ニーチェ入門にはこの6冊がおすすめ【解説書から本人の著作まで】

まとめ記事

わかりやすいニーチェ入門書はどれか?

ニーチェ論の名著といえば何がある?

ニーチェ本人の著作はどれが読みやすく入りやすい?『ツァラトゥストラ』を読むならどの訳にするべきか?

以下、順番に解説したいと思います。

清水真木『ニーチェ入門』

ニーチェの解説書でもっともわかりやすいのがおそらく清水真木の『ニーチェ入門』。

ニーチェって断章形式(アフォリズム)で情報を錯綜させるような書き方をするんで、ひとつの観点から「ニーチェはこう言った」と整理するのが難しいんですよね。それに成功している(少なくともそう見える)数少ない本がこれです。

ニーチェ本人の指示にしたがい「健康と病気」の観点からその思想と著作を読み解いていきます。異常な明晰さがあって、ニーチェを読んで混乱したことのある人ほど感動するはず。

伝記的な記述も多いです。後半の小ネタも読んでいて面白い(ニーチェの苦手科目は数学だったなど)。

もともとは講談社選書メチエから出ていた本で、今ではちくま学芸文庫に移植されています。

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永井均『これがニーチェだ』

永井均といえば本物の哲学者にして一般読者向けのヒット作も書けるという稀有な実力の持ち主。彼が大きな影響を受けたのはウィトゲンシュタインとニーチェで、本書はニーチェについて本格的に語ったものです。

「キリスト教の神」と「神性」をわけ、ニーチェは後者の復活を望むがゆえに前者を否定すると説きます。そしてこの線にそってニヒリズムの概念をくわしく検討していくという流れ。意外なことに上述の清水よりもこっちのほうが形而上学っぽい話をしています。

文章は当然ながら読みやすいです。おまけにニーチェ本人の文章を訳した日本語がやたら綺麗。永井がニーチェ訳したらいいんじゃないかと思うレベルです。

 

三島憲一『ニーチェ』

入門書は3冊読むのが王道だといわれます。1冊だけだとその本の偏りに気づけず、バイアスに支配されてしまいがち。3冊がいちばんバランスがいいんです。ということで3冊目として三島憲一『ニーチェ』をおすすめします。岩波新書が黄色だったころの良書。

本書はニーチェ論にしてはめずらしいバランスの取れた本です。ニーチェ論ってそれぞれの作者の主観が大活躍するものが多いですが、本書は良くも悪くもアカデミックな風采で安心感があります。

『悲劇の誕生』への解説が分厚いのも長所のひとつ。ニーチェ解説ってたいてい後期が重視されますから、このデビュー作をくわしく案内してくれる入門書は何気に貴重。ただショーペンハウアーを過小評価している点は悪い意味で学者的だと感じてしまいます。

 

ニーチェの伝記って意外とこれというものがないですが、以上の3冊が伝記的なエピソードも扱っているので、別途伝記を読む必要はないかと思います。

ちなみにニーチェの妹エリザベートによるニーチェ伝は事実の歪曲だらけで悪名高いですが、読み物としてはかなり面白い本です。

 

シュタイナー『ニーチェ 自らの時代と闘う者』

これは入門書というより本格的なニーチェ論に近い本。神智学のボス、ルドルフ・シュタイナーの著作です。ちなみにシュタイナーは生前のニーチェにも会ったことがあり(ただしニーチェの意識はすでに混濁していた)、本書にはその時の様子も本書に書かれています。

前半が普通のニーチェ解説。びっくりするぐらいニーチェに肯定的です。神智学的な観点はほぼ皆無であり、ふつーのニーチェ解説になっていて逆に驚く。

後半は講演録。こっちはニーチェの限界を指摘する批判的なトーンが混ざります。この後半の講演がシュタイナーの真骨頂。19世紀の唯物論と闘いそれに呑み込まれてしまった者としてニーチェを描きます。

個人的にはニーチェ批判はこれにつきると思う。ハイデガーのニーチェ論も大雑把にみればこれをなぞる軌道しか描いてません。

 

本格的なニーチェ論ならそのハイデガーの『ニーチェ』(平凡社ライブラリー)も有名。もっとも巨大な影響力を放ったニーチェ論がハイデガーのこの講義です。

僕は読んだことありませんが、ハーバーマスの『近代の哲学的ディスクルス』とジンメルの『ニーチェとショーペンハウアー』も重要といわれます。

 

『喜ばしき知恵』か『善悪の彼岸』が読みやすい

ニーチェ本人の著作はどれから読めばいいのか?

ツァラトゥストラはとんでもなく読みにくいので、少なくとも一冊目にはおすすめしません。『悲劇の誕生』もテーマがけっこうマニアックな上に内容が破綻していますし、『この人を見よ』も頭がおかしいとしか思えない内容なので避けたほうがいいかと思います。『人間的な、あまりに人間的な』は前期のスランプ期の著作で重要性は低いです。

読みやすいのは『喜ばしき知恵』(河出文庫)か『善悪の彼岸』(ちくま学芸文庫)です。前者は前期と後期をつなげる重要作。後者は後期の代表的な作品のひとつ。どちらの内容もニーチェにしては整然としています。どっちかから読み始めるのがいいんじゃないでしょうか。

ただし『善悪の彼岸』とセットで扱われがちな『道徳の系譜』は難しいので要注意。

 

ツァラトゥストラはどの訳で読めばいい?

『ツァラトゥストラ』は中公文庫の手塚訳がもっとも評価が高いです。文学的というのか、日本語の格調が高くて通から評価されている感じ。

読みやすいのはわりと最近出た河出文庫バージョンですかね。僕が最初に読んだのは岩波文庫バージョンで、これもけっこう無難だと思います。

逆に光文社古典新訳文庫バージョンは意外と読みにくいという評価が多いようです。