哲学史の名著はこれ【入門者~中級者におすすめ8冊】

2021年1月29日

哲学の入門者には、最初に哲学史の本を読むことをおすすめします。

まず全体の流れを見渡して、それから個別の分野に入っていく。そうすると理解がスムーズになる。どの分野の勉強でも、よくこう言われますよね。

哲学でもそれは同じなのです。個々の哲学者を追いかける前に、全体の流れを把握しておくのが近道です。

したがって最初に哲学史の本をざっと読んでおくことを猛烈におすすめします。

じゃあどの本を読めばいいのか?以下、おすすめの哲学史テキストを8冊紹介します。

木田元『反哲学史』

→電子書籍版はこちら

日本を代表するハイデガー研究者が書いた哲学史。講談社学術文庫から出ています。

コンパクトかつ平易な文章で、初心者に最適です。本文は約250ページ。この分量でギリシア哲学から現代哲学までを駆け抜けます。

タイトルの反哲学史というのは、哲学をやたらとありがたがるのはやめて、それを相対的に眺めてみようという著者の意思が反映したもの。

内容的にはハイデガーの哲学史をベースにしています。そのぶん独特の偏りはありますが、全体の流れを把握するには問題ありません。

熊野純彦『西洋哲学史』

→電子書籍版はこちら

岩波新書から出ている、オーソドックスな哲学史。

上巻と下巻にわかれ、けっこうマイナーな哲学者までも扱っています。

新書とはいえ、記述のレベルはわりと高め。入門者におすすめの本ではありますが、完璧主義で読もうとするとけっこうな確率で挫折するかも。

あくまでも全体の流れをざっと把握する目的で読むのがいいと思います。

 

クラウス・リーゼンフーバー『西洋古代・中世哲学史』

平凡社ライブラリーから出ている隠れた名著。古代と中世の西洋哲学を取り扱っています。

中世をくわしく解説している点が本書の強みですね。トマス・アクィナスらのスコラ哲学から、キリスト教の神秘思想まで。

記述はおそろしく簡潔。これで入門するのはきついかも。要点がビシッとまとまっているので、知識の整理に使うとものすごく役に立ちます。

中世だけを取り扱った続編も出ています。中世哲学に興味のある人はそちらもどうぞ。

 

カール・レーヴィット『ヘーゲルからニーチェへ』

知る人ぞ知る、近代哲学史の超名著。2015年に岩波文庫に入り、アクセスしやすくなりました。

タイトルにあるようにヘーゲルからニーチェまでの哲学の流れが解説されます。

ゲーテとヘーゲルの対置に始まり、老年ヘーゲル派、ヘーゲル左派、マルクス、キルケゴールなどなど。

それぞれの哲学者がヘーゲルといかに格闘したかという観点から、近代哲学史が描かれます。

ちなみに著者のレーヴィットはハイデガーの弟子です。内容がハイデガー的かというとそうでもなくて、むしろ師の思想から脱却しようとする意図が見えます。

バートランド・ラッセル History of Western Philosophy

洋書からも一冊。20世紀最大級の知性バートランド・ラッセルのノーベル文学賞受賞作品です。

ラッセルの美文は英語学習者のあいだで有名ですが、本書でもそれが炸裂します。エッセイのように読める哲学史。

構成もしっかりしていて、まずそれぞれの哲学者の思想がわかりやすく要約されていきます。

そしてその次に、ラッセルの論理学的アプローチでそれぞれの思想にツッコミやメスが入るという流れ。

日本語訳も出ていますが、残念ながら入手しづらいです。

 

加藤周一『日本文学史序説』

ここからは日本の哲学史になります。まずは加藤周一による名著『日本文学史序説』(ちくま学芸文庫)。

タイトルに「文学史」とありますが、加藤は空海や道元、あるいは西田幾多郎や和辻哲郎までをも文学のカテゴリーで捉え解説していきます。

したがって本書は日本の思想史の本としても読めるわけです。個々の記述は簡潔ですが、大まかな流れをつかむのに最適。

アジアやヨーロッパなどの各国語に翻訳され、日本研究のバイブルとなっている名著です。

菅原潤『京都学派』

→電子書籍版はこちら

日本は哲学の強い国ではありませんが、例外的な時期が2度ありました。最初が鎌倉時代の仏教、もう一つが戦前の京都学派です。

本書はその京都学派の流れをくわしく解説した新書。

大ボスの西田幾多郎をはじめ、西田の右腕ともいえる田辺元、京大四天王と呼ばれた4人の哲学者、さらにGHQによる公職追放を食らった後の戦後の京都学派まで、大まかな流れが把握できます。

個々の哲学者の思想的解説はあっさりしたものですが、本書だけでも大まかな傾向はつかめます。

 

仲正昌樹『集中講義!日本の現代思想』

→電子書籍版はこちら

こちらは戦後日本の思想史を解説した良書。NHKブックスから出ています。

戦争への反動から、日本の戦後思想をリードしたのはマルクス主義やそれに関連する左翼でした。

したがって本書ではおもに戦後のマルクス主義と、そこから派生した現代思想の流れが解説されます。

『京都学派』がどちらかといえば保守の思想を扱っていたのに対し、本書で俯瞰されるのは左翼思想ですね。

われわれはどのような思想的文脈にいるのか?この本を読むとそれがクリアにわかります。

 

以上、哲学史のおすすめ本を紹介しました。

これらのテキストで全体の流れを把握しておくと、個々の思想家の議論についていきやすくなります。