ちくま新書ならこれを読んでおけ【おすすめ名著11冊】

2021年4月13日ウィトゲンシュタイン, カント, ハイデガー, 仏教

今日ではあらゆる出版社が新書を出しています。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるみたいなノリになっているといってもいいほどです。

全体的なクオリティの低下が懸念されていますが、信頼できるエース格もいくつか存在します。そのエース級の一角がちくま新書です。

内容はかなり高度。でも中公新書よりはとっつきやすい。そんなギリギリのちょうどいいラインを攻めるのがちくま新書。

ここではちくま新書の名作からおすすめの11冊を紹介します。

石川文康『カント入門』

近代ドイツの大哲学者カント。「すべての哲学はカントに流れ込み、すべての哲学はカントから流れ出す」といわれます。

本書はカント研究者によるバランスのいい入門書。カントの全体像がつかめます。

新書でカントに入門するならこの本の右に出るものはなし。

本書の次に読むものとしては、同著者の『カントはこう考えた』(こっちはちくま学芸文庫)もおすすめです。

永井均『ウィトゲンシュタイン入門』

20世紀の西洋哲学をハイデガーと二分する天才ウィトゲンシュタイン。

本書は現代日本の天才哲学者、永井均によるウィトゲンシュタインの入門書です。

永井均というと良くも悪くも個性的なイメージがありますが、本書は意外とオーソドックスな構成になっています。

ウィトゲンシュタインの思考が前期、中期、後期とバランスよく解説され、全体像をつかむことができます。

 

細川亮一『ハイデガー入門』

こちらは20世紀の哲学を代表するもうひとりの巨人ハイデガーの解説書。

タイトルは「ハイデガー入門」となっていますが、はたしてこれを入門書と呼べるかどうか。むやみにレベルの高い本です。

ほぼ専門書みたいなノリで、ギリシア以来の哲学史とハイデガー思想が接続されていきます。

クオリティは間違いなし。最初の一冊目に読むのは絶対にやめたほうがいいと思いますが、どこかの段階で読んでほしい名著です。

仲正昌樹『不自由論』

「自己決定」や「自己責任」がやたらと振りかざされる風潮を痛烈に批判した、仲正昌樹の隠れた名著。

自己責任論のコアにある「自由な主体」という幻想がどのように作られたのか、西洋哲学史や政治思想史を参照にしつつ解説されていきます。

アクチュアルな問題と接続させつつ哲学史の知識を与えるという、仲正節が全開の良書。

 

池尾和人『現代の金融入門』

一流の経済学者による、金融システムの入門書。

金融政策とは何か?その限界はどこにあるのか?本質的な議論が展開されます。

さらに金融取引、決済、中央銀行、バブル、企業統治、デリバティブ、証券化などを幅広く解説。

すらすら読める易しさではありませんが、これを一読しておくと本質的な経済リテラシーが身につくので、ぜひ読んでもらいたいです。

内田隆三『社会学を学ぶ』

社会学の隠れた良書。著者の自伝的語りとともに社会学理論が解説されるという、おもしろい構成になっています。

取り上げられるのはパーソンズ、ウェーバー、マルクス、デュルケーム、フーコー、ルーマンなど。

終盤には柳田國男やベンヤミンまで登場し、ふつうの社会学テキストよりも射程が広いです。

新書ながらもかなりレベルの高い本。




坂野潤治『日本近代史』

約450ページのボリュームを誇る、異常な新書。

内容も尋常ならざるもので、明治維新から日中戦争までの日本近代史をいっきに解説していきます。

長い上に部分のクオリティも高く、並の新書10冊分ぐらいのエネルギーを秘めているといっても過言ではないでしょう。

日本を代表する政治歴史学者の著者ですら、本書の執筆は「苦行」だったそうです。

日本の来歴に関心のある人は必読。

 

岡本隆司『世界史序説』

2018年に発売された、世界史の良書。

サブタイトルに「アジア史から一望する」とあるように、アジアを中心に世界史を語りなおさんとする試みです。

アジアというと僕たちは東アジアをイメージしがちですが、著者のいうアジアはむしろシルクロードで栄えた中央アジアを中心にしています。

無意識のうちに染みついていた西洋中心史観から抜け出すことができます。世界史に関心のあるひとは必読。

 

阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』

1996年発売のロングセラー。日本人にとって宗教が何を意味するのか、この問題を問い続ける阿満利麿の名著です。

たいていの日本人は「自分は無宗教です」といいますよね。しかし、ここでいう「無宗教」とは何を意味しているのでしょうか?本当に宗教とは無縁の生き方をしているのでしょうか?

著者は創唱宗教と自然宗教の対立概念をベースに、日本における宗教性のありかたを暴き出していきます。

 

末木文美士『仏教 vs 倫理』

宗教と道徳を同一視している人は少なくないかもしれません。立派な宗教者=道徳的に優れたモデルみたいな。

しかし必ずしもそうとは限らないことが、本書を読むとわかります。

「僕は倫理とか道徳とかいうのは大嫌いで、今でもそういう言葉を聞くと、虫酸が走る思いがする」。この異常な発言から、本書はスタートします。

社会の狭い枠組みを超えたところで、宗教の本質を理解する。一流の宗教学者による名作です。

土井隆義『友だち地獄』

サブタイトルは「空気を読む世代のサバイバル」。親密なはずの人間関係がもたらす生きづらさがテーマです。

本書が発売されたのは2008年のこと。当時はまだスマホがそこまで普及していませんでしたし、SNSもおとなしいものでした。

SNS全盛となった現在では、友だち地獄の地獄度はおそらくさらに加速していると思われます。

人間関係に息苦しさを抱えている人は必読。ちくまプリマー新書の大ベストセラー『友だち幻想』と合わせてどうぞ。