中級者向け哲学史 新田義弘『哲学の歴史』【書評】

2020年10月24日

僕は哲学初心者のひとにいつも木田元の『反哲学史』をおすすめします。しかしその次に読むべき中級者向けの哲学史はなにかと聞かれると、なかなかコレというものが思い浮かばないんですよね。

今回読んだ新田義弘『哲学の歴史』(講談社現代新書)は、そうした中級者向けの哲学史本リストの一角を占めることになりそう。

現象学や解釈学の研究で知られる新田義弘が、一般読者向けに書き下ろした哲学史です。ちなみにこの人、あの新田義貞の子孫だそう。

新書とはいえ、内容はかなり高度。一冊目に読む本ではないですね。というか二冊目に読むべき本でもないかも。

ある程度哲学史を把握した人が、知識を整理したりさらに深めたりするために読む本だと思います。

 

クザーヌスやホワイトヘッドへの言及はめずらしい

本書の特色はニコラス・クザーヌスへの言及でしょうか。

自然への数学の適用という近代科学の基礎を、思想的に準備した立役者として、クザーヌスが少しくわしめに解説されています。

また、現代哲学のパートでホワイトヘッドに触れているところも興味深いですね。

この二人を取り上げる哲学史の本は、けっこうめずらしいと思います。

 

中級者向けの哲学史の本は他にないのか?

中級者向けの哲学史の本として本書をいの一番に挙げるかといわれたら、微妙なところですね。難しすぎるし、内容的にもやや断片的すぎるきらいがある。

消去法で熊野純彦の『西洋哲学史』(岩波新書)になりますかねやはり。

記述はまあまあ易しいですし、新書ながらも上下巻で体系的な知識を身につけることができるからです。

ただ一冊目に読むことはおすすめしません。一冊目には長すぎる。入門者には木田元の『反哲学史』がおすすめです。

 

中級者向けといえばバートランド・ラッセルの『西洋哲学史』も挙げておきたい。ノーベル文学賞を受賞した作品です。

ただめちゃくちゃ長いうえ(原書でも約1,000ページ)、日本語バージョンが入手しにくいので、気軽にはおすすめできません。

僕が読んだのは英語で書かれた原書です。英語学習者には超おすすめ。

隠れた名著としてクラウス・リーゼンフーバーの『西洋古代・中世哲学史』(平凡社ライブラリー)も挙げておきたい。

本格的内容ながらも、要点がコンパクトにまとまった、めちゃくちゃわかりやすい本です。

ただしタイトルの通り古代と中世しか扱っていないのがネック。近世以降が書かれていないんですよね。

したがって本書も、いの一番におすすめすることはできないのです。

 

新田義弘のおすすめ本は『現象学と解釈学』

ちなみに、新田義弘の著作でおすすめは『現象学と解釈学』(ちくま学芸文庫)です。

わかりやすさと奥深さを兼ね備えた名著。

現象学の解説がすばらしいのはもちろんのこと、解釈学を解説してくれるテキストは貴重です。

しかもこの本の場合、現象学と解釈学の関係性についても説明してくれる(ハイデガーの解釈学的現象学を取り上げて)。

非常に勉強になった本です。現象学や解釈学、あるいはハイデガーやフッサールに関心のあるひとに、全力でおすすめしておきます。

ちなみに『現象学とは何か』(講談社学術文庫)のほうは難しすぎてやばかったですね。

おそらくフッサール本人の著作よりも難しいと思います。

パッと見ではこっちのほうが入門書的な本に見えますが、実際にはそうではないので気をつけてください。

哲学の本

Posted by chaco