『ヨーロッパ思想入門』ギリシア哲学とヘブライの宗教【書評】

2021年1月27日

岩田靖夫といえば古代ギリシア哲学を専門とする大学者。

彼が若い読者のために書き下ろした贅沢な新書が、この『ヨーロッパ思想史』(岩波ジュニア新書)です。

ものすごく評価の高い新書ですが、十数年前に買ったっきりで読まず嫌いのまま積ん読化。ラッセルのThe History of Western Philosophyで哲学熱が高まった今がチャンスと思い、一気に読破しました。

本書の特徴は、ヨーロッパ思想の根源に注力し、そこをピンポイントに語る構成にあります。

ヨーロッパ思想の根幹とはなにか?

ギリシア哲学とヘブライの宗教(ユダヤ教およびキリスト教)ですね。ただしギリシアもヘブライもヨーロッパではありませんが(インドと中国が日本ではないように)。

本書は全体で約240ページの本ですが、ギリシアとヘブライだけで150ページを費やしています。ヨーロッパを準備した、ヨーロッパ以前の初期の思想に、大半のページが費やされるという大胆な構成。

 

内容に関して言うと、とくにヘブライの章がすばらしいです。著者はレヴィナスの思想に同調している感じがありますが、その立場とユダヤ・キリスト教は相性が抜群ですからね。著者のパッションがほとばしっています。

岩波ジュニア新書といえば遅塚忠躬の『フランス革命』がパッションのほとばしる名著として有名ですが、本書もそれに勝るとも劣らない本だといえそうです。

 

後半は中世以降の西洋哲学史がざっくりと語られます。取り上げられるメンバーは以下の通り。

アウグスティヌス
トマス・アクィナス
デカルト
カント
ロック
ロールズ
キルケゴール
ニーチェ
ハイデガー
レヴィナス

目を引くのはロールズとレヴィナスですね。これだけざっくり語るなかに、このふたりが入るのかという。それだけ著者の思い入れがある哲学者なのでしょう。

ロールズは20世紀アメリカの政治哲学者で、「正義」の問題を考え抜きました。レヴィナスは20世紀フランスの哲学者。ハイデガーの存在論を批判し、倫理的な思索を突き詰めたことで知られます。

キルケゴールやニーチェを大きく取り上げるところにも表れているように、岩田靖夫は倫理学的な思想を軸にするタイプの学者ですね。

 

中世以降を知るには他の哲学史本を読もう

岩田靖夫の『ヨーロッパ思想入門』はあくまでも西洋哲学のコアをピンポイントに射抜く構成です。

中世以降の解説はほんとうにざっくりしているので、他書にあたったほうがいいですね。

どんな本を読んでいけばいいのか?

内容に定評がありなおかつ入手しやすいものとなると、熊野純彦の『西洋哲学史』ですかね。岩波新書から出ており、上下巻に分かれたかなりのボリュームを誇ります。

僕のイチオシは木田元の『反哲学史』(講談社学術文庫)。ハイデガーの専門家が独自の観点で物語る西洋哲学史です。読み物としての面白さなら木田のほうがはるかに上だと思います。

哲学の本

Posted by chaco