当サイトはアフィリエイト広告を利用しております

河出文庫ならこれを読んでおけ【おすすめの名著10冊】

2024年7月15日まとめ記事, 文庫おすすめ

今回は、僕が読んだことのある河出文庫の本のなかから、とくにおすすめの作品を紹介します。

河出文庫の創刊は1980年。

元々は玄人好みの作品を擁するマニアックな立ち位置でしたが、近年はベストセラーから哲学、自然科学まで幅広いラインナップで存在感を増しています。

ダンテ『神曲』

西洋文学の最高傑作はなにか?色々と候補はありますが必ず名前が挙がるのがダンテの『神曲』。

ダンテは13~14世紀イタリアの詩人。『神曲』は地獄篇、煉獄篇、天獄篇の3冊からなり、主人公と化したダンテがあの世の霊に導かれて各地をツアーします。

西洋中心史観、キリスト教中心史観的な世界観が若干きついですが、作品としての荘厳さは異常。現代の臨死体験研究を知ったあとに読むと「だれかの実体験に基づいている部分もあるんじゃないか?」と思えてきたりもします。

ちなみに訳者の平川祐弘による『ダンテ「神曲」講義』も河出文庫から出てます。

関連:ダンテと行くあの世見学ツアー『神曲(地獄篇・煉獄篇・天国篇)』

 

ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』

21世紀の現代ドイツにヒトラーが復活する抱腹絶倒ユーモア小説。映画化もされていて、そっちも有名。

ただ笑えるだけじゃないのがこの作品のすごいところ。滑稽なヒトラーを笑っていた読者は、ヒトラーによって笑われる滑稽な現代社会をヒトラーとともに風刺し、やがて作中ヒトラーに同調する自分を見出します。

風刺が重層的に飛び交う名著。日本語訳もユーモアを再現できていて最高。

関連:ユーモアのある作家といえば誰?【笑える本を紹介】

 

高橋和巳『邪宗門』

高橋和巳は20世紀日本の天才小説家。39歳で早逝してしまいました。

代表作『邪宗門』は1965年の作品。東大教官がすすめる本ベスト100で日本の小説部門1位。

新興宗教の教団にひろわれた主人公が国家からの弾圧をくぐり抜け世直しを目指す、日本離れした壮大な物語です。

 

飲茶『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』

哲学に興味のある人は最初にこの人の本を読むのがいいと思います。面白おかしく哲学者たちが紹介されていき、読者は哲学史の全体像がつかめます。

著者には確かな哲学的センスがあって、それが本書を浅薄なハウツー本とは一線を画す存在にしています。

西洋編と東洋編がありますが何気に東洋編のほうが好き。さらっと深いこと言ってたりするんですよね。

関連:哲学史の名著はこれ【入門者~中級者におすすめ10冊】

 

ヘーゲル『哲学史講義』

ヘーゲルは西洋哲学の最難関。読めたもんじゃありません。しかし彼の講義録は読みやすいです。このギャップが異常。

いちばん有名なのは歴史哲学講義ですが、おすすめはむしろ哲学史講義。ヘーゲルのロジックを学びながら哲学史のおさらいができるという優れもの。これが河出文庫に収録されています(全4巻)。

訳者は『精神現象学』をまともに読める日本語に訳したことで称賛された長谷川宏です。

関連:ヘーゲルの精神現象学が難しすぎる件【入門におすすめの本はこれ】

 

ニーチェ『喜ばしき知恵』

ニーチェの本で読みやすいのは中期の『喜ばしき知恵』か『善悪の彼岸』のどちらか。

河出文庫では『喜ばしき知恵』が新訳で出ています。たぶんこのバージョンがいちばん読みやすい。

ニーチェを初めて読むなら本書か、ちくま学芸文庫から出ている『善悪の彼岸』のどちらかにするとよいでしょう。

関連:ニーチェ入門にはこの6冊がおすすめ【解説書から本人の著作まで】

 

ドゥルーズ『記号と事件』

河出文庫といえばドゥルーズの文庫化みたいなイメージが個人的にはあります。

ドゥルーズは20世紀フランスの哲学者。いわゆる「フランス現代思想」の代表者のひとりでもあります。

河出文庫に収録されているのはこのへん↓

・差異と反復(主著)
・意味の論理学
・アンチ・オイディプス(一番有名)
・千のプラトー
・フーコー
・哲学とは何か
・記号と事件

いちばん読みやすいのは『記号と事件』。なぜならインタビューの収録だから。どれか一冊という人はまずここから入るのがおすすめ。

関連:ドゥルーズの哲学をわかりやすく解説【超越論的経験論へ】

 

ロヴェッリ『すごい物理学講義』

イタリアの物理学者による世界的ベストセラー。古代ギリシアから現代の量子重力理論までを概観する構成になっています。

ロヴェッリはループ理論と呼ばれる量子重力理論の第一人者。啓蒙書を書かせてもおそろしい才能を発揮します。本書をはじめとして『時間は存在しない』や『世界は関係でできている』も各国でベストセラーになりました。

でもやっぱりこの本が最高傑作だと思う。この手の啓蒙書を書かせたらロヴェッリとブライアン・グリーンが双璧(グリーンは超ひも理論の第一人者)。

関連:文系でも読んでおきたい理数系の名著はこれ【おすすめ11冊】

 

ブライアン・フェイガン『古代文明と気候大変動:人類の運命を変えた二万年史』

こちらは考古学の本。気候の変動がいかに人間の巨大文明を衰退させ葬ってきたかという話。

地学や気象学が人間の歴史とのかかわりのなかで解説されていて面白い。世界史に興味のある人が読んでも楽しめるでしょう。

同じく『歴史を変えた気候大変動:中世ヨーロッパを襲った小氷河期』も良書です。

 

ユアル・ノヴァ・ハラリ『サピエンス全史』

イスラエルの歴史学者ハラリのベストセラー。2023年に文庫化されました。

人類7万年の歴史を認知革命期、農業革命期、科学革命期の3つにざっくり区分けし、歴史の大きな流れを見渡します。ちなみにこのようなプロジェクト(マルクスの史的唯物史観含む)の元ネタは、先にも名前の出たヘーゲルの歴史哲学講義。

『ホモデウス』以降は興味わかなくて読んでない僕ですら本書は楽しめました。作者の極端な思想や教条が出てくる場面が比較的少なく、読みやすいです。

関連:【洋書】『サピエンス全史』を英語で読んでみた【書評】

 

以上、河出文庫のおすすめ本を紹介しました。新しい良書に出会ったらまたアプデしていきます。