講談社現代新書ならこれを読んでおけ【おすすめの名作12冊】
講談社現代新書といえば新書界における四天王の一角と(僕によって)呼ばれています。
岩波新書、中公新書、ちくま新書、そして講談社現代新書ですね。新書で知識をつけたいなら、まずこのあたりから選んでおけば間違いなし。
講談社現代新書で読んでおくべきタイトルはどれか?以下、おすすめの12冊を紹介します。
なお、その他の出版社による新書は以下のリンクからどうぞ。
中根千枝『タテ社会の人間関係』
講談社現代新書の代表作のひとつ。超ロングセラーです。
社会構造の比較研究を用いる社会人類学のアプローチで、日本社会の特徴が明らかにされます。巷に溢れかえる日本論・日本人論とは次元の違う良書。
資格の共通性で集団を構成する社会と、場の共有で集団を構成する社会の対比から分析はスタート。日本は後者。
ここから感情重視、タテ社会、リーダーシップのあり方、宗教よりも社会道徳といった日本社会のメカニズムが解明されます。
高島俊男『中国の大盗賊』
こちらも講談社現代新書の代表作にしてロングセラーの一つ。
おもに皇帝(国のトップ)に焦点を当てて中国史を語る本。しかも皇帝を盗賊の親分と見なすところが特徴です。登場人物は劉邦から始まり朱元璋、李自成、洪秀全、そして毛沢東まで。
一見ふざけたような企画ですが、著者の高島俊男は中国文学の研究者であり、内容は確かなクオリティをもっています。中国史を知りたいけど教科書みたいな退屈な記述は嫌だ、という人におすすめ。
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古東哲明『ハイデガー存在神秘の哲学』
古東節が炸裂する名著。哲学の本ですが、独特の文学的な趣があって、孤高の世界観が構築されています。ハイデガーに関心がない人でも楽しめる本。
とはいえ、おそらくハイデガーの解説書としても一流です。哲学史的な概念で外的に説明を試みるタイプではなく、思想の核心に飛び込んで内部からハイデガーを語ります。
これほどハイデガー思想のコアを射抜いている本はないんじゃないか、と思えてくるんです。
ついでながら、古東ファンには『現代思想としてのギリシア哲学』もおすすめ。
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谷徹『これが現象学だ』
20世紀の哲学を代表する潮流に現象学があります。フッサールが発明し、ハイデガーやサルトルらが引き継いだ技法ですね。
この現象学を理解するのがまた難しいんです。なんかフワフワしてるというか、わかったようなわからないような絶妙な難しさがある。
その現象学の最高の入門書がこれ。谷徹の『これが現象学だ』です。すさまじく分かりやすいので、現象学系に関心のある人は読んでおくべき。
永井均『これがニーチェだ』
永井均の本に外れなしとはよく言われますが(?)、ニーチェを解説した本書もその例に漏れません。
『これが現象学だ』とタイトルが似ていますが、こっちが先です。谷は本書へのオマージュとしてあのタイトルをつけたそう。
キリスト教の神と神性一般をわけて解釈するのが特徴。ニーチェは前者の死を歓迎しますが、それは後者を復活させるためにこそだと永井はいいます。またそれに応じてニヒリズムの概念も3つの段階にわけて整理されます。このへん超わかりやすい。
読み物としても相変わらずおもしろく、永井ファンにもニーチェファンにもおすすめです。
岩崎武雄『哲学のすすめ』
戦後日本を代表するカント研究者、岩崎武雄。実は彼は一般読者向けの新書を何冊か出していて、そのうちの一冊がこれです。
本書の主張を一言でいうと「哲学は必要である」というもの。それに対して想定される反論を一つずつ潰していく構成になっています。ロジックの異常な切れ味は本書でも健在。そしておそろしく読みやすいです。
科学は事実についての判断しかできない。しかし人間は価値についての判断を避けては生きられない。価値について考えるのが哲学だ。したがって哲学は必要である。こんなふうにして話は展開していきます。
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東浩紀『動物化するポストモダン』
もはや思想や批評界隈を飛び越え、現代日本の有名人の一人と化した東浩紀ですが、本書が発売された2001年には一般的にはまだ無名でした。
『存在論的、郵便的』で衝撃を与えた新人哲学者が、急に社会学みたいな本を書き始めた。しかもオタクとかいうどうでもよさげな対象に注目している。当時は「なんだこれ」と言われていた模様。
しかし今読んでみると、その先見性に驚くと思います。そして著者の影響で本書のような仕事は珍しくなくなりました。日本社会の歴史をたどる上でも外せない重要書です。
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宇野重規『民主主義とは何か』
民主主義の入門書におすすめの一冊。古代ギリシア以来の民主主義の歴史を振り返り、以下のような疑問を氷解していきます。
・民主主義=多数決なのか?
