佐藤優『読書の技法』速読は熟読する本を選別するためにある【書評】
元外交官の佐藤優。彼は月に300冊の本を読むといいます。
いかにしてその異常な読書量を達成しているのか?その奥義をわかりやすく解説してくれるのがこの『読書の技法』。
もう何遍も読んだ本ですが、今回また読み直しました。定期的に再読するに値する名著です。
佐藤優は読書を3つのスタイルにわけます。
・熟読
・速読
・超速読
一見すると速読や多読を扱った本に見えますが、実は本書のメインテーマは熟読です。
熟読が肝
佐藤優は読書のスタイルを熟読と速読と超速読にわけますが、その上で熟読を基本にすえています。
なぜなら熟読で基礎知識を固めた分野でしか速読はできないからですね。
そして超速読をするのは速読する本を選ぶためであり、速読するのは熟読するに値する本を選ぶためである。
読書の始点にも終点にも熟読があることがわかるかと思います。
佐藤優は月に300冊とか500冊とか読む(目を通す)らしい。それでも熟読できる本は月に7冊から10冊だといいます。
熟読できる本の数には限りがあるんですね。だから熟読するにたる本を選ぶのが重要になってきます。
熟読で基礎知識を拡張する
熟読は基礎知識を拡張させるためのもの。具体的にはどういう本を読めばいいのか?
各分野の基本書を読むのが王道ですが、佐藤優がおすすめしている方法のひとつに、学校の教科書や学生向けの参考書を使うというものがあります。
日本の高校は無駄にレベルが高いため、高校の勉強をマスターすれば各分野の基礎知識が身につくというんですね。センター試験で8割を正解できる分野は基礎知識があるとみなしていいらしい。
本書ではここの解説に100ページも費やしています。メインパートといってもいいかも。教科書ブーム(とくに歴史系)が起きたのはこの本の影響か?
また基本書の熟読はノートをとって3回読むことを推奨しています。ノートの書き方についても詳細な解説あり。
これは真似できないですね。僕のような面倒くさがり屋からすると、ノートを取りながら読書というのはちょっと。本の余白に書き込みはしまくりますけどね。
ただこのブログがある程度ノートの機能を果たしているかも。ノートが面倒くさいという人も、ブログでのアウトプットなら続くかもしれませんね。
超速読と速読
一冊を5分で読むのが超速読、一冊を30分で読むのが速読です。
この超速読と速読については簡単にふれるだけで終わっています。定規を当てながら高速で文章を追え、うんぬん。
重要なのは、速読は基礎知識のある分野でしかできないということ。また、速読の目的は究極的には熟読するにたる本を選出することにある点です。
とにもかくにも熟読が大事という話。
後半には小説と漫画の読み方についての話もちょろっと出てきます。面白く読めますが、著者の作品分析については話半分で聞いておいたほうが良さげ。
最終章は読書の時間と場所についての話で、どうやって読書時間を捻出するかが紹介されます。この最終章も非常に有益。
著者はショートスリーパーなので、真似できない部分はありますね。短時間睡眠はずるいなと思いますが、柄谷行人みたいなすごい人がロングスリーパーだったりするので、一概に長時間睡眠が不利とも言えない気もします。
やる気の湧いてくる本
佐藤優の最大の長所は、モチベーターとしての才能にあると思うんです。人の意欲をかき立てるような、独特な煽りの才能がありますよね。
彼の本を読んでいると、学習意欲が掻き立てられます。だからベストセラーになるんだと思う。
本書『読書の技法』にもその力があります。というか、本書にこそその力が強いかも。スランプに陥ったときに読むと、大きな効果があります。これから何度も読み返すであろう名著。
オーディオブック版