中公新書ならこれを読んでおけ【おすすめの名作11冊】

2021年3月30日

一口に新書といっても、その内容はピンからキリまであります。易しいのもあれば、やたらと高度なのもある。

そして新書のなかでもっとも敷居の高い存在が中公新書です。

ザ・硬派みたいな存在。そのぶんクオリティは高く、読んでいくとハイレベルな知識が身につきます。

この記事では中公新書からおすすめの名作を紹介します。

河合祥一郎『シェイクスピア 人生劇場の達人』

世界最大の文学者ウィリアム・シェイクスピアについて、一般向けにわかりやすく解説された良書です。

前半はシェイクスピアの謎多き生涯に迫る伝記パート。当時の政治・社会的な描写もくわしく、シェイクスピアがどのような時代背景で創作していたかが把握できます。

中盤はシェイクスピア作品の一般的特徴についての解説。劇の構造、韻文の形式などが近代以降の常識と対比される形で説明されていきます。

後半は個別の作品論です。このパートが何気に強力。各作品ごとに短い解説を与えているだけなのですが、思わぬ視点から注釈が入ってくる感じ。目からウロコの体験をすると思います。

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猪木武徳『戦後世界経済史 自由と平等の視点から』

第二次世界大戦後の世界経済を追いかける骨太の良書。2008年のリーマンショックまでをカバーします。

アメリカ、欧州はもちろんのこと、中国、東アジア、東南アジア、東欧、南米、アフリカと世界中の世界経済を俯瞰。戦後の世界経済はこの一冊を読み込んでおくだけでだいたいなんとかなります。

注目すべきは、経済学だけでなく政治との関係における経済を扱っている点。戦後の経済は巨大化する政府との関係を強くしてきたのですが、学問の世界においてはむしろ経済学が他の社会科学から遊離し、より抽象的で自己完結したシステムと化してしまいました。

著者はそれを批判し、本書においては政治が経済に与えてきた影響という点についてもくわしく解説してくれます。

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高坂正堯『国際政治』

戦後日本を代表する国際政治学者、高坂正堯の名著。

入門書というよりは、新書にして国際政治の古典に属する一冊ですね。読むのはなかなかしんどいですが、内容のクオリティは折り紙付きです。

高坂は日本にはめずらしいリアリズム(現実主義)の思想家。本書を読めばその真髄にふれることができます。

なお高坂正堯の評伝としては服部龍二の『高坂正堯 戦後日本と現実主義』がおすすめです。これも中公新書から出ていて、とても高い評価を獲得しています。

 

飯尾潤『日本の統治構造』

アメリカの大統領に比べると、日本の総理大臣はわずかな権力しかもっていない。このように思っている人は多いかと思います。

しかしそれは間違いです。大統領制における大統領よりも、議院内閣制における首相のほうが、実は強大な権力をもっているのです。

この議院内閣制という仕組みを明晰に解説してくれる良書がこの『日本の統治構造』。

議院内閣制はどのようなシステムなのか?現実の日本政治においてそれがどこまで正しく機能しているのか?日本の政治の歪みはどこから生じるのか?

本書を読んでおくと、政治についての強力な教養が身につきます。

 

曽村保信『地政学入門』

21世紀に入って、地政学が復権してきました。

地政学とは、地球上における国家の空間的な位置関係をベースに、外交や経済、軍事を考えていく政策科学のことをいいます。

本書は1984年に発売された地政学入門のベストセラー。

マッキンダーやハウスホーファーらの思想が紹介され、地政学の歴史をざっくりとつかむことができます。

 

木村敏『時間と自己』

ハイデガー哲学と精神医学を接続させた、世界的な精神病理学の権威による名作。

時間と自己のそれぞれを「もの」ではなく「こと」として捉えるところから話はスタート。

時間と自己は、切り離された個別の実体ではなく、むしろ同一の「こと」であることが明らかにされます。

そして精神病理の根底に時間性の変調を見いだし、うつ病者の時間性(過去に重点)、統合失調者の時間性(未来に重点)、てんかん患者の時間性(現在に重点)が導き出されていくという内容。

木村敏の著作は名作ばかりですが、入門には本書がおすすめです。読んでるとアリストテレスやハイデガーの時間論にも興味が出てくると思います。

笠原嘉『青年期』

対人恐怖症というノイローゼに着目し、青年期に特有の精神病理を解明していく名著。

発売は1977年。本書は、引きこもり問題を扱った研究の先駆のひとつといえるのではないでしょうか。

著者は「ステューデント・アパシー」の概念を発明したことでも知られ、斎藤環らの引きこもり研究にもその知見が受け継がれています。

堅苦しい文体とは無縁で、優れた文学書のように読めます。アパシーの青年に寄り添うような色調がグッド。




瀧井一博『伊藤博文 知の政治家』

伊藤博文は近代日本を作り上げた大ボスのひとりですが、その存在の大きさに比して、あまり人気はありません。

哲学的な深みのない、軽薄な人物みたいなイメージが定着しているのですね。司馬遼太郎の小説を通して国民がそのように思っているだけでなく、アカデミズムのなかでも伊藤はそのように目されてきたようです。

その風潮に一石を投じた名著がこの本。伊藤の生涯を追いながら、彼の哲学をあぶり出していきます。キーワードは文明、立憲国家、国民政治。

中公新書の例にもれず難易度はベリーハードですが、内容はすさまじくおもしろい。日本近代史の勉強にもなります。

 

富永健一『社会学講義』

戦後日本をリードした社会学者のひとり、富永健一による社会学入門書。

富永はパーソンズの社会システム理論を主軸にした理論社会学の代表者ですが、データを駆使した実証研究にも秀でていました。

本書も富永のその強みを反映して、理論(マクロとミクロ)から実証(領域社会学と経験社会学)にいたるまで幅広くカバーしています。

また後半ではざっくりとした社会学史をも展開。ここでのポイントは、西洋のみならず日本の社会学史を取り上げている点です。きわめて貴重。

これまた高度な本なので一冊目には向きませんが、中級者への扉を開けんとする人におすすめしたい名著です。

ついでに言っておくと、富永健一の中公新書では『社会変動の中の福祉国家』も良書。本書をおもしろく読めたらそちらにも手を出してみるといいでしょう。

 

斎藤兆史『英語達人列伝』

過去の日本には、天才としかいいようのない英語の達人が幾人もいました。彼らはどうやって英語をマスターしたのか?

本書は英語達人たちの生涯を追うとともに、その学習方法に迫ります。語学のモチベーターとして一級の本。そして単純に読んでいておもしろいです。

登場する達人は以下の10名。

・新渡戸稲造
・岡倉天心
・斎藤秀三郎
・鈴木大拙
・幣原喜重郎
・野口英世
・斎藤博
・岩崎民平
・西脇順三郎
・白洲次郎

姉妹編の『英語達人塾』(こっちも中公新書)もおすすめ。「列伝」は人物にフォーカスしますが、「塾」のほうは学習方法に特化しています。

野口悠紀雄『超文章法』

『超勉強法』などのベストセラーでも知られる経済学者、野口悠紀雄による文章術。

文学的な文章の書き方ではなく、論文やレポートといった実務的な文章をいかに組み立てるかが明晰に解説されます。

しかし意外なことに文学的な小ネタも随所に散りばめられ、読み物としてもおもしろい。

巻末の参考書案内も有益。ここからさらに他の良質な文章術テキストに進むことができます。

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以上、おすすめの中公新書を紹介しました。新しい名著に出会ったらまた追記していきます。