ちくま新書ならこれを読んでおけ【おすすめ名著10冊】

2021年8月6日ウィトゲンシュタイン, カント, ハイデガー, 仏教

今日ではあらゆる出版社が新書を出しています。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるみたいなノリになっているといってもいいほどです。

全体的なクオリティの低下が懸念されていますが、信頼できるエース格もいくつか存在します。そのエース級の一角がちくま新書です。

内容はかなり高度。でも中公新書よりはとっつきやすい。そんなギリギリのちょうどいいラインを攻めるのがちくま新書。

ここではちくま新書の名作からおすすめの10冊を紹介します。

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石川文康『カント入門』

近代ドイツの大哲学者カント。「すべての哲学はカントに流れ込み、すべての哲学はカントから流れ出す」といわれます。

本書はカント研究者によるバランスのいい入門書。カントの全体像がつかめます。『純粋理性批判』、『実践理性批判』、『判断力批判』の3批判書に加え、晩期の宗教的思想を第4批判として扱っている点も特徴。

新書でカントに入門するなら、今のところこの本の右に出るものはないでしょう。

関連:新書でカントを理解したいならこれ『カント入門』【書評】

 

永井均『ウィトゲンシュタイン入門』

20世紀の西洋哲学をハイデガーと二分する天才ウィトゲンシュタイン。

本書は現代日本の天才哲学者、永井均によるウィトゲンシュタインの入門書です。永井均というと良くも悪くも個性的なイメージがありますが、本書は意外とオーソドックスな構成になっています。

ウィトゲンシュタインの思考が前期、中期、後期とバランスよく解説され、全体像をつかむことができます。

量は多くないものの、伝記的なエピソードもあり。ウィトゲンシュタインの異様な性格と生涯の一端に触れることもできます。

 

細川亮一『ハイデガー入門』

こちらは20世紀の哲学を代表するもうひとりの巨人ハイデガーの解説書。

タイトルは「ハイデガー入門」となっていますが、はたしてこれを入門書と呼べるかどうか。むやみにレベルの高い本です。

ほぼ専門書みたいなノリで、ギリシア以来の哲学史とハイデガー思想が接続されていきます。でもその硬質さが本書の魅力。ハイデガーがいかにアリストテレスから影響を受けているかがわかります。

最初の一冊目に読むのは絶対にやめたほうがいいと思いますが、どこかの段階で読んでほしい名著です。

関連:ハイデガーに入門するのは意外と難しくない【おすすめ入門書7選とおまけ】

 

池尾和人『現代の金融入門』

現代日本を代表する経済学者による、金融システム入門書。

金融政策とは何か?その限界はどこにあるのか?本質的な議論が展開されます。さらに金融取引、決済、中央銀行、バブル、企業統治、デリバティブ、証券化などを幅広く解説。

すらすら読める易しさではありませんが、これを一読しておくと本質的な経済リテラシーが身につきます。超易しい入門書を読んだ後の2冊目に読むと理解がはかどるでしょう。

経済分野はわりとトンデモ本が多かったりするので、最初のうちに本書のような学術界の王道的な本を読んでおくと後々ためになることが多いです。

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内田隆三『社会学を学ぶ』

社会学の隠れた良書。理論社会学者である著者の自伝的語りとともに社会学理論が解説されるという、おもしろい構成になっています。

取り上げられるのはパーソンズ、ウェーバー、マルクス、デュルケーム、フーコー、ルーマンなど。終盤には柳田國男やベンヤミンまで登場し、ふつうの社会学テキストよりも射程が広いです。

新書ながらもかなりレベルの高い本。社会学の新書といえば大澤真幸の『社会学史』(講談社現代新書)が有名ですが、本書も地味に良書なので一読の価値あり。

 

坂野潤治『日本近代史』

約450ページのボリュームを誇る、異常な新書。

内容も尋常ならざるもので、明治維新から日中戦争までの日本近代史をいっきに解説していきます。

長い上に部分のクオリティも高く、並の新書数冊分のエネルギーを秘めているといっても過言ではないでしょう。日本を代表する政治歴史学者の著者ですら、本書の執筆は「苦行」だったそうです。

歴史、とくに日本史のジャンルって一人の書き手による通史が少ないですよね。複数人が執筆する歴史資料みたいなノリの本が多いと思います。

本書のように学術的なレベルが高く、しかも作家性に満ちた読ませる歴史本というのは、かなり貴重。

 

岡本隆司『世界史序説』

2018年に発売された、世界史の良書。

サブタイトルに「アジア史から一望する」とあるように、アジアを中心に世界史を語りなおさんとする試みです。

アジアというと僕たちは東アジアをイメージしがちですが、著者のいうアジアはむしろシルクロードで栄えた中央アジアを中心にしています。

無意識のうちに染みついていた西洋中心史観から抜け出すことができます。世界史に関心のあるひとは必読。

関連:中央アジアこそが世界史の中心だった 『世界史序説』【書評】

 

阿満利麿『日本人はなぜ無宗教なのか』

1996年発売のロングセラー。日本人にとって宗教が何を意味するのか、この問題を問い続ける阿満利麿の名著です。

たいていの日本人は「自分は無宗教です」といいますよね。しかし、ここでいう「無宗教」とは何を意味しているのでしょうか?本当に宗教とは無縁の生き方をしているのでしょうか?

著者は創唱宗教と自然宗教の対立概念をベースに、日本における宗教性のありかたを暴き出していきます。

 

末木文美士『仏教 vs 倫理』

宗教と道徳を同一視している人は少なくないかもしれません。立派な宗教者=道徳的に優れたモデルみたいな。

しかし必ずしもそうとは限らないことが、本書を読むとわかります。

「僕は倫理とか道徳とかいうのは大嫌いで、今でもそういう言葉を聞くと、虫酸が走る思いがする」。この異常な発言から、本書はスタートします。

社会の狭い枠組みを超えたところで、宗教の本質を理解する。一流の宗教学者による名作です。

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土井隆義『友だち地獄』

サブタイトルは「空気を読む世代のサバイバル」。親密なはずの人間関係がもたらす生きづらさがテーマです。

本書が発売されたのは2008年のこと。当時はまだスマホがそこまで普及していませんでしたし、SNSもおとなしいものでした。

SNS全盛となった現在では、友だち地獄の地獄度はおそらくさらに加速していると思われます。

人間関係に息苦しさを抱えている人は必読。ちくまプリマー新書の大ベストセラー『友だち幻想』と合わせてどうぞ。

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以上、ちくま新書の良書紹介でした。新しい名著を見つけたらまたアプデしていこうと思います。