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内向的人間に必要なのは演技力 スーザン・ケイン『Quiet』

2024年7月13日洋書

アメリカ発の外交的人間文化が世界に浸透し、内向的人間の過小評価がはなはだしい現代社会。

その風潮に抗い「内向的人間には独自の強みがある」と主張したベストセラーが、スーザン・ケインのQuiet The Power of Introverts in a World That Can’t Stop Talking(邦題は『内向型人間のすごい力』)です。

心理学や脳医学の科学的アプローチを参照しつつ、内向型人間の特質を確認。そこから内向型人間が現代社会でどう生きればいいのかを考えていく本です。

著者のスーザン・ケインその人も内向型の人間なので、記述にはかなりの説得力があるように思います。

文章はかなり読みやすいです。ただし実験心理学などの科学的な内容が多いため、わりと負荷は高いかも。

あと現代アメリカの本に特有の異様な冗長さがやはりあります(マシな方ではありますが)。やたらと具体例が多いあの感じ。

全体は大きく4つのパートに分けられます。

・社交的人間はいかにして人々の理想のモデルになったか
・性格は生まれつきのものか?
・どの社会でも外交的人間のほうが評価されているのか?
・内向的人間が上手く生きていくための処世術

 

序盤では内向型人間に当てはまるかどうかのチェックリストも掲載されています。いくつか抜粋してみましょう。

・大人数よりも一対一の会話が好き
・世間話が嫌い(むしろ単刀直入に本質的な議論に突入したい)
・富や名声にあまり興味がない
・リスクを回避したい
・できかけの仕事を他人に見られたくない
・ゼミより講義が好き
・観察されていると本領を発揮できない

これらに当てはまるほど内向型とされます。怖ろしいことに僕はすべて当てはまります。

アメリカでさえ内向的なタイプは全人口の3分の1から2分の1ほど存在しているようです。そう見えないのは、内向型人間の多くが上手に演技している証拠とのこと。

Right Caption

外向的な国民性で知られるアメリカでさえこれなんだから、日本ならもっと多いんでしょうね。

ちなみにこれはスーザン・ケインがTEDで行ったトーク↓。日本語の字幕もついてます。

 

内向的な人間はどのように現代社会を渡ればいいのか?

著者は仮面を身につけるテクニックが重要だと述べます。仕事や人間関係でどうしても外向性を要求されることはあるので、そういうときに上手く仮面をつけて乗り切るテクニックを身につけることが必要だと。

ポイントは自分の個性を否定することと仮面の装備を区別すること。

仮面をつけるのはその場に対応するためであって、本来の個性を否定しているわけではありません。その場から離れて仮面を外せば、本来の自分がそこにいます。

それに対して、自分の個性までも否定して別の人間になろうとする絶望的な努力を始めてしまうと、すぐに消耗し、精神は病んでいく可能性が高いです。

 

加えて重要なのが以下の2点でしょうか。

・価値のある仕事のために仮面をつける
・ちょくちょく本来の自分に戻ってリフレッシュする

仮面をつけて外交的な演技をするには、その仕事に価値を感じていないとダメとのこと。どうでもいい目的のために仮面をつけていると、消耗が激しくすぐに力尽きてしまうんですね。

Left Caption
これ言ってることは正しいと思うけれども、ハードルは高いですよね。価値を感じられる仕事やプロジェクトなんてそう簡単には見つからないですから…

また、例え価値ある目的のために仮面をつけているとしても、それをぶっ通しで維持するのは避けるべきだとされます。なるべく隙間時間を差し挟むようにして、エネルギーの回復を上手に取り入れるのが重要。

授業や講演の合間にトイレに籠もる教授の例が紹介されるのですが、そこが本書のハイライトの一つかもしれません。

 

最後の章は教育者側に向けた内容になっています。

内向的タイプの子供をどのように育てればいいのか。いくつか抜粋してみます。

・内向的な性格を変えようとしても無意味
・深い関心をもっている分野を伸ばすようにアプローチ
・集団学習は有益だが2人か3人がベスト(4人以上だと消耗して逆効果)
・真ん中の席はノイズが多すぎるから座らせない(ノイズの少ない窓際や隅の席がベスト)

4人以上になると消耗するっていうの、むちゃくちゃよくわかります。

 

本書は日本語版も出ています。文庫版のタイトルは『内向型人間のすごい力』。

単行本版のタイトルは『内向型人間の時代』でした。中身は同じですので注意してください。