カントの『純粋理性批判』に入門するにはこの本【おすすめ5冊】

2021年1月29日カント

18世紀ドイツの大哲学者イマヌエル・カント。

「すべての哲学はカントに流れ込み、すべての哲学はカントから流れ出す」と言われるように、哲学を学ぶのなら避けては通れない存在です。

カントの主著といえば『純粋理性批判』。これを読んでいきたいものですが、なにせ文章が難しい。正常な精神の持ち主が書いた文章だとは信じられないほどです。

いきなり飛び込むのは無謀なので、入門書や研究書を頼ることになります。どんな本を頼って進んでいけばいいのか?以下、おすすめの作品を紹介していきます。

黒崎政男『カント「純粋理性批判」入門』

カントに入門しようと思ったら、まず最初に何から読むべきか。僕がおすすめしたいのは黒崎政男の『カント「純粋理性批判」入門』(講談社選書メチエ)です。

とっつきやすさと内容の確かなクオリティ。その両者を満たす入門書ということなら、これが一番だと思います。

3章からなる200ページほどのコンパクトな本なので、通読も容易です。各章のタイトルは以下の通り。

序章 すべての哲学が失敗した理由
1章 『純粋理性批判』の建築現場
2章 『純粋理性批判』見学ツアー
3章 『純粋理性批判』の動揺

本書を通読しておけば『純粋理性批判』そしてカント哲学のコアがつかめます。もっと難しい本を読んでいくための地図が出来上がる感じですね。

3章ではヘーゲルやハイデガーの見方も登場し、本書を超えた領域までも予感させてくれます。

 

石川文康『カント入門』

2冊目におすすめしたいのが、石川文康『カント入門』(ちくま新書)です。貴重な新書形態。

黒崎の本は『純粋理性批判』をメインにしていましたが、本書では3批判書をすべて取り上げます。『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』ですね。さらに最終章では後期の宗教哲学までも扱い、3批判書を超える射程までも含んでいます。カント哲学の全体像が見えてくる感じ。

新書の入門書とはいえ中身は良くも悪くもハイクオリティなので、一冊目にいきなりこれを読むとけっこうな苦行になるかもしれないです。だから2冊目にしました。

石川文康と相性がよさそうだと感じたら、『カントはこう考えた』(ちくま学芸文庫)でさらに掘り進めるのもいいでしょう。

 

岩崎武雄『カント』

伝説の研究書。著者の岩崎武雄は、東京大学でカント研究をリードした哲学界の大ボスのひとりです。

入門書ではないけれど、圧倒的な明晰さを誇り、そこらの解説書よりもはるかに強力。入門の段階を終えた初学者にこれをおすすめします。

取り上げられるのは3批判書。『純粋理性批判』と『実践理性批判』と『判断力批判』です。

まずカントの思考を要約し、次に著者の批判がくるという構成。要約も明晰で勉強になるのですが、批判部分も非常にクリティカルで、新しい角度から理解が深まります。

黒崎や石川で全体像をつかんだら次にこれに挑戦することをおすすめします。

 

伝記なら小牧治の『カント』

思想家の伝記を読むと、その思想が生まれた背景を知ることができ、理解が深まります。

カントの伝記を読みたい場合は、小牧治の『カント』をおすすめします。清水書院の「人と思想」シリーズから出ている一冊。このシリーズは何気に良書が多いです。ちょっと大きめの新書サイズで、気楽に読めます。

坂部恵の『カント』(講談社学術文庫)でも前半でさらっと伝記を扱っています。ちなみに坂部はカント研究界の大ボスのひとりです。

おまけとして中島義道の『カントの人間学』(講談社現代新書)も。カントの人となりを暴き出そうとするエッセイです。中島特有の毒はありますが、基本的に読み物として面白く読めます。

 

『カント事典』

副読本にはこれがおすすめ。弘文堂が出している哲学者事典シリーズの一冊。2014年に縮刷版が発売され、圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。

カント研究者たち(この記事で名前を挙げた坂部恵、石川文康、黒崎政男、中島義道も参加)が集い、カントにまつわるありとあらゆる概念を解説しています。

概念は五十音順に並べられ、「アエタス・カンティアーナ(カント時代)」から始まり、「我思う」で幕を閉じます。600ページ超えのボリューム。

同シリーズの『ヘーゲル事典』ほどわかりやすくはないのが残念ですが、カントを読むときに本書を傍らに置いておくと非常にはかどります。

 

『純粋理性批判』はどの訳で読めばいい?

ここまでくればカントの『純粋理性批判』に手を出しても大丈夫です。では、どの訳で読めばいいのか?

訳文の学術的クオリティと値段も含めた入手のしやすさから考えると、平凡社ライブラリーから出ているバージョンが最高だと思います。原祐による訳で、もともとはカント全集に収められていたものです。

岩波文庫は悪訳で有名なのでやめたほうがいいと思います。読みにくい上に学術的な信頼性にも疑問符がつくという、かなり評判の悪いバージョン。入手しやすいため、多くの人がこれを手にとってしまうんですけどね…

 

アカデミックな正確さにこだわらないなら光文社古典新訳文庫バージョンがおすすめです。

中山元のくだけた訳文が読みやすいうえに、解説も充実しているので。短所は解説が充実しすぎたせいで巻数が多すぎ(全部で7巻)な点ですかね。

電子書籍に抵抗のない人ならebookjapanで読むのがおすすめです。7巻全部そろってますし(リンク先は第1巻)、ここで読めばかさばらずにすみますよ。

 

まとめ

以上、カントの『純粋理性批判』入門におすすめの本でした。

・黒崎政男『カント「純粋理性批判」入門』
・石川文康『カント入門』
・岩崎武雄『カント』
・小牧治『カント』
・『カント事典』

後は『カント事典』を脇に置いてカント本人の著作を読んでいくだけです。