統合失調症は人間らしさの行き過ぎ『天才と分裂病の進化論』【書評】

2021年2月2日

太古の地上、一部の人類の脳内で生じた脂質の生化学的変化が、人間(ホモサピエンス)を誕生させた。

人間を人間たらしめたこの遺伝子的変異は、精神分裂病(以下、統合失調症)の生みの親でもあった。

いわば統合失調症者とは人間を人間たらしめる特徴の行き過ぎなのであり、また健常者はマイルドな統合失調症者なのだともいえる…

このような大胆な仮設を打ち出した本が、デイヴィッド・ホロビンの『天才と分裂病の進化論』です。

分子生物学や栄養学といった最新の知見を動員して、人類進化と統合失調症の関係を追っていく点が特徴といえるでしょう。

これこれの栄養素が統合失調症の治療に有効かもしれない、というような記述もちらほら登場します。

ただ若干古い本なので、治療的な知見を求めるならばもっと新しい本を参考にしたほうがいいかもしれませんね。

 

天才の家系には統合失調症と双極性障害が多い

誰もが感づいていることですが、天才やその親族には精神的な障害を抱えた人が多いです。

ホロビンによると、天才その人以上に、天才の親族に統合失調症ないし双極性障害(躁うつ病)が多く見られるという。

ここから、これらの病気が「除去されるべきバグ」であるという見方が排除されます。仮に優生学的なこころみによって統合失調症や双極性障害がなくなったら、おそらく人類は全体としては弱くなるでしょう。

 

ちなみに統合失調症ないしその一歩手前にあった天才には以下のような人たちがいます。

シューマン
ベートーベン
シューベルト
ワグナー
ボードレール
スウィフト
ヘルダーリン
エドガー・アラン・ポー
ジョイス
ゴーゴリ
ハイネ
カフカ
プルースト
ハクスリー
カント
ウィトゲンシュタイン
パスカル
アインシュタイン
ニュートン
ファラデイ
コペルニクス
リンネ
エジソン
メンデル
ダーウィン
etc

伝記から察するに、おそらく夏目漱石もこの列に加わると思います。

また精神病理学者の木村敏は、もっとも統合失調質を感じさせる人物にキルケゴールを挙げていあす。

 

また双極性障害だった天才には以下のような人たちがいます。

バイロン
ヘミングウェイ
コンラッド
コールリッジ
シラー
バルザック
ディケンズ
ラファエロ
ミケランジェロ
ゴッホ
ヘンデル
チャイコフスキー
ショパン
etc

おそらくドイツの社会学者マックス・ウェーバーもここに入るでしょうね。これも伝記を読むとすぐにわかります。

 

35歳を過ぎて統合失調症になるケースは少ない

よく知られているように、統合失調症は若い人を襲う病気です。ホロビンによると、35歳を過ぎてから統合失調症にかかる例はめったにないという。

統合失調症タイプの人格を持つ人でも、35歳を過ぎればひとまず安心といえるでしょうか。

ただし例外はあるらしい。高齢になってから統合失調症を発症する人は、家族やなんらかの社会的状況が一種のシェルターの役割を果たし、生活のストレスから逃れることができていた人たちが多いといいます。

本当ならもっと早く発症していたところが、ストレスから守ってくれる環境のおかげでそれを先延ばしにできていたということですね。

そう考えると、引きこもりなどが必ずしもマイナスとは限りませんね。強固なシェルターを与えることで、潜在的な患者を守っているというケースもあるに違いありません。

 

現代社会では統合失調症は軽症化する傾向にあるそうですが、これも同様の観点から説明できるのかも。

引きこもりがちで生活していける社会だから、重症化せずにすむのかもしれません。

昔みたいな親密な共同体で生きていかなくちゃならないとかだったら、多くの人が重症化するんじゃないでしょうか?

歴史の本

Posted by chaco