柄谷行人に入門するならこれ【前期~後期のおすすめ本】

2021年3月26日柄谷行人

日本を代表する批評家(哲学者みたいなもの)、柄谷行人のおすすめ本を紹介します。

彼の本は日本のみならずアメリカや台湾、韓国といった海外諸国でも読まれているのが特徴です。せっかくこのような大物が同時代にいるのだから、読まなきゃ損。

 

柄谷の仕事は大きく前期、中期、後期に分けることができます。

前期はデビューから70年代の終わりごろまで。文学の批評が中心です。

中期はおもに80年代で、哲学的な、高度に理論的な著作が増えていきます。

そして後期は91年のソ連崩壊から現在に至るまでの期間。政治的な関心が強くなり、歴史系に通じる作品が増えていきます。

 

柄谷に入門するときは、この前期、中期、後期という期間を意識しておくとよいです。

そしてそれぞれの期間においてもっとも読みやすい本(講演録がおすすめ)から入り、次に代表作へと進むのがベストです。

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前期の入門には『畏怖する人間』

初期柄谷の入門におすすめなのは『畏怖する人間』(講談社文芸文庫)です。

若き柄谷の文芸批評の仕事が収められている本。

取り扱われるのは夏目漱石、小林秀雄、吉本隆明、埴谷雄高、芥川龍之介、大江健三郎、安部公房、古井由吉などなど。

ご覧の通り完全に文学寄りです。しかしそこは流石に柄谷の著作で、純文学にほとんど興味がない人間(僕のような)でも楽しく読める。論理を追っていくだけでおもしろいですよ。

姉妹編の『意味という病』(講談社文芸文庫)もグッド。あちらではシェイクスピアや森鴎外といった文学者が取り上げられています。

 

前期の代表作は『日本近代文学の起源』

次に前期の代表作を読んでいきます。

前期の代表作は『日本近代文学の起源』。これも講談社文芸文庫バージョンが有名ですが、最近では岩波現代文庫からも出ています。

このへんになると西洋の哲学者からの引用も徐々に増えてきます。題材はおもに文学なのですが、やっていることの中身はきわめて理論的。

ニーチェやミシェル・フーコーなどに通じるような系譜学が試みられています。「風景」「病」「児童」といった当たり前のものを見る眼差しがいかに歴史的に構成されていったのかが述べられる。

森鴎外と坪内逍遥の「没理想論争」をあつかった「構成力について」も有名。個人的にはこれがいちばんおもしろいと思います。

 

 

中期の入門には『言葉と悲劇』

中期の入門には『言葉と悲劇』を使います。できれば講談社学術文庫バージョンで。ちくま学芸文庫からも出ていますが、こっちは分量が少ないから。入手しづらいようならちくま版でもいいです。

これはいわゆる講演録で、ですます調のわかりやすい文体で理論的な仕事が解説されます。自分の著作をわかりやすく説明している感じ。

内容は多岐にわたりますが、コアにあるのは哲学的な関心です。この時期の柄谷はウィトゲンシュタインからの示唆を受けていて、本書からもそれを感じ取ることができます。

なにげに超おすすめ本。あまり深入りせずに済ませたいという人は、代表作よりも、この種の講演録を読んでおくのがいいと思います。

 

中期の代表作は『探求』

次に、中期の代表作を読んでいきます。

中期の代表作は『探求』(講談社学術文庫)。第1巻と第2巻がありますが、両方読みます。

ちなみに第3巻が変形したものが後の『トランスクリティーク』という本です(これは別に読まなくてもいい)。

柄谷の本といえばコレという人が多い有名な著作。僕も『探求』がいちばん好きです。

後期ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論の独自の解釈を導きの糸にして、「他者」の問題が追求されていく。

マルクス、フロイト、デカルト、スピノザ、ニーチェ、キルケゴールなど様々な哲学者が料理されていきます。ちなみにヘーゲルとハイデガーとユングは切られ役です。

 

後期の入門には『思想的地震』

後期の入門には『思想的地震』(ちくま学芸文庫)を使います。

これも講演録で、非常にわかりやすい。90年代以降の柄谷行人がどのような意図のもとで動いているのかわかります。

『言葉と悲劇』同様に、自身の著作をわかりやすく解説するような内容になっています。

なんならこれ一冊だけでも十分なくらいです。

 

後期の代表作はこれ

後期の代表作は『世界共和国へ』(岩波新書)。新書なのでけっこう読みやすい。

岩波現代文庫から他の骨太の代表作もいくつか出ていますが、後期の仕事のコアをつかむには『世界共和国へ』で十分だと思います。

 

おまけ 対談集もおすすめ

あまり知られていないマニアックなアイテムとして、『ダイアローグ』(第三文明社)があります。

いわゆる対談集。すごくわかりやすい。そして対談の相手がやたらと豪華です。

柄谷の考えをさらに深く知りたい人は、こちらも参考にしてみるとよいでしょう。