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社会学のおすすめ本はコレ【古今東西の名著10冊】

2024年2月26日まとめ記事

社会学で読んでおくべき本はどれなのでしょうか?

僕が小説以外の本を読み始めたとき、最初に興味をもったのは社会学でした(今は哲学とか宗教みたいなのばかり読んでますが)。

それ以来、このジャンルはかなりの冊数を読んだと思います。

以下、僕が読んだことのある本のなかから、古今東西の名作を紹介したいと思います。

社会学に関心のある人は参考にしてみてください。

『社会学はどこから来てどこへ行くのか』

4人の現役社会学者による対談本。日本や世界の社会学界の来歴と現状が、異常なほど赤裸々に語られます。

都市社会学というルーツ、80~90年代における学問のスーパースター化、2000年代中盤以降の没落…。

これから社会学はどのような路線でやっていけばいいのか?「そもそも社会学ってなんなんだろう?」と当の社会学者たちが悩んでいる模様。

わりと暗い気持ちにさせられる本ですが、現実を把握するには最適。最新の社会学の動向をざっと概観するためにも使えます。

とくに専門を決めかねている学生さんにおすすめ。この対談を読むと「自分は社会学に向いてるかも」とか「社会学だけはやめておこう」とかが感じとしてつかめると思います。

関連:社会学志望の学生におすすめ『社会学はどこから来てどこへ行くのか』

 

大澤真幸『社会学史』(講談社現代新書)

どの分野にもいえることですが、最初に全体像をつかんでおくと学習がスムーズになります。個々の議論を理解するための背景知識が豊富になるからです。

ということで社会学の歴史をざっと語ってくれる本がほしいわけですが、おすすめは大澤真幸の『社会学史』です。

新書なのに約630ページという異常なボリューム。とはいえ読み物として圧倒的に面白いので楽しく通読できます。

内容はアリストテレスやホッブスといった社会学の前史から、ルーマンやミシェル・フーコーら20世紀後半までがメイン。最終章ではエマニュエル・トッドやカンタン・メイヤスーら21世紀の議論にも軽くふれています。

大澤真幸は自説を述べるとやたらアクロバティックな理論が展開されてついていけなくなったりするんですが、他人の学説を解説させると持ち前の頭の良さが発揮されてすごくわかりやすい本になります。

とはいえやはり良くも悪くもオリジナリティのある本なので、これだけで終わりにすると偏った知識が身につくかも。あくまでも入り口用としておすすめです。

関連:社会学の流れをつかむにはコレ 大澤真幸『社会学史』【書評】

 

『社会学のあゆみ』

こちらも新書サイズの社会学入門書。スタンダードな教科書という感じで大澤のような面白さはありませんが、そのぶん内容的には安心できます。

初期から20世紀後半までの理論社会学の歴史をざっとつかめます。パート1とパート2が出ていて、パート1の内容はだいたい以下の通り。

・コントとマルクス
・ウェーバーとジンメル
・デュルケム
・シカゴ学派(トマス、パーク、ミード)
・パーソンズとマートン
・グールドナー以降

パート2はパーソンズの社会システム論以降をよりくわしく掘り下げるような構成。だいたい以下のような内容を扱います。

・アメリカの社会システム理論
・ヨーロッパの社会システム理論(ルーマン)
・シンボリック相互作用論
・ドラマツルギー(ゴフマン)
・交換理論
・現象学的社会学(シュッツ)
・構造主義
・批判的社会理論(フランクフルト学派)

だいぶ歯ごたえがある本なので一冊目には向かないかも。

新書サイズではないですが『新しい社会学のあゆみ』というのも出ていて、こっちのほうが読みやすさでは上ですね。

 

富永健一『日本の近代化と社会変動』(講談社学術文庫)

富永健一は戦後の日本社会学を代表する重鎮のひとり。理論(パーソンズの社会システム論)と調査系を幅広く手掛けたことで知られます。

本書はパーソンズの社会システム理論を近代化しつつある明治の日本に当てはめたもの。当時の日本がいかなる社会変動を経験したのかが、政治・経済・文化・狭義の社会それぞれのサブシステムごとに検討されていきます。

理論が実際に使われている現場を目撃することで、パーソンズの理論がすっと入ってきます。マニュアルとにらめっこするより、実際に使われているところを見たほうが理解が早いのは、よくある現象ですよね。

日本近代史のおさらいにもなります。しかも社会システム理論という独特の切り口から解説されることで、日本史への理解が重層的・多角的になる。

ちなみに似たようなジャンルではロバート・ベラー『徳川時代の宗教』(岩波文庫)もおすすめです。

関連:日本教と資本主義 ロバート・ベラー『徳川時代の宗教』【書評】

 

宮台真司『私たちはどこから来てどこへ行くのか』(幻冬舎文庫)

日本の現代社会をマクロに説明してくれる社会学本がほしいならこれ。90年代以降の日本社会学を代表する存在のひとり、宮台真司の集大成的な本です。

日本の社会がいかにやせ細ってきたのか、逆に行政などシステム側がいかに巨大化してきたのか、そしてアメリカとも欧州とも異なる日本という場所でいかにして社会の再生は可能なのか。

社会や文化のみならず、政治や技術といった幅広い分野が参照されつつ語られていきます。

最終的には社会学をメタ的に語り、社会の空洞化が社会理論の退潮をもたらしている、と説きます。

宮台社会学の集大成といった内容になっているので、宮台真司の考えを知りたいという人はこれを読むのがいいと思います。

90年代の有名な著作とかは読まなくていいと思います。当時前提とされていた文脈がもはや無効になっていたりするので、内容を真に受けると誤ったメッセージが伝わったりする可能性がありますから。

