移り変わる覇権国家『世界システム論講義』【書評】

2020年11月29日

川北稔の『世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界』(ちくま学芸文庫)を再読しました。

ウォーラーステインの世界システム理論を用いて近代以降の世界史を振り返る本。目からウロコの体験をもたらしてくれる良書であり、世界史が好きな人は必読といえるでしょう。

本書では世界システムという単一のシステムの歴史が解説されます。

世界システムは大航海時代のヨーロッパを中心として成立史ました。

それ以降、世界のあらゆる地域はこの単一の世界システムに組み込まれ、同一の歴史を歩むことになります。

世界システムは中核と周辺にわかれ、中核は周辺からの収奪で栄えます。黒人奴隷貿易や植民地支配はその典型ですね。このようにして収奪された富が産業革命をもたらしました。

覇権国の移り変わり

中核地域においてすら圧倒的な国力を持つ国家、これをヘゲモニー国家(覇権国)と呼びます。

世界史上、覇権国は3つしか存在しません。オランダ、イギリス、アメリカです。覇権国は工業→商業→金融の順に栄え、やがて衰退していきます。

 

まず17世紀にスペインとポルトガルを凌駕したオランダが圧倒的な経済力を手にし、史上初めてのヘゲモニー国家となります。

とはいえ、18世紀の末までは西洋の国よりも中国のほうが経済的にも軍事的にも上だったというのが定説になりつつあるので、オランダを覇権国に入れるのはちょっと違和感を覚えるんですけどね。

18世紀になるとオランダは衰え始め、イギリスとフランスが覇権を争います。オランダの金融(金融ではまだトップだった)を味方につけたイギリスが勝利。第二のヘゲモニー国家となります。ちなみに敗れたフランスはこれがきっかけとなってフランス革命へと向かいます。

19世紀後半になるとイギリスもまた衰え始め、今度はアメリカとドイツが覇権を争います。第二次世界大戦でドイツは没落。アメリカが第三のヘゲモニー国家となります。

 

中国はヘゲモニー国家になるか

そのアメリカもベトナム戦争をきっかけとして圧倒的な国力には陰りが見え始めます。日本やドイツの追い上げで工業は衰退し、現在では中国によってあらゆる産業が脅かされているのは周知の事実ですね。

ただし金融ではまだ圧倒的な力を残しており、これはオランダやイギリスがそうだったように当分は揺るがないと思われます。

 

次の覇権国家になると目されているのが中国です。実際、あらゆる統計が中国が世界最大の経済大国になることを予測していて、これはもはや既定路線といえるでしょう。

ただ注意すべきなのは、中国は別に世界支配みたいなのは望んでないということですね。アジアを中心とする一帯で強固な体制を維持しようとしているだけだと観測されています。それが建前にすぎないという可能性も、ゼロではないですが。

だから、世界はオランダが覇権とか言い出す前の状態に戻るんじゃないかと思います。昔は中国、インド、ローマとか世界に地域ごとの覇権勢力がいましたよね。そういう感じになるんじゃないかと僕は予想します。

 

とはいえ、アメリカが覇権国だった時代にもソ連が強大な力をもって恐るべき範囲を支配していたのであり、いうほど米国オンリーの世界でもなかったんですが…

こうなるとヘゲモニー国家の定義がよくわからなくなってきますが、それは本書の取り扱う範囲を超えるということなのでしょう。

 

『砂糖の世界史』もおすすめ

→オーディブルにオーディオブック版もあります

川北稔といえば岩波ジュニア新書の『砂糖の世界史』が有名です。学校のテストなんかでもよく採用された名著。

砂糖という観点から、近代世界システムの歴史を読み解いていきます。世界システム論の知識があると、この本の立体性がより深く見えてきます。

『世界システム論講義』の副読書としても使えるでしょう。

歴史の本

Posted by chaco