禅の入門書といえば鈴木大拙【新書にして古典】

2021年1月30日仏教

日本の知識人のなかで、海外でもっとも大きな影響力をもつ人は誰でしょうか?哲学者や科学者、文学者までひっくるめて、誰が最大の精神的影響を与えたか?

正解は、鈴木大拙です。

鈴木大拙は戦前日本を代表する仏教者。彼は一介の宗教者であるばかりでなく、禅の思想をわかりやすく言葉にし、西洋に紹介した知識人でもありました。

西洋人はよくZen(禅のこと)に言及しますが、禅がこれほど普及したのは鈴木大拙の紹介があったからです。禅が大拙に負っているものは、非常に大きい。

そしてその仕事を通じて、鈴木大拙は海外でもっとも名の知れた日本の知識人となったのです。

そもそも禅は中国で本格的に発達したものであり、中国仏教の一派といってもいいものです。それがむしろZENという日本語由来の名前で呼ばれているわけですから、大拙の異常な影響力が見てとれますね。

鈴木大拙は英語の達人

注目すべきことに、鈴木大拙の著作のうち半分は英語で書かれたものです。

鈴木大拙は英語の達人としても有名なんです。たとえば斎藤兆史の名著『英語達人列伝』(中公新書)にも、大拙の章が設けられているほどです。

イメージとはまったく反しますが、彼は生涯のうち20年以上をアメリカの地で暮らしています。ちなみに奥さんはアメリカ人女性です。ものすごく意外ですよね。

大拙と英語。禅マスターとアメリカ。どうにも頭の中で結びつきがたいのですが、ここにはなにか深い意味があるような予感もします。

おそらく大拙は、生涯を通じて「他者」と向き合っていたのだと思います。自分の世界に安住するのではなく、異質な者との対話を志向する。そういうポリシーを持っていたのではないでしょうか。非常に興味深いところ。

 

大拙のロジックは明解です。深淵な世界をドロドロと描くタイプではなく、分析的で明晰な思考が特徴。これもけっこう意外ですね。

英語で考え書いたから明解なのか、考えが明解だから英語で説明できたのか。それはわかりません。ただ、西洋に禅を紹介するという仕事に、鈴木大拙ほど適した人物はいなかったでしょう。

 

禅の入門書にはこの本がオススメ

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その鈴木大拙が書いた禅の入門書のうち、おそらくもっともわかりやすいのがこの『禅と日本文化』(岩波新書)です。

大拙が禅を解説した書物はたくさんあるのですが、たぶんこれが一番わかりやすい。なぜわかりやすいかというと、講演を元にした文章だからです。しかも、アメリカで行った講演をベースにしている。

アメリカの聴衆(もちろん禅の初心者)を相手に英語でわかりやすくしゃべった内容を、日本語に翻訳した。それがこの本です。だから易しく、とっつきやすい。

また新書形式の入門書にもかかわらず、禅の分野における古典的な名著でもあります。入門しつつ古典に触れられるというのは、なんだかお得でしょう。

禅に入門の一冊に最適な一冊が、鈴木大拙の『禅と日本文化』です。

 

対訳バージョンもある

鈴木大拙の『禅と日本文化』には、原文を掲載したバージョンもあります。

なかでもオススメなのがこの『対訳 禅と日本文化 Zen and Japanese Culture』ですね。対訳形式になっていて、原文と日本語訳を対照させながら読める。

英語の勉強にも関心がある方には、このバージョンを推奨します。