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岩波新書ならこれを読んでおけ【おすすめ名著15選】

2024年12月6日まとめ記事, 新書おすすめ

日本ではどこの本屋に行っても新書が置いてあります。

この新書という形態。これを始めたのは岩波新書でした。1938年のことです。

以来、岩波新書は数多くの名著を世に放ってきました。

この記事では無数のラインナップから、読みやすさと深さを兼ね備えた14冊をピックアップして紹介したいと思います。

なお、その他出版社のおすすめ新書については以下のリンクからどうぞ。

中谷宇吉郎『科学の方法』

科学論の名著です。中谷は物理学者にして一流のエッセイイストとしても知られたすごい人。

科学とはどのような営みなのか?限界はあるのか?きわめてわかりやすい文章で、著者は本質的な議論を展開します。

科学は決して、人間が自然と向き合う唯一の方法ではない。科学とは、自然のなかの再現可能な現象だけに使えるアプローチ方法なのである。

著者はそう釘を差したうえで、次のように言います。

自然科学というものは、自然のすべてを知っている、あるいは知るべき学問ではない。自然現象の中から、科学が取り扱いうる面だけを抜き出して、その面に当てはめるべき学問である。(中谷宇吉郎『科学の方法』)

科学テクノロジーが躍進する現代にこそ読まれるべき名著。科学リテラシーが一気に高まります。

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スティーブン・グリーンブラット『暴君 シェイクスピアの政治学』

シェイクスピアは劇作のなかで数々の暴君の誕生と没落を描いてきました。リチャード3世、マクベス、リア王、コリオレイナスなどなど。

本書『暴君 シェイクスピアの政治学』はそのシェイクスピア作品を政治的に読み解き、「なぜ国全体が暴君の手に落ちてしまうような事態がありうるのか」を、シェイクスピアとともに探求していきます。そして読者はいつしかそれが、遠回しの現代社会批判であることに気づきます。

著者のスティーブン・グリーンブラットはシェイクスピア研究の世界的な権威。本書でも縦横無尽にシェイクスピア劇の台詞を引用するのですが、それがまたかっこいい。

関連:シェイクスピアはどれから読めばいい?【この順番でOK】

 

木田元『ハイデガーの思想』

20世紀最大の哲学者ハイデガーを、日本を代表する研究者がわかりやすく解説してくれる名著。

木田の仕事は日本のハイデガー研究にきわめて大きな影響を与えるとともに、このような啓蒙書を通して一般の読書人にも浸透しています。

木田のハイデガー理解はやや図式的すぎるきらいがあるので、本書だけですべてわかったつもりにならないほうがいいとは思いますが、最初に全体像をつかむには最適な本。

木田元の岩波新書といえば『現象学』も良書です。現象学やハイデガーに関心のある人は、まず木田の著作から入るのがいいと思います。

関連:ハイデガーに入門するのは意外と簡単【おすすめ入門書6選】

 

熊野純彦『西洋哲学史』

西洋哲学の歴史をざっと学べる本です。上下巻にわかれています。上巻が古代から中世、下巻が近世から現代まで。

どの分野でもそうですが、まずは全体を見渡しておくと理解が早くなります。したがって、哲学に興味のある人は、まず最初に哲学史の本を読むのが賢明なんですね。

本書は内容こそややハイレベルですが、新書サイズで読みやすいので、これから入るのもありかもしれません。

関連:哲学史の名著はこれ【入門者~中級者におすすめ8冊】

 

山之内靖『マックス・ウェーバー入門』

もっとも有名な社会学者といえばおそらくマックス・ウェーバーでしょう。

本書はそのウェーバーの入門書にして、従来とは異なるウェーバー像を提示してみせた名著です。

ニーチェとの類縁性が強調される点がポイント。近代という時代に批判の目を向けるウェーバーが姿を表します。宮台真司が指摘するように、現代の僕たちを閉じ込める合理性の鉄の檻は、すでにウェーバーが分析の光を当てていたのでした。

日本の社会科学は近代の推進者としてウェーバーも持ち出すのが習いでしたから、それと逆をいく本書のアプローチはかなり衝撃的なのです。

社会科学や近代社会の成り立ちに関心のある人におすすめ。

関連:社会学のおすすめ本はコレ【古今東西の名著10冊】

 

森嶋通夫『思想としての近代経済学』

かつて日本の経済学を代表した天才による経済学史。

扱われるのは以下の面々。理論だけでなく、軽く伝記的なエピソードも書かれています。

・リカード
・ワルラス
・シュンペーター
・ヒックス
・高田保馬
・ヴィクセル
・マルクス
・ウェーバー
・パレート
・ミーゼス
・ケインズ

高田保馬やウェーバー、パレートの名前があることからわかるように、広く社会科学を総合せんとする野望がベースにあります。

良くも悪くも非常にレベルの高い本ですが、そのぶん得るものは多いです。しょっぱなのリカードとワルラスの解説が最難関なのは罠。序盤は飛ばして真ん中から読みはじめるとよいでしょう。

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柄谷行人『世界共和国へ』

文芸批評家にして現代日本を代表する思想家、柄谷行人。東浩紀のお師匠さん的な存在としても知られます。

柄谷は何度か劇的な思想的転換をするのですが、本書は現在の柄谷がどのような問題関心で動いているかを示してくれる良書です。これを読んでおくと、最近の柄谷の仕事が追いかけやすくなります。

