたてられて、歩き出した。
(ブッツァーティ『タタール人の砂漠』脇功訳)

 

マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』

20世紀でもっとも有名な小説のひとつ。映画版のほうが有名かも。

アメリカ南北戦争を舞台にした歴史小説です。しかも敗者の南部側の視点で描きます。歴史の表舞台からは隠されがちな南部の社会や文化が見えてきて、興味深いことこのうえなし。

また本作は悪名高き主人公スカーレット・オハラを中心とした恋愛小説でもあります。ストーリーは波乱万丈でフックが強く、読者をぐいぐい引っ張っていきます。キャラ立ちも一流。おかげでキャッチーな作品に仕上がっています。

スカーレットの脳筋ぶりにイライラする人は少なくないと思いますが、作品の面白さはその程度では消えません。

関連:【洋書】スカーレット・オハラとは何者か『風と共に去りぬ』【書評】

 

フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』

児童文学の最高傑作はなんでしょうか?

いろいろ候補はあるとおもいますが、個人的にはフィリパ・ピアスの『トムは真夜中の庭で』を挙げたいと思います。

療養先の邸宅、少年トムは真夜中の庭園でタイムトラベルを経験します。過去の庭園で少女ハティと出会い、ふたりは友達に。しかしお互いの世界は時の流れにズレがあり、トムが別世界を訪れるたびに、ハティは何年も歳を取っています。そして…

大人が読んでこその感動的作品。

なお児童文学のジャンルではフランシス・ホジソン・バーネットの『小公女』と『秘密の花園』も超名作なので、ついでにおすすめしておきます。

 

JPホーガン『星を継ぐもの』

SFの有名作品はだいたい読んだと思いますが、いちばん面白かったのはこれ。

月面で見つかった人間の死体。調査の結果、それは5万年前の死体であることが判明します。地球人なのか?それとも人間とそっくりな姿かたちをした異星人?

侃々諤々の議論が続くなか、今度は木星の衛星で2500万年前の巨大な宇宙船が発掘されます。宇宙船の正体は?そして月面で見つかった死体との関連性は?

ミステリのような感覚で話が進んでいく作品。数学者ハントと生物学者ダンチェッカーの奇妙なコンビによる推理がカタルシスをもたらしてくれます。

続編の2冊も面白いので、本書にハマったらそっちも読むべき。