【洋書】『サピエンス全史』を英語で読んでみた【書評】

2020年12月8日

『サピエンス全史』の原書

アマゾンでポチったSapiens A Brief History of Humankindが届きました。

日本でもベストセラーになった『サピエンス全史』の原書です。

日本版だと上下巻で3,000円以上するうえに、中古も値下がりしていない。図書館では予約が入りっぱなし。ということで1500円で買える原書を読むことにしたのでした。

著者のユヴァル・ノア・ハラリはイスラエルの歴史学者。調べてみたところ、イスラエルはヘブライ語が公用語のようです。ただ、英語も普通に使われている模様。

ということはこの英語バージョンがおそらく原書なんでしょうかね?

ホモサピエンス全史を区画する3つの革命とは

この『サピエンス全史』の原書ですが、文章は非常に読みやすいです。しかもかなり個性的なノリがあります。

とくに冒頭のページはすごく気の利いた構成になっていて、本書の内容をざっくりと要約してくれてもいますから、何回も読んでみることをおすすめします。

僕は続きを読み始める前にこの冒頭のページを数回音読することを習慣にしていました。本書を読み終わるころには、余裕で暗唱できるとこまでいきます。

最初のページをちょっと引用してみましょう。

About 13.5 billion years ago, matter, energy, time and space came into being in what is known as the Big Bang. The story of these fundamental features of our universe is called physics.

About 300,000 years after their appearance, matter and energy started to coalesce into complex structures, called atoms, which then combined into molecules. The story of atoms, molecules and their interaction is called chemistry.

about 3.8 billion years ago, on a planet called Earth, certain molecles combined to form particularly large and intricate structures called organisms. The story of organisms is called biology.

About 70,000 years ago, organisms belonging to the species Homo sapiens started to form even more elaborate structures called cultures. The subsequent development of these human cultures is called history.

こうして7万年前にホモサピエンスの文化的歴史が始まったわけですが、その歴史は3つの革命によって分けられるとハラリは主張します。

第一は7万年前の認知革命。第二は1万2千年前の農業革命。そして最後に500年前に始まり現在も進行する科学革命です。

この3つの革命的事象がホモサピエンスの歴史に対して与えたインパクトを物語るのが、『サピエンス全史』の内容です。

 

7万年前の認知革命で重要なのは、ホモサピエンスが「無」の概念に目覚めたことです。無というのは「そこにない」ということ。これがフィクションの語りを可能にします。最大のフィクションが神話であり、それが巨大な社会共同体の構築と維持を実現させます。これが他の動物に対するホモサピエンス最大の強みとなりました。

個人的にいちばん面白かったのは農業革命のパート。ハラリいわく、農業は史上最大の詐欺です。人間を豊かで幸福にすると思われたそのプロジェクトは、予期せぬ結果を招き寄せ、ホモサピエンスを不幸な動物へと変貌させます。

人間って狩猟採集生活に合わせて設計されてるんですよね。体も心も。農業と定住生活は人間にとってきわめて不自然な生活なのです。農業=人間の自然みたいなイメージがありますが、それは間違いです。

むしろ狩猟採集生活こそが人間の自然であり、逆に農業は近代以降の産業社会の母体といってもいいでしょう。農業革命以降のホモサピエンスは、身体的にも精神的にもきしんでいきます。

科学革命については、ハラリは悲観的な見通しです。様々なテクノロジーを使いこなせるようになったホモサピエンスですが、はたしてその幸福度は少しでも上昇したのかと問うんですね。

力を何に使うのか?資本主義に組み込まれた近代科学は、その目的設定ができないままただひたすら突き進みます。それは環境も人間自身もボロボロに破壊しているだけで、幸福度の上昇にはつながっていないのではないかとハラリは言います。

本書は全体としてペシミスティックな論調が強めで、資本やテクノロジーが描くバラ色の未来的なものに冷や水を浴びせかけるような面があります。

おそらくそれがウケたんでしょうね。大阪万博のころならいざしらず、現代では未来の社会やテクノロジーに幸福を託すような気分はほとんど存在しないと思います。少なくとも先進諸国では。それがハラリの本がヒットする土壌になったのではないでしょうか。

全体として文章も非常に読みやすいです。たぶん高校3年生なら普通に読めると思う。英語多読のおすすめの一冊に本書を加えることにしました。