なぜ数学は宇宙を知っているのか『エレガントな宇宙』【書評】

2020年10月24日

ブライアン・グリーンの『エレガントな宇宙』を読了。

超ひも理論(かっこ悪い名前なのでほんとは超弦理論と呼びたい)の啓蒙書です。発売は2001年。数ある啓蒙書のなかでも本書は先駆けではないでしょうか。

著者のグリーンは超ひも理論研究の第一人者であり、本書にも主人公の一人として登場します。

超ひも理論は相対性理論と量子論を統合せんとする物理学の最先端。世界の最小の構成要素として「ひも」を想定し、それの振動具合によって様々な微小な存在者が発現すると考える、いわばひも一元論みたいな発想です。

さらにその先にはM理論なる統合理論が存在し、5つの種類からなる超ひも理論はそれのパーツだったのだという次第が明らかにされていきます。

 

ただ本書を読んでもっとも印象的だったのは、物理学や天文学ではなく、むしろ数学の威力でした。

現代の物理学者って数学の神託を受けるようにして研究を進めるんですよね。

宇宙を観察してそれを数式で表現するんじゃないんです。

むしろまず最初に数式をいじくり回し、出来上がった方程式を解釈することで宇宙の構造に迫る。そしてそれが単なる妄想と違うのは、実験と観察によって解釈の正しさが実証されるからです。

一番わかりやすい例はアインシュタインがブラックホールの存在を予言したやつですね。

量子論にしても同じ具合なわけで、物理学者はほとんど数学の導きに従っているだけであり、その理論が本当に何を意味しているのかはチンプンカンプンなのです。天才ファインマンが言ったように、「量子力学を理解している人間は一人もいない」という有様なのですから。

これは不思議といえば本当に不思議で、なぜ数学は宇宙の構造を知っているんだろうと思いますよね。

一番ありそうなのはカント的な事態ですかね?

人間が認識する世界は人間の主観に組み込まれたカテゴリーが事前に構成したものであり、カテゴリーの仕組みが世界に適用できるのは当然だというやつ。カテゴリーが数学の使い手ならば、それが構成した世界も数学の言葉で書かれていたとしてもおかしくない気がする。

数学がなぜ世界に適用できるのかという問いは古くからあるものですが、現代物理学の成果によってこの問いはますます存在感を増しているんじゃないですかね。

 

ところでグリーンの『エレガントな宇宙』、評判ほどには読みやすくなかったです。これを入門書としてすすめるのはどうかと思う。

たぶん探せば他にもっとわかりやすい超ひも理論の解説書はあるんじゃないですかね。ちょっと色々と物色してみようと思います。

また読み物としての面白さでも、こないだ読んだカルロ・ロヴェッリの『すごい物理学講義』のほうがはるかに上でしたね。ただしあちらはループ理論の解説書なので、超ひも理論の解説書として使うことはできませんが。

グリーンは他にも『隠れていた宇宙』や『宇宙を織りなすもの』といった著作があるのですが、本書を読んだ結果、それらの続編を読み進む気持ちが削がれたことは事実です(続編のほうがわかりやすくまた面白いのかもしれないけれど)

さて次はリサ・ランドールの『ワープする宇宙』を読んでいきます。