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ウィトゲンシュタインに入門するならこの本【おすすめ5冊】

2024年7月14日まとめ記事

20世紀には最大の哲学者と言われる人物がふたりいますが、そのうちの一人がウィーン生まれの天才ウィトゲンシュタインであり、現代の哲学にも大きな影響を与え続けています。

彼の著作は前期と後期でスタイルがガラッと変わり、それぞれの方向性で難しさを極めています。まともに読もうと思っても自力ではまず無理。

どうにか入門できないものか?

幸いなことに日本ではウィトゲンシュタインについて書かれた良質な本がたくさん読めます。以下、僕が読んだことのあるもののなかからおすすめの本を紹介します。

哲学の解説記事はnoteに書いてます↓

レイ・モンク『ウィトゲンシュタイン 天才の責務』

本人もいうようにウィトゲンシュタインの哲学には「書かれた部分(言語や論理についての考察)」と「書かれなかった部分(倫理や宗教)」があり、後者のほうが重要であるとされます。

だからウィトゲンシュタインのことを知ろうと思ったら、この書かれなかった部分について理解を深める必要があるのです。その最良の方法はウィトゲンシュタインの伝記を読んでその人となりを知ること。

圧倒的におすすめなのがレイ・モンクの『ウィトゲンシュタイン 天才の責務』というやつ。世界的に高い評価を受けている名著です。日本語版を入手しづらいのが残念ですが、中古はそこまで高くありません。英語に自信のある人は原書で読むのもあり。文章はわかりやすいです。

僕は昔、大学の図書館でこれを借りて読み感激し、後に原書を買って洋書多読も兼ねさらに2周しました。そのぐらい面白い。

もっと簡単に入手できて気軽に読めるものがいいという人にはノーマン・マルコム『ウィトゲンシュタインの思い出』(平凡社ライブラリー)をおすすめします。ウィトゲンシュタインの教え子が、間近で見た師のすがたを描いたコンパクトな伝記です。

 

永井均『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書)

最初に読むのはこれがいいと思います。永井独特の癖はありますが、内容は明晰で、文章も読みやすい。新書だからすぐ読み終わります。しかも読み物としても面白い(永井の本は哲学系なのによく売れる)。

前期、中期、後期とバランスよく記述。伝記的な描写もさらって織り込んであります。本書を通読すれば全体像がつかめるでしょう。

2020年に出た古田徹也『はしめてのウィトゲンシュタイン』(NHKライブラリー)も評判がいいですが、個人的には永井のほうが読みやすいと感じました。

ちなみに日本でウィトゲンシュタイン的な哲学をする哲学者といえば大森荘蔵が大ボスで、その流れのなかに野矢茂樹とか永井均とかがいる感じです。戦後日本の哲学界ではこの大森荘蔵と廣松渉が双璧とよくいわれます。

関連:語りえぬものは2種類ある 永井均『ウィトゲンシュタイン入門』

 

野矢茂樹『ウィトゲンシュタイン「論理哲学論考」を読む』(ちくま学芸文庫)

論考の本格的な入門にはこれがおすすめ。

『論考』から順番に文章を引用してきて、それをくわしく解説していく構成。『論考』を最初から最後まで著者と一緒に読んでいくような読書体験になります。

内容は高度ですが、文章は易しくわかりやすい(そして独特のユーモアがある)。また文庫版あとがきでは『哲学探究』と『論考』の関係性について論じています。これも有益。

本書だけ独立させて読んでもいいですし、『論考』と併読しても捗ります。

 

鬼界彰夫『ウィトゲンシュタインはこう考えた』(講談社現代新書)

中期~後期をくわしく辿るには鬼界彰夫『ウィトゲンシュタインはこう考えた』がおすすめです。

新書なのにページ数に420ページ近い異様なボリューム。『論考』に約90ページ、論考から哲学探究へと思想が切り替わる中期に約70ページ、『哲学探究』に約140ページ、晩年の『確実性の問題』に約80ページを割いています。

中期以降をこんなにくわしく解説してくれる本ってそうないですからね。しかも新書です。内容は高度ですが文章自体は読みやすいです。

『論考』の解説も他ではめずらしい哲学史的な視点もあったりして興味深く読めます。

 

クリプキ『ウィトゲンシュタインのパラドクス』(ちくま学芸文庫)

おまけとして海外からも一冊。哲学界隈に衝撃を与えたクリプキの有名な本です。2022年にちくま学芸文庫に入って入手しやすくなりました。

焦点が当たるのは『哲学探究』の言語ゲーム論。「人は規則に従うことが(原理的に)できない」という観点からウィトゲンシュタインの真意に迫ります。

柄谷行人の『探究』(講談社学術文庫)もおすすめ。ウィトゲンシュタインの言語ゲーム論をヒントにオリジナルの哲学が展開されます。クリプキ的な見方をさらに押し進めたものになっています。

 

トゥールミン&ジャニク『ウィトゲンシュタインのウィーン』

もう一冊おまけで海外の有名所を。ウィトゲンシュタインの哲学を、彼が生まれ育った地に還元して理解する有名な本です。

哲学史的なアプローチが特徴。ウィトゲンシュタインって降って湧いたような天才みたいな扱いをされることが多くて、哲学史の流れのなかに位置づけられることが少ないですよね。しかし本書は例外で、彼が生まれ育ったウィーン社会を通じてその思想に迫ります。彼の哲学や思想がどういった歴史とともに用意されたのかわかります。

話題が多岐にわたり通読はけっこう苦行。真面目に最初から全部読もうとするとおそらく挫折するので、中盤~後半のウィトゲンシュタインに直結するパートだけまずは読んでみるのをおすすめします。

関連:『ウィトゲンシュタインのウィーン』マウトナーとヘルツとフレーゲの影響

 

『論理哲学論考』(岩波文庫)

『論考』はどの訳で読めばいいのか?色々出ていますが、普通に岩波文庫版でいいと思います。

訳者は野矢茂樹。上述の『「論理哲学論考」を読む』の著者です。同書を副読本として参照しながら少しづつ読み進めていくのが最善でしょう。

巻末には「バートランド・ラッセルによる解説」も収録(なおラッセルの解説は間違っている模様)。索引もついてます。

 

『哲学探究』(鬼界彰夫訳)

後期の『哲学探究』は残念ながら文庫化されていません。読むなら2020年に発売された鬼界彰夫訳をおすすめします。鬼界彰夫は上述の『ウィトゲンシュタインはこう考えた』の著者。

なぜこの訳がいいかというと、構成が読みやすいからです。内容的なまとまりごとに区切りを入れて、それぞれに訳者による注解が入るという流れになっています。元のままの本をそのまま読む場合とくらべて圧倒的にわかりやすい(それでもわけのわからん本ではありますが)。

ちなみにウィトゲンシュタイン本人の著作なら中期の『青色本』も人気です。これはちくま学芸文庫から大森荘蔵訳が出ています。

 

以上、ウィトゲンシュタインの入門におすすめの本でした。

20世紀の哲学を二分するもうひとりの大ボス、ハイデガーへの入門については以下の記事を参照のこと。

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