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なぜ日本に拝金主義がはびこるのか【思想の欠如】

2024年7月9日

現代日本に蔓延する拝金主義。これは思想の代替物といえます。思想を哲学や信仰といいかえてもいい。

思想の機能は、世界をシンプルに捉えることにあります。思想が欠如すると、人間は世界のカオスに翻弄されることになる。

このカオスから身を守るための護符として拝金主義が幅を利かせているといえるでしょう。

 

なぜ日本人には思想がないのか

日本から思想が失われるにいたった背景には、長い文脈があります。

そもそも強引な近代化によって西洋的な制度と価値を一挙に受け入れた時点でハンデが大きい。それまでの価値観を活かせなくなったわけですから(このあたり、中国をはじめとした他のアジア諸国の状況がどうなっているのか興味深い)。

さらに敗戦の影響もスルーできません。ただでさえ近代化によって伝統と切り離されていた日本人の価値観が、敗戦によってますます空中分解の様相を示した。

そしてもっとも直接的な影響を与えているのが、グローバリズムと情報革命が引き起こした世界の複雑化です。

価値観が入り乱れ、あらゆる思想が相対化される。もともとは上手く機能していた価値でさえ、複雑すぎる現実を捉えきれなくなってきます。

こうなってくると何を信じたらいいのかわからない。人間の精神は危機的な状況に陥ります。

 

思想は世界を見る枠組み

思想とは世界を見るための枠組みです。人間は思想というフィルターを通してしか世界を認識できない。あるいは思想というフィルターを通して認識されたものを世界と呼ぶのかもしれません。

強力な思想とは、世界をよく要約している思想です。そこで捉えられる世界は単純であり、それに基づいた生き方は自然とシンプルなものになる。

逆に思想の欠如は複雑な世界をもたらします。人はカオスに直面し、何を信じたらいいのか、どうやって生きたらいいのかわからない。

人間はこのカオスに耐えられません。信じるものを持てなければ、発狂するしかないでしょう。

いったいどうすればいいのか?ここで現代人が見つけた手ごろな答えがお金(マネー)に他なりません。

お金があればなんでも買えるような気がするし、将来への備えになる気がするし、その価値はずっとなくならないような気がしますからね。

マネーは(他と比べれば)かなり確固としたものに見える。こうして拝金主義が台頭します。

 

インフレとデフレと拝金主義

拝金主義が思想としてどの程度の役割を果たせるのかはわかりません。精神にある程度の安定をもたらせるのなら、拝金主義で行けるところまで突っ走っても問題はないのかもしれない。

ただインフレーションに弱いという弱点はありますね。インフレとは物価の上昇すなわちお金の価値の下落のこと。

インフレが進むほどに、お金の価値はなくなっていきます。物価が何十倍、何百倍、あるいはそれ以上にまで高騰するハイパーインフレは、拝金主義者にとって神の死にも等しい出来事でしょう。

そう考えてみると、拝金主義はデフレ的現象のひとつなのかもしれない。デフレとは物価の下落すなわちお金の価値の上昇ですからね。

デフレだから拝金主義になるのか、拝金主義者が跋扈するからデフレになるのか、それはよくわかりません。