本書を読めば過去の宮台がどのような考えで動いていたのかもわかります。

 

菅野仁『友だち幻想』(ちくまプリマー新書)

日本の若年層の人間関係に着目し、現代に合った新しい人間関係のあり方を提示する本。

著者はジンメルを専門にしていた社会学者です。発売からだいぶ時間がたってから火が付き、今やちくまプリマー新書を代表するロングセラーになっています。

本書のテーマは「共同性から併存性へ」。同質的な社会システムが崩れたのに、人間関係はいまだに同質性ベースのまま。それが生きづらさをもたらしている、と。

同質性を目指すのではなく、異質な他者がバラバラなままでなんとか上手く折り合いをつけるためのルール作りや作法こそが重要だと著者はいいます。

・なぜ感情や空気を共有することよりもルールを優先することが大事なのか
・なぜルールは個々の自由をむしろ確保してくれるのか
・なぜルールの優先がいじめ問題の解決に有効なのか

などなど、色々なヒントをもらえます。若者向けのちくまプリマー新書とはいえ、学生のみならず教師や親が読んでも得るものが多いと思いますね。

 

ウェーバー『職業としての政治』

最強の社会学者といえばマックス・ウェーバー。彼の本を読むなら『職業としての政治』がおすすめです。

まずボリュームが少なくて読みやすい。さらに講演を書き起こしたものなのでウェーバーにしては内容もわかりやすい。そして大変アクチュアリティがあり、本書の内容を体得しておくと現代の政治的現象のコアにあるロジックを見通せるようになります。とくに心情倫理と責任倫理の対立概念はすこぶる重要。

代表作といわれる『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は実は必読というほどでもないです。テーマ(なぜ西洋で資本主義が生まれたのか)の先見性や話の組み立て方は威力十分ですが、内容自体は古いので。とはいえ最上級に面白い学術書なので、興味があるなら読むべきではあります。

関連:マックス・ウェーバーのプロ倫はマルクス批判の本

 

バーガー『聖なる天蓋』(ちくま学芸文庫)

社会システムにとって、宗教はどのような機能を果たしているのか?それを解明せんとする宗教社会学の名著がこの本。たぶん宗教社会学ではウェーバーやデュルケム(『宗教生活の原初形態』)の次に有名な研究です。

どんな社会システムであっても、その根底には、あらゆる事象を意味づけ受け入れるための価値体系がある。それを本書の著者は「聖なる天蓋」と呼びます。そしてこれこそが宗教のコアであり、ふつう「宗教」という言葉でイメージされるセクトや儀式などはその末端にすぎません。

社会学的な視点だけで宗教のコアを見通すことができるとは思いませんが、こういう切り口も面白いです。

訳者解説におけるバーガーとルックマンの差異を説明したパートもたいへん啓発的(ルックマンの『見えない宗教』も重要作)。

ちなみにバーガーといえば現象学的社会学を代表する人物でもあり、ルックマンとの共著『現実の社会的構成』は代表作かつ古典です。

 

ホセ・カサノヴァ『近代世界の公共宗教』

1980年代以降、世界のいたるところで宗教が公的領域に再登場し、学者たちをびっくり仰天させました。

近現代社会において宗教は退場するはずではなかったのか?消滅まではいかなくても、個人の私的領域に閉じ込められ、公共の場からは姿を消すはずだったのでは?

この予想外の事態を目撃したホセ・カサノヴァは、従来の世俗化論を再検討し、それを解体。近代社会システムと両立可能な公共宗教が存在しうる、との論を展開します。

これまた宗教社会学の名作。カサノヴァはスペインの社会学者で、本書はそのスペインを含むアメリカ、ブラジル、ポーランドのケーススタディも登場。近代の宗教史としても読めます。

2021年にちくま学芸文庫で文庫化され、アクセスしやすくなりました。

 

ギデンズ Sociology(社会学)

最後は洋書から一冊。現代イギリスを代表する社会学者アンソニー・ギデンズによる『社会学』の原書です。

非常に有名な教科書で、日本語にも翻訳されています。とんでもないボリュームで、僕のもってる第6版は約1200ページ。

原書の英文はかなり読みやすいです。紙質のせいでやたら重量があるのは欠点ですが。そのぶん写真が大量に使われていて、カラフルな構成。

内容はだいたい以下のような感じになっています。

・社会学とは何か?
・社会学理論の概説(軽くふれるだけ)
・グローバル化
・環境問題
・都市問題
・家族と親密性の問題
・社会階層と社会移動
・貧困と福祉
・ジェンダーや人種の問題
・宗教
・メディア
・教育問題
・労働
・犯罪

…などなど。

ご覧の通り、理論をこまかく説明するタイプではなく、現実の社会の様相をざっと概観してみせるタイプです。理論社会学の深堀りとかを期待して買うとガッカリするかも。

平易な英語でボリュームは半端ない。つまり社会学に興味のある人にとって、これ以上ない英語多読用教材になるということです。社会学を専門に勉強していく場合でも、これを使って英語の多読もしておくと一石二鳥になるでしょう。

 

以上、社会学のおすすめ本でした。新しい名著に出会ったらその都度アプデしていこうと思います。

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