・民主主義=議会制なのか?
・民主主義=自由主義なのか?
民主主義イデオロギーを押し付けてくるような本ではなく、批判意見をも検討し民主主義の概念を明確にしようと試みています。ルソーやミルなど、個々の思想家への導入としても使えますね。
体系性と奥深さを兼ね備えた新書になっていて、入門者でなくとも何度も読み返す価値あり。同著者の『保守主義とは何か』(中公新書)と合わせてどうぞ。
長谷川宏『丸山真男をどう読むか』
ヘーゲルの翻訳で有名な長谷川宏による隠れた良書。丸山真男といえば戦後日本最大の思想家のひとりですが、本書はその丸山を批判的に読み解きます。丸山の解説書として読んでもふつうに優秀。
丸山の説いた普遍性が、民衆の世界から遊離した抽象的な普遍性にすぎなかった、というのが著者の主張。そのような普遍性は真の普遍性とはいえない、と。このへんのロジックすごくヘーゲルっぽい。
長谷川が単なる翻訳者ではなく、ヘーゲルの論理を己のものとした思想家なのだとわかります。
ちなみに長谷川の講談社現代新書といえば『新しいヘーゲル』もなかなかの良書です。
菅野覚明『神道の逆襲』
神道の歴史をわかりやすく解説してくれる貴重な本。タイトルは怪しげですが、中身は真っ当なものです。
吉田兼倶、山崎闇斎、本居宣長、平田篤胤らの思想が解説され、天皇が人と神を媒介する神国の構造が明らかになっていきます。
日本の宗教性やその歴史に関心のある人におすすめ。
大澤真幸『社会学史』
社会学者の大澤真幸による理論社会学の通史。哲学や経済学と違って社会学は通史がなかなか見当たりませんが、ついに登場したという感じ。
まずボリュームが異常。640ページくらいあります。通常「社会学」と呼ばれる領域を超えて、アリストテレスやホッブズといった前社会学的な思考までも扱い、否定神学的に社会学のアイデンティティを浮き彫りにしていきます。
大澤らしいやたらアクロバティックな論法も登場し、内容の偏りも指摘されたりするのですが、やっぱり一人の著者によって書かれた通史は必要ですよ。
理論社会学の全体像をつかむのに最適の一冊です。
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板坂元『考える技術・書く技術』
隠れた名著。いうほど隠れてはいないかもしれませんが、そのクオリティの高さとロングセラーぶりに比して知名度はいまいちな印象。
同じタイトルでバーバラ・ミントのロジカルシンキング本が有名ですが、個人的にはこっちのほうがはるかに有益だと思います。
タイトル通り考える技法と書く技法を伝授する新書なのですが、メインターゲットはマンネリに陥って伸び悩んでいる人です。同じ分野の勉強ばかりしていてどうも専門バカになってしまったとか、年をとって妙に頭が頑固になってしまったとか、そういう人に超おすすめの本。
新しい視点を得るためのヒントが満載であり、スランプ克服に大いに役立ちます。
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以上、講談社現代新書のおすすめ本の紹介でした。新しい名著に出会ったら、また追記していきます。
なお講談社学術文庫のおすすめ本はこちら。