洋書多読の正しい方法とは? 古川昭夫『英語多読法』
語学の達人は口を揃えて多読の大切さを説きますが、なんでもかんでもやみくもに読めばいいわけでもないらしい。
洋書の多読はどのように行えば効果があるのか?
それを実証的なアプローチでわかりやすく解説した本が古川昭夫の『英語多読法』(小学館101新書)です。
多読の指南書といえば酒井邦秀の『どうして英語が使えない?』(ちくま学芸文庫)が有名ですが、本書の著者も酒井の教えで開眼したそうです。
もとは数学の教師だった著者ですが、海外の学会で英語をバカにされたのが悔しくて、藁をもつかむ思いで手にしたのが酒井の洋書多読だったらしい。
著者はそれを自分と塾の生徒たちで実践し、驚くべき成果を挙げました。そこから得たアプローチを解説するのがこの本です。
簡単な英語を読みまくれ
洋書多読の肝は、易しい文章を読みまくることです。
文章の95%が理解できるものを読めとのこと。辞書を引くのは多くても10ページに1回。それ以上辞書に頼らなければ内容を理解できない本は、多読のテキストにはならないのです。
次の公式が衝撃的です。
英語力の伸び=(読書量)×(理解度の4乗)
理解度マックスなら理解度は1ということに注意してください。たとえば理解度が半分なら理解度は0.5です。
重要なのは、この理解度が4乗されていること。1を大きく下回ると、英語力の伸びは大幅に低下しまうのです。
難しい洋書を読めているつもりでも、推測で中身を理解していると、思ったほどには英語力は伸びていない。
本書を読んで思ったのですが、僕は難しい洋書を読みすぎていたかも。これからはなるべく易しめの洋書を読むようにしようと思った次第です。
多読は本当に万能か?
英語多読に関しては疑問点もあります。
とくに大きな疑問は次の2つ。
・単語は別途暗記したほうが効率的では?
・読書というだけでハードルが高いのでは?
自分の経験からしても単語は独立の暗記作業で一気に覚えたほうがいいと思う。それを後から多読で定着させるというのが正解ではないか。
多読で新規の単語を覚えるというのがどうにも納得できないんですよね。まあ著者も多読的なアプローチに絶対的にこだわってはいないのですが…
もう一つは読書という行為そのものについて。
たぶん少なからぬ人にとって、読書というだけで高すぎる壁になると思う。本を読むという行為が、実はかなり高度なものであると明らかになってきているんですよね。
洋書以前に、そもそも本を読むという時点でつまづく人が多発するんじゃないかと。
本書でもその点は触れられていて、生徒に多読を続けさせるには先生の役割が非常に大きくなるとのこと。
生得的に読書が苦手という人には、別の外国語学習法があったほうがいいんじゃないかという予感がします。