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東浩紀の本を読みたいならまずはこれ【時代別おすすめ5冊】

2023年11月22日まとめ記事

思想やら哲学やらに縁がなくても、東浩紀のことは知ってるという人は多いと思います。「なんか面白いしこの人の本も読んでみたいな」と考えている方もいるのでは。

日本は文芸批評家が思想家の役割を果たしてきた伝統があります。小林秀雄、江藤淳、吉本隆明、柄谷行人などなど。東浩紀はいわばその現代版です。

時代状況と関連する抽象的な思考を操るのが彼らの特徴で(このへん思想家に近い)、しかも語りかける相手が学者ではなく一般人なので(このへん作家に近い)、そんなに苦労することもなく読めます。

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では東浩紀の著作に関心が出てきた場合、まずどのへんから読んでいけばいいのか?

以下、読みやすいものを紹介したいと思います。

彼は90年代にデビューして以来、色々とスタイルが変化してきました。ここでは便宜的に1990年代、2000年代、2010年以降でわけて紹介します。

1990年代 『郵便敵不安たち』

まずは『郵便的不安たち』が読みやすいです。1990年代に書かれたエッセイなど軽めの文章を集めた本。

内容は多岐にわたります。哲学や文学だけでなく、ここですでにアニメ論やオタク論なども登場。ジャック・デリダや柄谷行人と並んでエヴァンゲリオンの庵野秀明が登場するという(当時としては)異様な構成です。

自身の著作(『存在論的、郵便的』)への解説ものっていて、かなりわかりやすいです。90年代の東浩紀がどういう感じだったのかは、この本を読めばだいたいわかると思います。

昔は朝日文庫で読めましたが、今では河出文庫から新しいバージョンが出ており、社会学者の宮台真司との対談が追加されています。

関連:ポストモダンとポストモダニズムの違い『郵便的不安たち』【書評】

 

90年代のおまけ『存在論的、郵便的』

1990年代編のおまけとして『存在論的、郵便的』も。東浩紀のデビュー作がこれです。

簡単にいえば、フランスの哲学者ジャック・デリダを解説した本です。異様な文体で知られる中期デリダに焦点を当てるのが特徴。なぜデリダはそんな文章を書いたのか?この謎を解き明かすところから思考を突き詰めていきます。

デリダ関連の本にしては読みやすいですが、哲学マニアにしかおすすめはできないような読み物ではあります。逆に哲学に興味があるような人ならぜひとも読むべき名作。

関連:ハイデガーvsフロイト 東浩紀『存在論的、郵便的』【感想】

 

2000年代 『動物化するポストモダン』

2001年に講談社現代新書から発売された本。東浩紀の著作でもっとも有名なのがこれ。海外でも読まれているそうです。

デビュー作の『存在論的、郵便的』がきわめて純度の高い哲学的な著作だったのに対し、こちらはほぼ社会学みたいなノリになってます。

しかもオタク文化をメインに据えるところが特徴。アニメやゲームの構造あるいはその受容のされ方を分析することで、現代社会の特質を明らかにする構成です。

哲学的な著作を期待していた人はこの内容にぶっ飛んだ模様。しかし本書は深刻な影響力をもち、2000年代の論客らの多くがそのスタイルに巻き込まれていったといわれます。

密度は高いものの、新書なのでわりかし読みやすいです。

 

2010年以降 『テーマパーク化する地球』

2010年代のエッセイを集めた作品。2010年代版の『郵便的不安たち』みたいな感じの本です。最初に全体像をつかむのに適しています。

東日本大震災のこと、自らが運営するゲンロンのこと、自身の過去の著作のことなど、色んな内容が明晰に語られます。平易な文章ばかりなのでスラスラいける。

一番骨太なのは中盤のインタビューでしょうか。『存在論的、郵便的』など過去の自分の作品や批評について語っていて、このパートはとくに読みごたえがすごいです。

この人は自分の仕事にやたら自己言及し、しかもそれが異様に明晰でわかりやすいので、他人による解説書や入門書のたぐいが必要ないんですよね。とくに『一般意志2.0』への自己解説は目からウロコ。

 

2010年代のおまけ 『ゲンロン0 観光客の哲学』

2010年代のおまけとして『ゲンロン0 観光客の哲学』も挙げておきます。

東浩紀が久方ぶりに理論的著作を出したといって話題になった本です。いわば2010年代版の『存在論的、郵便的』みたいな立ち位置の著作でしょうか。

公的な問題に興味のかけらもない私的な人間たちが、いかにして公共性を作れるか。これがテーマになっています。

どうしたら公的でまじめなしっかりした大人になれるか(これが伝統的な西洋哲学の発想法)、みたいな話ではありません。そうではなく、まったく公共心のない人々のあいだで作動する新しい公共性の探求をしています。

理論的著作とはいっても、90年代の『存在論的、郵便的』に比べれば圧倒的にわかりやすいです。『存在論的、郵便的』はよほどの哲学マニアでなければやめておけというような代物ですが、こっちは少しでも興味があるなら読んでみてという感じです。

関連:『ゲンロン0 観光客の哲学』人文学を更新し郵便的マルチチュードへ【書評】

 

ゲンロンカフェの動画も面白いです

 

東浩紀という人はしゃべる才能に恵まれていて、著作よりも動画のほうが面白いんじゃないかと感じることも多いです。

ゲンロンで色んな企画をやっているので、興味のある人はそっちを追いかけると得られるものが多いと思います。

毎回違うゲストを呼び何時間も対談するという、ソクラテス的な実践を見ることができます。

柄谷行人のおすすめ本はこっち↓