哲学を勉強したい人におすすめの新書10選【入門者向け】

2021年1月29日ハイデガー

新書という形態は当たり外れの差が激しくて、実は買うのに勇気がいる本だったりします。

当たれば抜群のコストパフォーマンスを発揮してくれますが、その当たりを引くのがけっこうむずかしい。

それでも哲学系の新書は当たりの割合がかなり高いイメージ。新書にしてはという次元を超えて、後世にまで残るべき名著がいくつもあると思います。

わかりやすさと内容の奥深さ、そして読み物としての面白さを兼ね備えた新書が、少なくないんですよね。こういった新書は、独学で哲学を学ぼうとする人にとって、強力な味方になってくれます。

哲学を学びたいという方に向けて、僕が今まで読んだことのある新書からおすすめを紹介します。

西洋哲学史(岩波新書)

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哲学を学ぶなら、まずは哲学史をざっくり把握しておくことをオススメします。最初に全体を見渡しておくことで、その後の学習がスムーズに進むからです。学校の勉強なんかと同じですね。まずは流れを理解しろというやつです。

おすすめの本は熊野純彦の『西洋哲学史』。上下巻で、とても網羅性の高い本です。わかりにくい部分は飛ばして、これをざっくりと理解することをオススメします。

この本を読んでおけば、西洋哲学の全体像がイメージできるようになります。わりと堅い文章なので、あくまでもざっくりと理解するだけでいいです。「そういえばあんな哲学者があんなふうなこと言ってたな」とイメージできるだけで違ってきます。

ヨーロッパ思想入門(岩波ジュニア新書)

次に岩田靖夫の名著『ヨーロッパ思想入門』をオススメします。ジュニア向けに書かれたとはいえ、各方面からものすごく高い評価を受けている新書です。

この本の特徴はヨーロッパ思想の根源、すなわちギリシア哲学とヘブライ宗教(ユダヤ教とキリスト教)に焦点をあてていること。この二つだけをガッツリ論じ、残りはサッと流しています。

特に読んでほしいのは、ヘブライの宗教に関するパート。西洋哲学はユダヤ思想やキリスト教神学から多大な影響を受けて成立していますから、ヘブライの宗教を知っておくと理解がスムーズになるのです。

それにヘブライの宗教を解説してくれる本ってあまりないですからね。ギリシア哲学を解説してくれる本ならありますが、ヘブライ思想の入門書は少ない。その点で、本書には大きな価値があります。

プラトンの哲学(岩波新書)

次は藤沢令夫『プラトンの哲学』。プラトン研究の重鎮が書いた、哲学の王プラトンの入門書です。

「西洋哲学はプラトンへの長い注釈にすぎない」とは20世紀イギリスの哲学者ホワイトヘッドの言葉です。あらゆる思想がプラトンから流れ出しているので、この人を避けて通ることはできません。

プラトン本人の著作は対話篇といって、シェイクスピアの劇作みたいなノリで読めます。文学的にも美しく、読み物として面白い。本書でプラトンに興味をもったら、いきなり本人の著作に飛び込んでも大丈夫です。

 

スピノザの世界(講談社現代新書)

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次は西洋哲学の異端者スピノザです。この人の思想は変わっていて、どこか東洋思想ぽいところもある。この記事で名前を出した哲学者はみな同型のロジックで動いているといっても過言ではないのですが、スピノザだけは別の場所に生息しています。

スピノザの入門書といえば上野修『スピノザの世界』。これが非常に面白い本です。

スピノザの入門書や解説書はレアなのですが、そのレアな存在の一つが新書という手頃な形態で存在しており、しかも内容的にも面白い。これはとてもラッキーなことです。

カント入門(ちくま新書)

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近代を代表する哲学者といえばカントですね。カントの考え方の枠組みは色々な思想に転用可能なので、基本を押さえておくことをおすすめします。他の哲学者を理解するときにも、カントの枠組みは役に立ちます。

わかりやすい新書は石川文康の『カント入門』。純粋理性批判、実践理性批判、判断力批判、そして晩年の宗教思想にいたるまで、コンパクトにまとまっています。

ちなみに中島義道『カントの人間学』(講談社現代新書)も面白いです。これはカントの哲学を解説するというよりも、『人間学』の読解からカントの人間性に迫ろうとするもの。読み物として面白いのでオススメしておきます。

 

ニーチェ(岩波新書)

ニーチェに関しては三島憲一の『ニーチェ』を推薦しておきます。岩波新書が黄色だった頃の作品。

ニーチェの解説書というのは、よくも悪くもそれぞれの作者の思い入れを反映した個性的な本が多いのですが、本書は客観的な記述を特徴としています。ニーチェの思想を把握するには最適でしょう。

面白さだけでいえば、永井均の『これがニーチェだ』(講談社現代新書)とか、西尾幹二の『ニーチェとの対話』(講談社現代新書)もオススメです。

 

ハイデガーの思想(岩波新書)

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ハイデガーは木田元の『ハイデガーの思想』を挙げておきます。日本を代表するハイデガー研究者による啓蒙書。

ハイデガーを神秘化せず、客観的に見つめている点が特徴。非常にわかりやすいです。木田元の本にはハズレがないのでおすすめです。ただし内容の重複は多めですが。

ハイデガーの入門書については、以下の記事も参考にしてください。

 

『これが現象学だ』(講談社現代新書)

ハイデガーの師フッサールが発明した思考方式を現象学と呼びます。分析哲学と並び、20世紀の哲学を代表した思潮ですね。

現象学の解説なら谷徹の『これが現象学だ』一択でしょう。とんでもなくわかりやすい。ちなみにタイトルは永井均の『これがニーチェだ』へのオマージュです。

木田元の『現象学』(岩波新書)もおすすめ。やや難しい本ですが、本書の後に読めばその真髄を味わえると思います。

 

ウィトゲンシュタインはこう考えた(講談社現代新書)

ハイデガーと並び20世紀の哲学を代表する人物ウィトゲンシュタイン。この天才の思考をくわしく解説していく濃厚な新書が、この『ウィトゲンシュタインはこう考えた』です。

サブタイトルに「哲学的思考の全軌跡1912-1951」とあるように、ウィトゲンシュタインの思考を最初から最後まで辿ろうというおそろしい本。ちなみにページ数は416ページもあります。しかし内容はわかりやすい。

永井均の『ウィトゲンシュタイン入門』(ちくま新書)もオススメです。難易度的にはこっちを先に読んだほうがスムーズにいくかも。

 

西田幾多郎(岩波新書)

日本にも世界的に読まれている哲学者はいます。戦前京都学派の大ボス西田幾多郎です(ちなみに海外で一番有名な日本の知識人は、西田の友人でもある鈴木大拙)。

藤田正勝の『西田幾多郎 生きることと哲学』は、難解な西田の思想をコンパクトに解説した良書。文学的な趣も漂っていて美しい。西田の解説書にはこういう高尚な雰囲気の本が多いですね。

日本の哲学といえば戦前は西田幾多郎、戦後は廣松渉が代表的な存在。現代では柄谷行人も重要ですね。日本の思想に興味があるのなら、まずこの3人を押さえておくことをオススメします。