中国哲学の特徴をわかりやすく解説【3つのポイント】

中国哲学のベースにある特徴とは何か?

森三樹三郎の『中国思想史』(レグルス文庫)を参考にしつつ、3つのポイントに着目しつつ整理してみたいと思います。

中国哲学3つのポイント、それは以下の通り。

・天の思想
・宗教性の薄さと政治色の濃さ
・論理性の弱さ

以下、それぞれ解説します。

天の思想

中国哲学のベースにあるのは何よりもまず天の思想です。

非常に意外なことですが、太古の中国は人格神を信仰していました。天には人格神がいて、万物を生み、保護している。そして神は世界を治める君主を選び、君主が道を外れたさいにはこれを罰するのです。

しかし興味深いことに、中国においては時間が経つにつれて天は非人格化されていきます。天の思想は残るものの、それは抽象化され、人格をもった神のような存在は退場します。

なぜそうなったのか?森三樹三郎はその理由を、周王朝の安定した長期政権にもとめています。社会が安定していたため、天の人格神が活動する機会が減り、そのまま存在感を失ったというのですね。

怒涛の混乱とカタストロフィのなかで人格神の存在が増していったユダヤ民族とは、真逆の展開をたどったといえそうです。

現代はよく「神なき時代」とかなんとか言われますが、中国人はそおの流れをとっくの昔に経験していたのかもしれないですね。

 

抽象化された天の思想は汎神論の特徴を帯びます。神と自然と人間が連続的にとらえられるわけですね。西洋でいうスピノザ哲学みたいな感じです。

これもまた神と人間、そして人間と自然が断絶したものとしてとらえられるキリスト教とは真逆の方向性です。

 

ちなみに、この流れにおいて唯一の例外が墨子です。

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諸子百家の一派、墨家の創始者が墨子。

彼は人格神を信仰し、儒教を批判しました。その理論は共同体の宗教ではなくそれを超えた世界宗教を予感させ、プロテスタンティズムのような性格が見え隠れします。

実際プロテスタントのように、墨家はエリートの特権を批判するほうに向かいます。これがために他のエリート層から攻撃を受け、一度は儒教と双璧をなした墨家は滅びてしまいました。

墨家が勝ってたら中国はぜんぜん違う宗教性の国になっていたかもしれません。

 

宗教性の薄さと政治色の濃さ

中国哲学の2つ目の特徴、それは宗教性の薄さと、政治性の濃さです。

たとえばインドとかヨーロッパの哲学って宗教色が強いですよね。前者はヒンドゥー教の、後者はキリスト教の影響がいたるところに見られます。

しかし中国哲学にはそのようなトーンがありません。例外はあるにせよ、ほとんど宗教的なことを言わないのです。

その代わりに政治的なトーンが強めです。君主はこう振る舞うべきだとか、これが正しい政治のあり方だとか、政治が機能不全におちいると人民はこうなるとか。

 

なぜこのような特色が生まれるのか?森三樹三郎はこれを、だれが思想と文化の担い手であるかに着目することで説明しています。

インドでは思想の担い手はおもに祭祀者(バラモン)でした。ヨーロッパでは教会の牧師や神学者が長きにわたって思想を育んだ。

一方、中国で思想を展開したのは政権の官僚です。漢代以降、中国では官吏イコール文化人になる土壌ができあがりました。

官吏の待遇がべらぼうにいいため、頭のいい連中はみんな官吏になりたがる。また官僚試験に専門知識ではなく儒学などの一般教養を課すため、官吏は自然と一流の文化人になっていきます。

こうして中国では官僚すなわち文化人(哲学者や作家)であり、彼らが生み出す作品はことごとく政治色の強いものになっていくわけです。

 

論理性の弱さ

中国哲学の3つ目の特徴、それは論理性の弱さです。

まあ日本に比べれば中国もだいぶロジカルな風土ではあるのですが、インドやヨーロッパの圧倒的な論理学と対照させてみると、中国人はきわめて直観的かつ感性的なアプローチを好みます。

たとえば中国はインドから仏教哲学を受け入れますが、ゴリゴリの論理的な哲学理論はあまり発展せず、とくに開花したのは禅や念仏といった直観的な分野でした(そしてそれが日本にも入ってくる)。

 

なぜこのような特色が発生するのか?森三樹三郎はこれを、言語の構造から説明しています。

中国語という言語は孤立語と呼ばれ、語尾変化や接辞にあたるものがありません。存在するのは単語だけで、それをあれこれ並べ替えることで意味を作り出します。

なぜこれが論理性の欠如につながるかというと、ゴリゴリの論理学を発展させるには単語だけではなく、それらを結びつける部分(コプラと呼ばれたりします)が重要だからです。

インドや西洋の言語は、このコプラの働きが顕著ですね。人間がどのような哲学を形成していくかは、このように言語の構造から多大な影響を受けます。

強烈な哲学的な風土をもつインドとヨーロッパが同じ語族(その名もインドヨーロッパ語族)に属するのは偶然なのでしょうか?

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ここに着目し「哲学とは文法の見る夢だ」みたいなことを言ったのはニーチェでした。

 

中国哲学史の入門にはこれ

以上、中国哲学の特徴についてでした。ポイントは以下の3つでした。

・天の思想
・宗教性の薄さと政治色の濃さ
・論理性の弱さ

中国哲学史に入門するなら森三樹三郎の『中国思想史』(レグルス文庫)がおすすめです。新書サイズで上下2巻。

思想の移り変わりにひそむロジカルな構造をわかりやすく解説してくれる、隠れた名著です。

哲学の本

Posted by chaco