文系でも読んでおきたい理数系の名著はこれ【おすすめ8冊】

「自然科学のことが知りたい。でも数学は全部忘れてしまったし、今さら復習する気なんてさらさらない」

こういう人はけっこういると思います。僕もそのなかの一人です。

しかし実はわれわれのような文系の人間でも楽しめる理数系の良書はたくさんあって、僕は今までに何冊もそういう本にめぐりあってきました。

この記事では、僕が読んだことのある本から特におすすめの良書を紹介します。

 

中谷宇吉郎『科学の方法』(岩波新書)

岩波新書が誇る名著のひとつ。物理学者の中谷宇吉郎が、科学の本質を語ります。

自然科学というものは、自然のすべてを知っている、あるいは知るべき学問ではない。自然現象の中から、科学が取り扱いうる面だけを抜き出して、その面に当てはめるべき学問である。(中谷宇吉郎『科学の方法』)

さらに測定について、物質とエネルギーの概念について、科学と数学の関係について、実験と理論の関係について、わかりやすく解説してくれます。

話の内容は高度ですが、著者は随筆家としても一流の人なので、文章はとても読みやすいです。

本書を最初に読んでおくと科学リテラシーが一気に高まります。

 

ビル・ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』(新潮文庫)

宇宙の誕生から人類の出現にいたるまでの宇宙の歴史を物語る本。科学史の本としても読むことができ、サイエンスの全体をざっと見渡せます

著者はイギリスの紀行記作家で、ユーモラスな文体を武器に向こうでベストセラーを連発しています。

そういう著者の書いた本ですから、本書は自然科学の本にもかかわらず読みやすく、異常に面白い。かといって浅くていい加減な本かというとそんなこともなく、読者は科学的な基礎知識を幅広く入手することができるのです。

語られる分野は物理学から天文学、化学、地質学、海洋学、生物学、考古学と多岐にわたります。

 

『相対性理論を楽しむ本 よくわかるアインシュタインの不思議な世界』(PHP文庫)

アインシュタインの相対性理論を解説した本は星の数ほどありますが、僕が知るなかでもっともわかりやすい本がこれ。

監修者の佐藤勝彦はインフレーション理論を提唱したひとりとして知られ、宇宙論の世界的権威です。だから内容の信頼性についても問題なし。

これと続編の『量子論を楽しむ本』を読んでおくだけで、現代物理学の本を楽しむための基礎教養が身につきます

 

『量子論を楽しむ本』(PHP文庫)

『相対性理論を楽しむ本』の姉妹編。こちらも佐藤勝彦が監修しています。

はっきりいって相対性理論編よりはだいぶ難しいです。ただそれは本の書き方が悪いとかじゃなく、そもそも量子力学が相対性理論に比べてはるかにむずかしいからなんですね。

とはいえ量子論の入門書のなかではもっともわかりやすい本の一つだと思います。要点がわかりやすくまとまっていて、後から読み返すと「こんな高度なことまで語っていたんだな」と気づいて驚くこともあります。

 

カルロ・ロヴェッリ『すごい物理学講義』(河出文庫)

一流の物理学者がみずから素人に語りかける本はいろいろありますが、おそらく本書がナンバーワンの出来だと思います。

著者のロヴェッリはイタリアの物理学者。量子重力理論のうち、超ひも理論と双璧をなすループ理論の第一人者として知られます。

古代ギリシアのデモクリトスから始まり、最終的にはまだ答えの出ていない最先端の情報理論にまで話が及びます。

ものすごい博識で、哲学的なセンスをも合わせ持ち、さらに文学的な例示をそこらじゅうに散りばめます。読み物としての面白さが異常。

上述した相対性理論と量子力学の入門書を読んでおけば、本書のような本にもついていくことができます。

 

ハイゼンベルク『部分と全体』

不確定性原理で知られる20世紀ドイツの物理学者ハイゼンベルクの自伝的作品。プラトンにならった対話篇で構成されています。

まず登場人物の豪華さが尋常じゃない。アインシュタイン、ボーア、シュレーディンガー、パウリ、ラザフォード、オイラーなどなど。この人たちが深遠な対話を繰り広げます(肩の力の抜けた小ネタもそこかしこに登場)。

対話のテーマは量子力学はもちろんのこと、政治、宗教、カント哲学、原子力と多岐にわたります。この人たち科学の専門家である前に哲学者なんだなと思い知る。

人類史上でも最高峰といわれる戦前期ドイツの学術戦闘力が炸裂する名著の一つです。

内容的に相当な歯ごたえがあり、スラスラ読める本ではないですが、苦労してでも読破する価値のある古典ですね。

 

新井紀子『AI vs 教科書が読めない子どもたち』

人工知能の入門におすすめの本がこれ。著者は人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のディレクタとしても知られる数理論理学者です。

現在の人工知能技術の延長線上ではシンギュラリティなど起こり得ない。そう著者は断言します。論理、確率、統計、この3種類の言葉しか使えない現在の人工知能では、人間の思考を再現することはできないと。

AIがとくに苦手とするのが意味の読解です。したがってAIに負けない人材を育てるのなら読解力がキーになる。しかし現在の子どもを見ると読解力は背筋が凍るほど低下していて…

ここから教育論や社会問題の領域にまで足を踏み入れていきます。数学、哲学、教育問題にまでつなげるすさまじい名著。

 

戸田山和久『科学哲学の冒険』(NHKブックス)

最後に科学哲学の分野からも一冊。戸田山和久の『科学哲学の冒険』です。

先生と生徒ふたりのフランクな対話形式で構成されていて、とても読みやすい本です。科学哲学の入門書として最高。

ただし著者の立場は科学的実在論と呼ばれる思想で、これは世間の常識に近い考え方とはいえ科学哲学の世界ではマイノリティですから、そこは注意しておく必要があります。

とはいえ反実在論や社会構成主義といった主流の立場もわかりやすく解説されているので、本書でだいたいの全体像はつかめます。

 

以上、文系でも楽しめる理数系の良書についてでした。

数学系の本とか他にも色々あるんですが、それはいずれアプデしていきます。