【洋書】エリン・メイヤー 『異文化理解力』【書評】

2021年3月18日

エリン・メイヤーのThe Culture Map(邦題は『異文化理解力』)を読みました。評判通りの面白さでしたよ。

文化ごとの慣習の違いを浮き彫りにし、それを理解した上で、異なる文化圏に属する人たちとどう接したらいいのかをアドバイスする本です。

 

文章はものすごく読みやすい。

大学1年生なら読めると思います。中学と高校で習う英語をある程度マスターしていれば読破できるレベルですね。

英語多読に挑戦している人や、英語の勉強をしている大学生におすすめの洋書です。

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8つのものさしで異文化を比較

このThe Culture Mapの内容ですが、冒頭でも言ったように、異文化を比較して文化ごとの特徴をあぶり出すものです。

アメリカとか日本とか中国とかロシアとかフランスとかを比較して、国民性みたいなものを導き出すのですね。

著者は以下の8つのものさしを使って、それぞれの文化をパターン分けしていきます。

 

コミュニケーションがローコンテクストかハイコンテクストか

もっともローコンテクスト(物事を明確に言う)なのはアメリカ、もっともハイコンテクスト(空気を読む)なのは日本。

これは印象通りですね。

 

マイナスの評価をどう伝えるか

マイナス評価をズバズバ言うのはロシアやドイツ。言わないのは日本などアジア勢。

興味深いことに、アメリカは真ん中。はっきり物事をいうアメリカ人ですが、マイナス評価を口にすることだけは慎重です。

 

説得のために原理をもちだすか応用例をもちだすか

原理で説得するのはフランスやイタリア、応用例で説得するのはアメリカ。

アメリカの本がやたら具体例ばかりで読みづらいのはこれが関係しているのかも。

 

リーダーシップは民主的か階層的か

リーダーが平等主義なのはオランダなど北欧諸国(バイキングの影響らしい)。

逆に階層的なのは日本や韓国。これは身分の上下を重んじる儒教の影響でしょう。

ここでも、アメリカが真ん中であることに要注意。

 

意思決定は民主的かトップダウンか

民主的に意思決定するのは日本やスウェーデン、トップダウンは中国やインド。アメリカは真ん中。

興味深いのは日本。階層的な身分秩序を重んじるのに、意思決定はトップダウンを避けるのですね。すごく変わってる。

これは先の戦争における日本軍研究などでもよく指摘される事実です。

 

信頼構築はタスクベースか人間関係ベースか

もっともタスクベースなのはアメリカ。基本的に西洋諸国はこっち。

逆に人間関係を重んじるのはサウジアラビアやインド、中国などの非西洋諸国です。もちろん日本もこっち。

 

対立を避けるか否か

堂々と対立意見を言うのはイスラエル、フランス、ドイツなど。

逆に対立を避けようとするのは日本、タイ、インドネシアなど。日本人が対立を避けようとしがちなのは印象通りですね。

意外なことにアメリカはここでも真ん中。

 

時間に厳しいかルーズか

時間に厳しいのはドイツ、スイス、日本など。ここに日本が入るのもやっぱりイメージ通り。

ルーズなのはインドやサウジアラビア。フランスが真ん中です。

 

異文化との出会い

ロンドンの街路

本書を読むこと自体が、異文化との出会いになります。

慣習のパターンがこんなに各種各様で奥行きがあるのかと、目から鱗が落ちますよ。

たとえばわれわれ日本人はアメリカ人のことを「なんでもはっきりと口にするアクティブな連中」というイメージで捉えていますが、それは半分しか当たっていない。

たしかに日本人と比べるとアメリカ人はズバズバ物を言いますが、世界スケールでみると、マイナス評価の発信や異なる意見との対立などでは、わりと慎重な方だとわかります。

それから、自分たちの文化がこんな風に見られているのかと発見するのも楽しいですね。

 

こういう本を読むと文化的ステレオタイプに囚われてしまうのではないかという意見もありそうですが、著者によると、これはむしろ逆です。

様々なものさしで各文化を相対的に理解することで、慣習のグラデーションや奥行きを見抜く目が養われます。

マクロな視点を抜きにして個人だけを見つめたいという態度を取る人ほど、逆に単純な文化的ステレオタイプに囚われることが多いのです。

 

文章は読みやすいです

冒頭でも言いましたが、文章がとても読みやすいです。英語の多読テキストを探している人にもおすすめの一冊。

基本的に英語圏の読み物というのは、小説よりも、このようなノンフィクションのほうが簡単なんです。

日本人からすると英語圏の読み物でもっとも難しいのは詩、その次に小説なんですね。

 

それから具体例の挿入も適材適所でグッド。

アメリカの本ってやたら冗長なものが多いですよね。ページ数をかさ増しするために、無駄な具体的エピソードを詰め込みまくっています(もしかすると原理ベースではなく応用ベースで説得するアメリカ文化の影響かもしれない)。

しかし本書の具体的な記述は無理がなく、読んでいてストレスがたまりにくいです。