本書だけでもある程度の思想的なフレームワークを入手することは可能。現代の歴史や政治、思想といった領域がどのように動いているのかが見えるようになります。

関連:柄谷行人に入門するならこれ【前期~後期のおすすめ本】

 

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』

2017年に突如として現れた日本近代史の名著。おもに明治から大正にかけての日本を扱っています。

日本の近代化にはどのような特徴があったのか。そしてそれがいかなる帰結にいたったのか。政党政治、資本主義、植民地政策、天皇制のそれぞれから掘り下げられます。

骨太の内容なので、これで日本近代史に入門することは難しいかも。他の易しい本で基礎知識をつけてから読むのがおすすめですね。

ものすごく勉強になります。しかもおもしろい。坂野潤治の『日本近代史』(ちくま新書)と合わせて読むと相乗効果が発動します。

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網野善彦『日本社会の歴史』

独自の中世研究で知られる歴史学者が書いた、日本史の通史本です。上中下の3巻に分かれています。

日本史の本って通史があまりないんですよね。各章を分担で書いているようなのがほとんどです。しかしそれだと読み物としての威力が薄れ、読んでて退屈。作家性のようなものがなくなり、単なる資料みたいなノリに近づくんですよね。

本書は例外で、歴史学界のスーパースター網野善彦による通史です。それが新書という読みやすい形態で読めるのですから、非常に貴重な存在だといえるでしょう。

古代~中世の分厚さが特徴的。日本「国」の歴史ではなく、日本「社会」の歴史なところにも著者の性格が出ています。日本史をざっと概観してみたい人におすすめです。

 

末木文美士『日本宗教史』

日本列島における宗教の歴史を、古代から順に解説してくれる良書。

仏教の伝来と神道との関係、江戸時代におけるキリスト教、および儒教の定着、戦時中の国家神道、さらに現代における日本人の宗教性にいたるまでを解説します。

末木文美士といえば新潮文庫の『日本仏教史』が有名ですが、本書は仏教だけでなく他のあらゆるメジャーな宗教をも扱っているところが特徴ですね。

戦後日本人は宗教についての知識が乏しいといわれますが、この本を読んでおくだけでだいぶ違ってきます。

ほかに岩波新書で宗教を扱ったものでは『神々の明治維新』もおすすめです。

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丸山真男『日本の思想』

戦後日本を代表する知識人、丸山真男の名著。岩波新書を代表する本の一つにして、もっとも有名な新書のひとつです。

日本人の思想にどのような傾向があるか、またそれが社会の仕組みにどのように反映しているか。明晰に説かれていきます(文章は堅いですが)。

丸山は第二次世界大戦を体験しており、その体験に基づいて自分の思索を組み立てたという点が重要です。そういった文脈を知らないと「この人はやたら日本に批判的だな」という感想で終わってしまいかねないので。

アマゾンのオーディブルからオーディオブック版も出ています。

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中村光夫『日本の近代小説』

中村光夫は20世紀の日本を代表する文芸批評家のひとり。本書はその中村が近代日本の小説をわかりやすく解説する本です。

明治と大正の小説家が扱われます。夏目漱石や森鴎外から、志賀直哉や芥川龍之介にいたるまで、登場する作家は無数。

単に小説を読むだけでなく、文学史の知識を身につけたいという人におすすめの名著ですね。

日本の文学史に興味が出てきたら、加藤周一の『日本文学史序説』(ちくま学芸文庫)もおすすめです。

 

千野栄一『外国語上達法』

1986年発売の、外国語学習論の名著。語学学習の本は山ほど発売されていますが、いまだ本書の魅力がなくなることはありません。

語彙や文法の学習法から、テキストや辞書さらに教師の選び方まで、語学の初心者に向けて易しく解説してくれます。

この手の本に必要なのは内容の確かさだけでなく、「読者のモチベーションを高める力」なのですが、やはりロングセラーだけあって本書にはそれがあります。読んでるとやる気がわいてくる。

英語学習者はもちろん、語学にたずさわるすべての人にとって必読の名著です。

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マーク・ピーターセン『日本人の英語』

アメリカ出身の日本文学研究者マーク・ピーターセンによるベストセラー。本作はシリーズの一冊目です。

英語ネイティブの著者が、日本人のおかしな英語にツッコミを入れまくる本です。読み物としておもしろいうえに、英文法の復習や確認にもなる良書。

ただし中級者以上向けの本である点に注意。初心者がこれを読んでも英語力はたいして向上しないと思います。ある程度まで英語を読んだり書けたりする中級者や上級者が読んでこそ真価を発揮する新書ですね。

アマゾンのオーディブルにオーディオブック版もあります。英語学習は音が命なので、この本をオーディオブックで入手する意味は大きいです。

 

清水幾太郎『論文の書き方』

清水幾太郎は戦後日本を代表する社会科学者のひとりですが、本書は彼が「書くこと」について語ったもの。この本もまた定番中の定番です。

タイトルは「論文の書き方」となっていますが、決して論文だけを対象にした内容ではありません。

どうやったら文章を上手くかけるようになるのか?それをとことん解説したライティングの名著です。

文章の執筆にたずさわる人におすすめ。

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以上、岩波新書のおすすめ本の紹介でした。新しい名著に出会ったら、また追記していきたいと思います。

なお岩波文庫のおすすめ本はこちら。