ユーモアのある作家といえば誰?【笑える本をおすすめします】

2021年1月29日

日本にはユーモアが乏しいと言われます。

それは作家の世界でも同じで、明治以降の日本文学はなにか深刻で暗いものばかりが幅を利かせてきました。

暗くなければ一流の文学にはなれないという偏見すら存在するほどです。

しかし何にでも例外はある。

ここでは僕が読んだことのある本のなかから、ユーモアセンス抜群でとっても笑える作品を紹介します。

土屋賢二『われ笑う、ゆえにわれあり』

まずは哲学者の土屋賢二。いまは定年退職しているようですが、ユーモアエッセイストとしてデビューした時には御茶ノ水大学の哲学科教授でした。

哲学書の文体をパロディにした抱腹絶倒のユーモアが持ち味。天才といっていいでしょう。

初期作品から読んでいくのがおすすめです。流石に年には勝てないのか、近年の作品は切れ味が鈍っているので後に回しましょう。

 

夏目漱石『坊っちゃん』

日本を代表する文豪・夏目漱石の初期作品です。

漱石は後期の『こころ』などのほうが有名かもしれない。そのせいで多くの人が漱石について偏ったイメージを持っています。

後期の漱石は自然主義に傾倒し、いかにも日本近代文学といった感じの暗さに取り憑かれていきましたから。

しかし漱石は世界に例を見ないほど多彩な作家であり、初期の作品には笑いが満ちています。漱石を敬遠している人にこそ読んでほしい傑作。

 

内田百閒『百鬼園随筆』

夏目漱石の弟子の一人、内田百閒の随筆集です。随筆とは要するにエッセイのこと。

ユーモアでは師の漱石を上回っているといえるでしょう。まずは本書に収録されている「居睡」から読んでみてください。笑えます。土屋賢二でも敵わないかもしれない。

また病的といえるほどの借金を繰り返し、それでもあまり悪びれずに活きている百閒の姿を見ていると、なぜか勇気をもらえます。

最後に収録されている幻想的短編「梟林記」もグッド。

 

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

日本文学史上でも屈指の才能、谷崎潤一郎。実はこの人もユーモアの達人です。

代表作は暗いものが多いので、ふつうに読んでいたら気づかないかもしれません。ただし長編『細雪』には独特の朗らかさが漂い、他の作品と一線を画していますね。

谷崎のユーモアが真に発揮されるのはやはり随筆。特に全集に収録されているエッセイが笑える。ただ全集は入手しにくいので、ここでは中公文庫の『陰翳礼讃』を挙げておきます。

『陰翳礼讃』は色々なエッセイが収録された随筆集。ユーモアの観点からすると「旅のいろいろ」がとくにおすすめです。

 

ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』

おまけとして海外の作家からも一作。19世紀イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの代表作です。

ユーモアの本場といえばイギリス。ユーモアの名手といえばディケンズ。そして彼のユーモアが特に発揮された作品がこの『デイヴィッド・コパフィールド』だと僕は思っています。

喜怒哀楽のすべてを兼ね備えた超大作ゆえ、気軽に読める本ではありませんが、おすすめしておきたい。

石塚裕子訳の岩波文庫バージョンで読んでください。ユーモアを上手く訳出できるかどうかがディケンズの翻訳においては肝心なのですが、それを成し遂げているのが石塚訳です。