マックス・ウェーバーのプロ倫はマルクス批判の本【上部構造vs下部構造】
社会学者ウェーバーの代表作『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』、通称プロ倫。
広く社会科学を代表する作品のひとつです。
この本がマルクスへの批判を目的として書かれたものだと知っていますか?
それがわかっていないと、この本がやろうとしていることの意味がわからなくなります。
プロ倫のメインテーマ
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』は、近代資本主義がなぜ西欧で生まれたのかを説明する本です。
ウェーバーは、キリスト教のプロテスタントが資本主義をスタートさせたと考えます。プロテスタントの禁欲的な倫理が資本主義の精神をつくりあげた、と。
宗教の合理化がまずあって、それが経済システムにも波及したという見方をするわけですね。
資本主義という経済システムのはじまりが、宗教に求められていることが重要です。
では、なぜこれがマルクス批判になるのでしょうか?
マルクスの経済決定論
マルクスの思想の特徴は、経済から他のすべての領域を説明しようとする点です。
経済システムが下部構造に置かれ、そこから他の上部構造(政治、社会、宗教、芸術など)が説明されます。
下部構造が変化すると、それにつれて上部構造も変化する。つまり経済システムという下部構造がその他の上部構造を決定しているわけですね。
この考え方をヘーゲルの歴史哲学とドッキングしたものが、有名な史的唯物論です。経済システムの変動が他の領域を、ひいては歴史を動かしていく。そして最終的には共産主義社会の実現にいたる、と。
実はマルクス本人はもっと複雑な思想家なのですが、彼の影響を受けた人々はその考えを前面に押し出しました。一応マルクス本人も『経済学批判』の序文でそれらしきことを言っていますが。
ウェーバーのマルクス批判
ウェーバーはこの考え方を批判するのです。
「たしかに経済は重要だけど、他の領域も経済から独立して動いたり、逆に経済に影響を与えたりするんじゃないの?」と。
そこで打ち出された研究がプロ倫です。上述したように、この本は宗教が経済に与えた影響を考えるものでしたよね。
宗教(キリスト教のプロテスタント)こそが経済(近代資本主義)を生み出したのだという主張は、そのままマルクスの経済決定論への批判になっているわけです。
マルクスもウェーバーも複雑な思想家
ウェーバーのプロ倫はマルクス批判を念頭に置いたため、あえて単純化されています。
「宗教が経済を決定するんだ!それが絶対なんだ!」とはウェーバーも考えていません。あくまでもマルクスを批判するために、宗教が経済に与えた影響を強調したわけです。これは後に本人もそう語っています。
マルクス本人が単純な経済決定論を支持していなかったように、ウェーバーも奥行きのある複雑な思想家です。
このレベルの思想家を単純なステレオタイプで判断するのは誤りの元なので、そっちにも気をつけなくてはいけませんね。
なおウェーバーら社会学のおすすめ本はこの記事↑にまとめてあるので、参考にしてみてください。