【洋書】サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』【書評】

2021年2月8日

サリンジャーのThe Catcher in the Rye(ライ麦畑でつかまえて)を読みました。

主人公は17歳の少年ホールデン。彼が学校を退学処分となり、家へ帰るという筋書きです。

ホールデンのパーソナリティがこの作品の肝。彼はいわば、人間社会という劇を演じきれないノリの悪い少年です。

彼から見ると劇に没入している人間はすべてペテン師に見えます。

そんな主人公ホールデンの一人称の語りが魅力。欺瞞に満ちた劇とそこに没入するペテン師たちを、いちいち告発していくようなノリで話は進んでいきます。

 

サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』というと、なにかおしゃれでリア充のようなイメージがありますよね。少なくとも僕はそういうイメージをもっていました。

しかし実際に読んでみると、実態はその逆なのですね。社会に没入できない繊細な主人公が、厚顔無恥な社会を告発していく。

たとえばフェイスブックやインスタを見て気持ち悪くなった経験はだれにでもあると思います(?)。いってみれば、それが主人公ホールデンの根本気分に近いと言えるでしょう。

 

物語は一応ハッピーエンドのような形で幕を閉じます。

読者が最後にカタルシスを感じるのは、フィービー(ホールデンの妹)が車に轢かれるんじゃないか、フィービーが回転木馬に乗っているあいだにホールデンが立ち去ってしまうのではないかという不安を、作者が意図的に読み手に与えているからでしょうね。何事も起こらなくてホッとしました。

 

サリンジャーの英文は読みやすい

文章は読みやすかったです。古典にしてはというだけでなく、現代の作家と比べても読みやすいほうだと思う。

直前に読んでいたカズオ・イシグロのほうがずっと難しかったです。

ちなみにスティーブン・キングなんかもサリンジャーよりはるかに難しいですね。

それからこの作品、ちょっとメグ・キャボットに似ている気がする。トーンは違うのですが、ノリが似てる。たぶんキャボットはサリンジャーから影響を受けているんだと思います。

 

サリンジャー伝によると…

デイヴィッド・シールズとシェーン・サレルノが書いた伝記『サリンジャー』によると、サリンジャーは兵役の後遺症(PTSD)に苦しめられつつ、10年かけてこの本を書き上げたそうです。

そしてそれを後悔したとのこと。

あまりの大ヒットゆえ、世間に確固としたサリンジャー像ができあがってしまい、それに振り回されることになったからです。彼はなによりも孤独を欲したといいます。

サリンジャーはホールデンと同一視されることを拒んだそうですが、このエピソード自体どこかホールデン的ですね。