平凡社ライブラリーならこれを読んでおけ【おすすめ10冊】

ウィトゲンシュタイン, ハイデガー

文庫なのか新書なのかわからない微妙なサイズ。ラインナップはややマニアックながらも非常に充実。それが平凡社ライブラリーです。

2014年あたりから紙質が変わり、本の重量が軽くなりました。以前はずっしりと重かったのですが、今のは手に取ると独特のふわふわ感があります。まあこれはどうでもいいですが。

人文系に関心のある読者であれば、平凡社ライブラリーとまったく縁がないということはないはず。ちなみに僕は30冊ぐらい所持しています。

以下、そのなかから、平凡社ライブラリーのおすすめ本を紹介したいと思います。

ノーマン・マルコム『ウィトゲンシュタイン』

20世紀の哲学を代表する天才ウィトゲンシュタインの伝記です。

著者のマルコムはウィトゲンシュタインの教え子の一人。師のすぐそばでその言動を観察し、それをまとめたのが本書です。

異様なパーソナリティで知られるウィトゲンシュタインの日常が描写されます。彼はどんなフィクションのキャラクターよりも強烈な個性をもっていて(ラッセルいわく天才を絵に書いたような人物)、そのおかげで本書は読み物として圧倒的な魅力をもっています。

ついでにいっておくと、平凡社ライブラリーでは『ウィトゲンシュタイン・セレクション』も良書。一流の研究者として知られた黒田亘による編集で、前期から後期にいたるまでの重要な文章が収録されています。

なお、もっと分厚い伝記が読みたいという人にはレイ・モンクが書いた『ウィトゲンシュタイン天才の責務』が超おすすめです。

 

ハイデッガー『形而上学入門』

ハイデガーの有名な講義録。ハイデガーは『存在と時間』ぐらいしか著作がなく、他はほとんどが講義録です。

平凡社ライブラリーのすばらしいところは、ハイデガーの講義録をいくつも発売している点。

僕としてはむしろもっと揃えてほしいくらいです。とくに『カントと形而上学の問題』とか手に入りにくいので、平凡社ライブラリーで買えるようになったら小躍りして喜びますね。

ちなみにこの哲学者に関しては「ハイデガー」と表記する派と「ハイデッガー」と表記する派で分かれるのですが、平凡社ライブラリーは後者です。検索するときなんかは注意してください。

 

クラウス・リーゼンフーバー『西洋古代・中世哲学史』

哲学史の隠れた名著。要点がおそろしく簡潔にまとまっています。翻訳も上手で、異様なほど読みやすい文章です。

あまりに簡潔なため、一冊目に読むと内容が入ってきづらいかも。どちらかというと入門用というよりは知識を整理するのに使える本ですね。

ちなみに中世編も出ています。中世に範囲を絞っているのに、ページ数は本書よりも多い模様。中世哲学の解説書は希少なので、中世に関心のある人にはとても有益なアイテムです。

 

クザーヌス『学識ある無知について』

近代を準備したとされる重要な思想家ニコラス・クザーヌス。彼の主著は「知ある無知について」というタイトルで知られていますが、驚くべきことに平凡社ライブラリーにはこのレアな本が収録されています。ただしタイトルが『学識ある無知について』になっているので要注意。

神学と数学を融合した独特の議論をしており、宇宙論に数学を適用するところなどはニュートン以降の近代科学を予感させます。

ちなみにソクラテスによく帰せられる「無知の知」というフレーズは、実はクザーヌスの本書が由来と言われています。プラトンの対話篇にはそのようなフレーズ自体は登場しませんからね。

 

ティリッヒ『生きる勇気』

20世紀を代表する神学者のひとりパウル・ティリッヒ。哲学者らの議論を参照しつつ、現代人の抱える存在論的不安を論じた書がこの『生きる勇気』です。ドイツだけでなくアメリカにも強烈な影響を与えたとされます。

参照される思想家はプラトン、アクィナス、ストア派、スピノザ、ニーチェなど。

内容的にはハイデガーと共鳴するものがあります。ついでに言っておくと、私生活がスキャンダルまみれだった点でも両者は共通しています。

神学といえば、ティリッヒと双璧をなすカール・バルトの『ローマ書講解』も平凡社ライブラリーで読めますね。あっちのほうが難解です。

 

マルクス『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』

マルクスの代表作のひとつ。ナポレオン三世がいかにして権力の座についたかを分析する政治・社会学の古典です。

あの有名なフレーズ「歴史は繰り返す、一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」はここに登場。

この本を読むなら平凡社ライブラリー版がおすすめ。巻末に柄谷行人による解説がついています。本文はハイコンテクストな文章で異様にむずかしいですが、柄谷の解説を読むだけでも価値はあり。

マルクス関連ではアルチュセールの『マルクスのために』も平凡社ライブラリーで読めます。あとイタリアの政治学者アントニオ・グラムシの『グラムシ・セレクション』も注目したいところですね。

 

半藤一利『昭和史』

昭和史の入門におすすめの本。圧倒的な読みやすさを誇ります。日本史そのものに入門する場合でもこれが一冊目でいいかも。

戦前編と戦後編にわかれていて、合わせるとページ数は1,200ページを超えます。こう聞くととんでもないボリュームに思えますが、実際に読んでみるとダレることなくスラスラいけるんですよね。

それだけ読み物としてのおもしろさが圧倒的である証拠。歴史系の本にありがちな堅さや退屈さや苦痛とは無縁です。

歴史ジャンルでは渡辺京二の『逝きし世の面影』も平凡社ライブラリーを代表するベストセラーです。

 

岩井克人『会社はこれからどうなるのか』

現代日本を代表する経済学者のひとり岩井克人のベストセラー。

会社とは何か、資本主義とは何か、そして未来のポスト資本主義社会において会社はどうなっていくのか。これらの問題を原理的に考察した名著です。

とはいえ記述はきわめて平易で、すらすら読めてしまいます。資本主義や企業統治、M&Aの入門書としてもうってつけでしょう。

著者は柄谷行人らと仕事していたことでも有名。そこからわかる通り、経済学の分野を超越する思考や知識の持ち主です。

本書もただの経済本ではなく、経済的事象を通して思想的な深みにまで降りていく場面がいくどもあります。

 

丸山眞男セレクション

戦後日本最大の政治思想家といえば丸山真男。本書はその丸山の文章からとくに重要なものを集めたアンソロジーです。

丸山眞男に入門するなら何気にこれがおすすめ。重要な文章がバランスよく収録されているからです。たとえば以下のような。

・「超国家主義の論理と心理」
・「福沢諭吉の哲学」
・「軍国支配者の精神形態」
・「日本の思想」

他にも丸山真男のセレクションは出ていますが、あれがないとかこれがないとかバランスに偏りがありがちなんですよね。一冊だけ読むなら本書がおすすめです。

 

『大森荘蔵セレクション』

戦後日本を代表する哲学者のひとり大森荘蔵。本書は彼の文章を集めたアンソロジーです。

戦後日本の哲学者といえば廣松渉と大森荘蔵が双璧とされます。廣松がいかにもアカデミックな哲学者らしい晦渋な文章で書くのに対し、大森は日常のことばで哲学するをモットーにしています。

廣松がハイデガーで大森がウィトゲンシュタイン、みたいなイメージでいいかと(つぶさに見ればぜんぜん違うけど)

文章は平易とはいえ言ってることの中身は難しいのでスラスラとは読めませんが、哲学ないしは考えることそのものの入門書として使えます。