『英語を学べばバカになる』英語学習ブームへの批判書【書評】

2021年1月29日

日本における英語学習熱は加熱の一途をたどっていますが、それに冷水を浴びせかけんとする強烈な本がこちら。

薬師院仁志の『英語を学べばバカになる』(光文社新書)です。

タイトルからして強烈ですが、これはたぶん編集者が勝手につけたものでしょうね。

なぜ「英語を学ぶとバカになる」のか、直接的な回答は書かれていません。

むしろ本書のポイントは次の二つにあります。

・グローバル世界をアメリカと同一視することへの批判

・一般人がこぞって英語学習に時間とエネルギーを費やすことへの批判

世界=アメリカという錯覚

著者がいうには、アメリカは世界の一部にすぎません。英語も多様な言語のうちのひとつにすぎない。

世界はアメリカ以外にもたくさんの国があり、英語以外のたくさんの言語が使われている。

グローバル化というのなら、そうした多様な文化へと開かれる必要がある。

英語一辺倒の態度というのは、グローバル化しているつもりで、実は英語世界への閉じこもりにすぎない。

著者はこのように主張しています。

 

これはまっとうな指摘だと思う。『翻訳というおしごと』のなかで、翻訳者からも同じような意見が出ていましたよね。

翻訳される情報が英語圏のものばかりになると、日本人の世界観が平坦化するおそれがあると。

実際、その傾向は近年すでに表れてきているように思います。

逆に90年代以前ですと知識人の層が厚く、ヨーロッパやソ連由来の価値観で、アメリカのそれが相対化されていたのだと思います。

 

英語学習は非効率

本書のもうひとつのポイントは、一般層がこぞって英語学習に熱をあげることへの批判です。

実践レベルの英語をマスターするには、とてつもない努力が必要となります。

そのコストに見合ったリターンがあるのか?著者はそう問いかけます。

真に必要なのは専門知識の体得なのであり、時間とエネルギーを費やすのならこっちなのではないか。

なんの知識もない人が英語をマスターしたところで、英語で伝えるべきなにごとをももっていない。

それに、小国と異なり巨大な人口とマーケットを擁する日本では、国内だけでほとんどの情報をまかなえる。だから日本語だけで十分。

ごくまれに英語が必要になったときには、英語の専門家にアウトソースすればよい。

このように著者はいいます。これもまっとうな指摘だと思うんですよね。

 

たしかに今の時代、英語を学ぶことには大きな価値があります。

しかしその価値は絶対的なものではなく、あくまでも相対的に測る必要があるんですね。

英語学習にどこまでエネルギーと時間を費やすのか。それを考える必要があります。

英語に気をとられすぎて、専門技能の習得がおろそかになったら、元も子もないですからね。

 

ただし語学のプロのレベルまでいけば、英語=専門技能になりますが。それは例外的な事象といえます。

 

他の英語本にはない視点

この『英語を学べばバカになる』を買ったのはもう15年ぐらい前だと思います。

たしか宮崎哲弥が新書紹介本のなかで称賛していて、そこで興味をもって買ったのでした。

なぜか読む気がおきないままずっと積ん読状態でしたが、英語学習本にハマっているいまがチャンスだと思い、ようやく読了。

他の英語本ではなかなか触れられない視点があり、読む価値がありましたね。

英語学習

Posted by chaco