本の読み方がわかる読書法の名著はこれ【おすすめ7冊】

2023年4月28日まとめ記事

読書術の本は何気に強力なアイテムです。

どうやって本を読んだらいいのか、どうやって本を選んだらいいのか、こういった技術が具体的に体得できるというのが一つ。

さらに著者の博識ぶりや熱気に煽られてモチベーションが上がる効果も期待できます。スランプのときに読むと効果的だったりするんですよね。

そして高名な読書術の本は単純に読み物としておもしろい場合がほとんどです。

では読書術の名著にはどんなものがあるのか?

以下、とくにおすすめの7冊を紹介します。

加藤周一『読書術』(岩波現代文庫)

加藤周一は日本を代表する知識人のひとり。医学博士にして超一流の文学史家でもある超人です。

本書ではその加藤が読書をいかに楽しみそこから成果を引き出してきたのかが、体系的に語られます。一流の読書術のレベル感や全体像がつかめます。

内容はおそく正確に読む方法、はやく読む方法、そもそも読まないですませる方法、外国語の本を読む方法、難解な本を読む方法などなど。

興味深い洞察や小ネタも満載。通勤電車のなかでラテン語をマスターなど、天才ぶりも垣間見えます。外国語学習者が読んでも刺激を受ける部分は多いと思う。

単なる読書術の書には収まりきらないエネルギーをもっている名著です。単にエッセイとして読んでも超面白い。

ちなみに加藤周一は乱読派だったようです。

私は、手あたりしだいに本を読んで、長い時を過ごしてきました。そういうのを世の中では「乱読」というようです。「乱読」の弊――しかし、そんなことを私は信じません。(中略)「乱読」の弊害などというものはなく、ただ、そのたのしみがあるのです。(加藤周一『読書術』)

 

佐藤優『読書の技法』

 

次はこれ。元外交官にして作家の佐藤優による読書論です。この人は数々のベストセラーを出していますが、個人的に本書が最高の良書だと思います。

まず「速読は精読するに足る本を見つけ出すためにある」という主張が鮮烈。さらに速読、精読、ノートのとり方など実践的な内容が続きます。基本的に本書のやり方に従い、それを自分なりにアレンジ(例えばノートは負担が大きすぎるから取らないなど)すればだいたいなんとかなります。

また佐藤優という人物で注目したいのは、読者をモチベートする才能です。この人の本を読んでるとなんかやる気が湧いてくるんですよね。それは本書においても健在で、そこがこの本の魅力の一つになっています。スランプ克服に使えます。

後半の文学作品解釈とかおすすめ教材とかはだいぶ無茶がある感じがします。この人はやたらレベルの高いテキストや勉強法を薦めてきたりしがちなので、そのへんは話半分で聴いておいたほうがいいと思います。

アマゾンのオーディブルからオーディオブック版も出ています(最初の一冊は無料)。

関連:佐藤優『読書の技法』速読は熟読する本を選別するためにある【書評】

 

アドラー&ドーレン『本を読む本』(講談社学術文庫)

1940年代のアメリカで発売され、それ以来世界中で版を重ね続けている名著。アカデミックな内容で、学術的なレベルで本を読む方法が解説されます。

本を読むという行為を初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書の4つに分け、それぞれの方法を事細かに指導するという流れ。

はっきり言ってレベルは非常に高く、とくに後半は読んでて目眩がするほどですが、有益な読書術の本であることは間違いないです。

関連:『本を読む本』学者レベルの読書術を身につける方法【書評】

 

平野啓一郎『本の読み方 スローリーディングの実践』(PHP文庫)

芥川賞作家・平野啓一郎による読書術。それもアンチ速読の立場を明確に打ち出した、スローリーディングの実践書です。

どうすれば本を深く読み込み、細部の仕掛けに気づき、独創的な読書体験を構築していけるのか。それには表層的なプロットだけを抽出する速読ではなく、スローリーディングが欠かせないと著者はいいます。

前半はスローリーディング実践のためのヒント集。後半は夏目漱石、森鴎外、カフカ、三島由紀夫、川端康成、フーコーらの文章を通じて、著者自身がスローリーディングを実践してみせます。小説家ならでの読解術も聞けて、興味深い内容。どういうことを考えながら作家が文章を構築しているのか垣間見えます。

小説の読書が話の中心になっていますが、他のジャンルを読む読書家でも本書から得られるものは多いと思います。効率性にこだわるあまりスランプに陥ってしまったみたいな人にはとくにおすすめ。

 

ショーペンハウアー『読書について』(光文社古典新訳文庫)

19世紀ドイツの哲学者ショーペンハウアーの読書エッセイ。彼の残した文章のうち現在もっとも読まれているのがたぶんこれ。

「読書は他人に考えてもらうことである」という読書否定から始まるのがインパクト大。多読をするな、新刊を追いかけるながメインの主張で、そこから古典を読めという結論にいたります。

ショーペンハウアーの言うことを文字通りに受け止めすぎると危険だったりしますが、真理の一端に光を当てていることは確かだと思います。

ショーペンハウアーは天才的な文才の持ち主で、本書でもそれが味わえます。

関連:ショーペンハウアーの読書論【多読をしてはいけない理由】

 

三木清『読書と人生』(講談社文芸文庫)

こちらも哲学者の三木清による名著。三木は戦前日本を代表する大物哲学者の一人です。

「古典ばかり読めというのはいかがなものか」というスタンスの文章があり、ショーペンハウアーの読書論と併読するとバランスが取れます。

自伝的な内容になっていて、読み物として楽しいです。とりあえず三木が学んだ環境豪華すぎ。戦前の京都大学とドイツ。人類史上でもめずらしいレベルの贅沢な環境だったといえるでしょう。

西田幾多郎やハイデガーと身近に接した記録も書かれています。

 

樺沢紫苑『アウトプット大全』

最後におまけとしてアウトプットの本も一冊挙げておきます。厳密には読書術の本ではありませんがこれもおすすめ。

読書好きの人はすでに大量の情報をインプットしていますから、効果的なアウトプットを加えてやることで一気に能力が伸びます。

自己成長はインプット量ではなくアウトプット量に比例すると説き、インプットとアウトプットの黄金比は3対7であるとされます。たぶんほとんどの人がインプット偏重になっていると思う(とくに読書家は)。

アウトプットが足りていないことを知らせてくれるだけでなく、具体的なアウトプット方法があれこれ書かれていて、即効性の高い本です。

脳科学や心理学の知見で自説を補強するため説得力もあり、読み物としても面白いです。

これもアマゾンのオーディブルからオーディオブック版が出ています。

関連:読書のアウトプットにはこの方法がおすすめ【3つの選択肢】

 

以上、読書法の名著7冊の紹介でした。新しい良書を見つけたら随時アプデしていこうと思います。