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ユーモアのある作家といえば誰?【笑える本をおすすめします】

2023年11月18日

ユーモアを駆使できる作家って貴重ですよね。

知的で、上品で、ちょっと皮肉があって、読者をクスッと(場合によってはゲラゲラと)笑わせる才能。

このようなユーモアセンスを備えた作家といえば誰がいるのでしょうか?

以下、僕の知っている作家とその作品を、日本編と海外編にわけて紹介しようと思います。

ユーモアのある作家(日本編)

日本にはユーモアが乏しいとよく言われます。

それは作家の世界でも同じで、明治以降の日本文学はなにか深刻で暗いものばかりが幅を利かせてきました。暗くなければ一流の文学にはなれないという偏見すら存在するほどです。

しかし何にでも例外はある。ということでまずは日本の作家からユーモアセンス抜群の本を紹介したいと思います。

夏目漱石『坊っちゃん』

日本を代表する文豪・夏目漱石の初期作品です。

漱石といえば後期の『こころ』などのほうが有名かも。そのせいで多くの人が漱石について偏ったイメージを持っています。後期の漱石は自然主義に傾倒し、いかにも日本近代文学といった感じの暗さに取り憑かれていきましたからね。

しかし漱石は世界に例を見ないほど多彩な作家なのです。たとえば初期の作品にはユーモアと笑いが満ちています。その最たる例が『坊っちゃん』。

漱石を敬遠している人にこそ読んでほしい傑作です。

 

内田百閒『百鬼園随筆』

夏目漱石の弟子の一人、内田百閒の随筆集です。随筆とは要するにエッセイのこと。

ユーモアでは師の漱石を上回っているといえるでしょう。まずは本書に収録されている「居睡」から読んでみてください。笑えます。後述する土屋賢二にすら匹敵するものがあります。「フロックコート」も必読。

その他の収録作も読みごたえあり。病的といえるほどの借金を繰り返し、それでもあまり悪びれずに生きている百閒の姿を見ていると、なぜか勇気をもらえます。

 

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

日本文学史上でも屈指の才能を持つといわれる谷崎潤一郎。実はこの人もユーモアの達人です。

代表作は暗いものが多いので、ふつうに読んでいたら気づかないかもしれません(ただし長編『細雪』には独特の朗らかさが漂い、他の作品と一線を画していますが)。

谷崎のユーモアが真に発揮されるのは、やはり随筆です。特に全集に収録されているエッセイが笑える。

ただ全集は入手しにくいので、ここでは手に入りやすい『陰翳礼讃』を挙げておきます。『陰翳礼讃』は色々なエッセイが収録された随筆集。ユーモアの観点からすると「旅のいろいろ」がとくにおすすめです。

 

土屋賢二『われ笑う、ゆえにわれあり』

最後は哲学者の土屋賢二。ユーモアの駆使という点でいえば、おそらく日本史上で最強の存在でしょう。

本職は哲学教授ですが、一般雑誌に掲載されたユーモアエッセイで日本中にその名が知られることになりました。哲学書の文体をパロディにした抱腹絶倒のユーモアが持ち味。

土屋賢二の愛読者には森博嗣や野矢茂樹といった高名な書き手もいて、周りに与えた影響力という点でも何気に相当なものがあると思います。

初期作品から読んでいくのがおすすめです。流石に年には勝てないのか、近年の作品は切れ味が鈍っているので後に回しましょう。

 

ユーモアのある作家(海外編)

さて今度は海外からユーモラスな作家とその作品を紹介したいと思います。

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

19世紀イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの代表作です。

ユーモアの本場といえばイギリス。ユーモアの名手といえばディケンズ。そして彼のユーモアが特に発揮された作品がこの『デイヴィッド・コパフィールド』です。

喜怒哀楽のすべてを兼ね備えた超大作ゆえ、ササッと読破できる本ではありませんが、おすすめせざるをえない。単純に小説としての面白さも異常です。

本書に登場するミコーバー氏は世界文学を代表するキャラクターの一人。この人が出てくるだけで笑えます。

石塚裕子訳の岩波文庫バージョンで読んでください。ユーモアを上手く訳出できるかどうかがディケンズの翻訳においては肝心なのですが、それを成し遂げているのが石塚訳です。

関連:世界文学最高傑作のひとつ『デイヴィッド・コパフィールド』

 

メグ・キャボット『オールアメリカンガール』

「プリンセス・ダイアリー」シリーズでも有名なメグ・キャボットの代表作。この人もユーモアの名手として有名です。

オタク女子高生がひょんなことから大統領の命を救い、ホワイトハウスに招待され、全米中の注目を浴び…というのが本書のストーリー。主人公の一人称で話は進むのですが、この内的な独白がすこぶる笑えます。

ただ、僕は洋書で読んだので日本語訳のクオリティについては保証しかねます。もしかするとユーモアを上手くすくい取れていなかったりするかも?

原書の英文は読みやすいので、英語多読用の洋書をおすすめするときに、僕はかならずこの本を入れます。

 

ビル・ブライソン『人類が知っていることすべての短い歴史』

イギリスの紀行作家による科学読み物。この人もユーモアが炸裂する文章を書いてベストセラーを生み出すのですが、本書は科学を題材にしてそれを成し遂げているところが特徴です。

宇宙の始まりから人類の登場までをざっくり物語る構成で、その過程で物理学や地学、化学、考古学、生物学などあらゆるジャンルの自然科学の基礎教養が学べます。これを面白おかしい文章で読めるありがたさ。科学者の変人奇人伝としても楽しめる。

日本語版が文庫化されている点も嬉しいですね。新潮文庫版は楡井浩一という人が訳者で、見事にユーモアを表現してくれています。これなら日本語版で読んでも問題なし。

関連:科学史入門にはこれ『人類が知っていることすべての短い歴史』【書評】

 

ティムール・ヴェルメシュ『帰ってきたヒトラー』

ドイツの作家ティムール・ヴェルメシュによる衝撃のベストセラー。映画のほうもかなり有名な作品ですが、実はこれユーモアセンスが抜群の笑える本です。

あのアドルフ・ヒトラーが現代ドイツに復活するという凄まじいストーリー。物騒な設定ですが、基本的なトーンとしては抱腹絶倒のコメディになっています。ドイツの歴史や政治に精通していればいるほど笑える。

ユーモアとドイツってあんまり結びつかないですよね。ドイツ人がこういう本を書いて、しかもそれを読んで面白がってるのがなんか意外だなと感じました。

 

以上、ユーモアのある作家とその代表作を紹介しました。別の名作に出会ったらまたアプデしていこうと思います。

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Posted by chaco