資本主義は死に世界は社会主義化する『シュンペーター』【書評】

岩波新書の『シュンペーター』を読みました。かれこれ15年近く積ん読されていた本。

このあいだ読んだ宇野重規の『民主主義とは何か』(講談社現代新書)でシュンペーターの民主主義論が紹介されていて、そこでシュンペーターの思想に興味がかきたてられた。千載一遇のチャンスと思い、積ん読を崩しにかかったわけです。

残念ながらシュンペーターの民主主義論についての記述はありません。経済学者としての側面に集中しています。

前半が伝記、後半が理論の解説になります。前半はスラスラ読めていい感じ。マックス・ウェーバーと激論を戦わせたエピソードとかおもしろいです(激論といってもウェーバーが一方的にまくし立てているだけなのですが)

逆に後半は難しすぎました。しかも引用を長々と行うタイプで、結局シュンペーターらの難しい文章を読まなくてはいけない構成。シュンペーター超入門みたいなノリで気軽に読める本ではないですね。

シュンペーターといえばイノベーション(技術革新)の理論で有名。しかし彼は資本主義がやがて衰弱し、社会主義(と彼が呼ぶ社会民主主義的システム)に取って代わられると予測していました。

世界は社会主義化する

シュンペーターいわく資本主義のコアは技術革新にあります。アニマルスピリットの持ち主たち(企業家)がイノベーションを起こし続けること、これが資本主義の生命線。

絶えずイノベーションを起こし続けなければ資本主義は倒れるということです。短期の有効需要をいかに刺激しても無駄で、長期においては供給サイドに革新を起こせるかどうかがすべてです。

現代ではわりと当たり前の議論ですが、この発想のルーツはシュンペーターの経済学にあります。

しかし当のシュンペーターは資本主義の死を予見していました。そしてその先に社会主義を見据える。

こういうとマルクスっぽいですが両者は言ってることの内容が違います。シュンペーターのいう社会主義とは何か?次の文章がわかりやすいです。

政府による経済への介入が増し、公的経済分野の比重が増え、景気政策、雇用政策がビルト・インされ、平等化が進み、投資の社会化が行われ、企業者の自由で創造的な活動にかわって、組織と制度によって動かされる社会は、もはや純粋な資本主義ではなかった。これをかれは「社会主義」とよんだのである。

要するに自由な企業家によるイノベーションが起こらなくなり、政府の介入がますます増えていくということですね。

シュンペーターのいう社会主義はソ連の体制とは別です。シュンペーターはソ連の体制をツァーリズムの延長として捉えていて、それは社会主義でもなんでもないと見なしています。

したがってソ連の崩壊を持ち出してシュンペーターの社会主義論を古いと決めつけるのは、議論の本質が見えていないことになります。

シュンペーターは彼の定義する「社会主義」が全ヨーロッパに広がると予想していました。

第二次世界大戦の結果、ヨーロッパは社会民主主義的共和体制になるだろう―これがシュンペーターの現状分析であった。かれは、これを「正統派社会主義」とよんでいる。

実際そうなりましたね。総力戦体制の結果どこの国でも政府が大きくなり、「社会主義」体制が根づきました。

とくに戦後日本は世界一成功した社会主義と言われます。イギリスやアメリカでは新自由主義の揺り戻しもあったのですが、それもリーマンショックで粉々に砕け、ふたたび「社会主義」路線に戻りました。

そして2020年のコロナ危機によって、この「社会主義」化の流れはフルパワーに達したというわけです。

今ではアメリカでさえ完全に「社会主義」化していますからね。中央銀行にお金をすらせまくりバブルを演出、政府が株価を下支え。2012年ごろは「アベノミクス」と批判されていましたが、今ではどこの国も同じようなことをやっています。もはや末期といえるでしょう。

世界経済はどうなるのか?よくわかりません。ただシュンペーター的事態に陥っていることは確かだと思われます。

経済の本

Posted by chaco