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脳神経外科医が体験した死後の世界『プルーフ・オブ・ヘヴン』

2023年11月22日洋書

医学界と科学界に衝撃をもたらした書『プルーフ・オブ・ヘヴン 脳神経外科医が見た死後の世界』。

最初になんとなく洋書で読み、あまりに良書だったので今回は日本語版を買って2周しました。

著者はアメリカの脳神経外科医の権威エベン・アレグザンダー。

彼はある日、髄膜炎にかかって集中医療室へと搬送されます。1週間のあいだ昏睡状態に陥るのですが、大脳皮質(言語、感情、思考などをつかさどる部分)の機能が完全に停止した状態で臨死体験を味わい、病気から完全復活をはたします(この回復自体も現代の医学的にはありえないらしい)。

その結果、従来の唯物主義的な考え方を改め、より霊的な世界観に目覚めることに。

霊的次元と科学は矛盾しないと考えるのが著者の行き方。脳は意識を発生させる機械ではなく、むしろ意識を物質的次元に下ろすためのフィルターやバルブのようなものと考えているようです。

構成の仕方がやたらドラマティック。死後の世界と現世を交互に語る、ドラマみたいな手法をとっています。それがけっこう成功していて、一流のページターナーになっています。久々に続きが気になってやめられない読書をしましたよ。

僕はこのような話に抵抗を感じないタイプなのですが(二十歳ごろからそうなった)、それでも死後の世界については半信半疑だったと思います。30~40%で死後の世界あるかもなぐらいの感じ。

しかし本書を読むと、こりゃ死後の世界あるなと思うようになりました。否定するほうが難しいというか、そっちのほうが非合理的な信念を要求されると思います。

脳医学者の著者だからこそ、事態のありえなさをしっかりと認識することができ、そのありえない事態がありえたことからくる思考革命にも説得力があります。

↓こちらはYoutubeにあるエベン・アレグザンダーの講演。

 

死後の世界はどんなところ?

死後の世界はどんな感じなのでしょうか?著者の体験をちょっとだけ抜粋してみます。

・地中のような真っ暗闇。恐れや不安はない。鍛冶屋が鉄を叩くようなリズミカルな音が聞こえる。身体もなく、時間の感覚もない。血管のような、ミミズのようなものがあたりに浮かんでいる。動物の顔が消えては現れる。動物の咆哮や唸り声。

・暗闇から光が現れる。どこか田舎のような景色の上空を飛んでいる。地上には人々が、犬がいる。気がつくと美しい少女が隣にいて、テレパシーで情報を伝えてくる(この女性の正体は本書の最終盤で明らかになります)。

(この牧歌的な世界はスウェーデンボルグのいう精霊界か?)

・空高く、天使か鳥のような存在がアーチを作っている。美しい音楽。前に進んでいくと、安らぎに満ちた暗闇に閉じ込められる。隣には先ほどの女性が光のオーブと化してついてきている。ここで神との対話が始まる。

・神はパーソナルな存在だった。人間的な感情をもち、ユーモアやアイロニーさえ持ち合わせている。世界の仕組みについて、言語を超越した教えを授かる。

・神は創造物のすべてと密接に絡み合っていながら、それと完全に一致することはなく、意識を超えたところに存在している感覚だった。

とこういう感じです。

現世に帰還するときには、病院でそばに付き添っていた家族と、ちょうどその時自分のために祈ってくれていた牧師の顔が浮かんできたといいます。どうも祈りには現実的な効能がありそうですね。

 

霊的な世界は科学と数学で補促可能か

エベン・アレグザンダーは、自分の体験はスピリチュアルなだけでなく、科学的な意味をもつと主張する点にも特徴があります。これは僕の考えにも近い感じ。

何か霊的な次元を認めている人でも、科学で捉えられる世界とそれを超えた未知の世界というふうに世界を二分するのがわりと常識ですよね。あの世はあると思う、でもそれは科学の管轄外だろう、みたいな。

でもこういう行き方自体が割と最近(カントあたりから)始まった迷信にすぎないんじゃないかと思うんですよね。あの世とかスピリチュアルな現象とか、そういうのがこの宇宙の構成部分の一つだったとしてもおかしくないと思う。

将来の科学者は死後の世界を物理学的に把握してたりするんじゃないでしょうか。ただし物質とか精神とかの概念そのものが、現在とは大きく変わってると思いますが(ちょうど空間と時間の概念がニュートン時代とアインシュタイン以降では別物であるように)。

あと数学も通用するんじゃないかと思う。マックス・テグマークという数学者は「数学が表現するものはすべて存在する」と主張しました。そのなかの一部しか人間には認識できないだけだと。

おそらく数学が捉える世界の中に、死後の世界とかもあるんじゃなかろうか。ただし、数学が表現するすべてが存在するとしても、存在するすべてが数学で表現できるかは微妙だと思いますが。たとえば神みたいな存在がいたとして、それは数学を超越したロジックを持っているのかもしれない。まあとにかく色々と妄想が掻き立てられます。

 

なおこの本、日本語版は文庫化もされてます。タイトルはそのまま『プルーフ・オブ・ヘヴン』。ハヤカワ・ノンフィクション文庫から出ています。

2周目をこの日本語訳で読んでみましたが、訳はクオリティが高く読みやすいと思います。

また文庫版解説も有益。軽くではありますが、説得力のある臨死体験のいくつかを紹介しています。本書の説得力が補強される感じ。

なお、あの世の仕組みについて関心のある人には、ニール・ウォルシュの『神へ帰る』も非常におすすめです。