なぜ1990年代は楽しかったのか【革命的変化と不思議な浮遊感】
1990年代ってなんか凄かったですよね。
いいことばかりだったという意味ではなくて、独特の高揚感が社会全体に行き渡っていた気がします。
あれはなんだったのか?
その原因は、1990年代が異常な時代だったことにあると思います。ここでいう異常とは、時代を画するような大変化が次々に起こったという意味です。
あらゆる分野で革命的な変化に見舞われた90年代
アメリカの社会学者のパーソンズに習って、政治・経済・社会・文化の4つの観点から当時を振り返ってみましょう。
すると、90年代はそれぞれの分野でとてつもない事態が発生していたことがわかります。
・政治では東西冷戦の終わり
・経済ではバブル崩壊と金融危機
・社会では地域共同体の崩壊
・文化ではインターネットの登場
まず政治では、ソ連の崩壊が大きいですよね。これによってアメリカとソ連の冷戦が終結します。世界はグローバリゼーション一辺倒となり、それまでの地政学的常識が通用しなくなりました。また社会主義の崩壊で、日本のアカデミズムは地盤を失います。
経済の領域ではご存じの通りバブル崩壊があります。これで金融システムは麻痺状態に陥り、その後の失われた30年への端緒が開かれます。ただし日本人が世界一豊かだったのは1995年で、経済が目に見えておかしくなっていくのは1997年からですが。
次に社会の領域に目を向けると、地域共同体の空洞化があります。個人がバラバラになって社会を漂流する。その流れが本格化したのが90年代です。また教育でも大変革が起こりました。それまでの詰め込み一辺倒の受験教育が見直され始めたのです。
文化の領域ではインターネットの登場。ウィンドウズ95の発売時には異様な盛り上がりがありましたよね。実際、ネットは世界を大きく変えていくことになります。このIT革命のスタートも90年代にありました。
時代の変化にさらされて人々の精神はよくも悪くも不安定に
これだけの変化が1990年代に集中しています。
上記以外にも、阪神大震災やオウム事件といった事象が90年代に集中しました。
このような大変化にさらされると、人の精神は不安定になります。それが必ずしもネガティブな方向を取るとは限らないですよね。むしろ新しい事象への期待に満ちた高揚感をもたらすことがあります。
それに人は、異常な事態を目の当たりにするとどこかワクワクしてしまう生き物です。大型台風が直撃しそうだというとき、独特の高揚感がありますよね。あれと同じです。
これこそが1990年代にあった独特の楽しさの原因だと思われます。
80年代のバブルの余韻も残っていた
80年代の勢いがまだ持続していたことも大きいでしょうね。
90年代は音楽、スポーツ、ゲーム、漫画など、色々な分野にやたら勢いがあって、大物やスターがごろごろ存在してましたよね。
そういう人たちはみな80年代までの日本で育っています。彼ら彼女らが、バブル的な勢いを90年代に持ち込んでいたわけですね。
さまざまな時代の終焉、あたらしい始まりの予感、バブルの余韻、95年にピークをつける経済的繁栄。これら多方向のエネルギーからなるカオスが1990年代の日本社会だったのだと思います。