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法学の独学におすすめの本9冊【入門書から古典的名著まで】

法律の文章ほどとっつきにくいものはないですよね。

何かこう、学習をスムーズにしてくれるようないい本はないものか?

以下、僕が今まで読んだなかから、とくにおすすめの法学本を紹介します。

木村草太『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)

自称「日本一敷居の低い法学入門」。実際、軽い小説形式の読み物となっていてスラスラ通読できます。新書サイズで読みやすいのも嬉しい。

大まかな内容は以下の通り。

・法学に特有の考え方
・他の社会科学との違い
・現代日本の法体系をざっくり解説
・法解釈のやり方
・法学はクリエイティブな学問である
・古代ローマ以降の法学史をざっくり解説

法学はわかりやすい本がほんとうに少ないです。法のトレーニングを積みすぎて、その言葉でしか語れなくなってしまうからでしょうか。だから本書の存在は貴重。まさに1冊目におすすめの入門書といえます。

法解釈論には絶対的正解なんかないわけで、大学の法学部というのは、誰も考えたことのない問題に取り組み、未知の世界に挑戦する場所なんですね」
キヨミズ准教授は、珍しく力を込めて発言した。
「ですから、やはり法学徒のみなさんには、『答えを素直に吸収する』という姿勢だけじゃなくて、『俺が素晴らしい解釈論を創造してやるから、ついてこい』という気持ちを持って欲しいですね。自分の創造力に自信がないのに法律家になろうとするのは、法律家を必要としている社会の人々に対して失礼というものですね」

(木村草太『キヨミズ准教授の法学入門』)

 

吉田利宏『元法制局キャリアが教える 法律を読む技術・学ぶ技術』

法律文書は独特の文体が使われていて、慣れるまではチンプンカンプンになるのが普通です。

適切なトレーニングを受けないと意味を読み取れるようにならないんですね。それをサポートしてくれる本がこれ。法律系の資格を勉強する人ならだれもが知っているレベルの有名な本です。

とはいえ法学系の本にしては読みやすいというだけで、言うほどスラスラ読めるものではないので過大な期待は禁物ですが。

民法に特化した『民法を読む技術・学ぶ技術』も後から発売されています。

 

小室直樹『日本人のための憲法原論』

憲法ならこれがおすすめ。もともとは『痛快!憲法学』のタイトルで出ていたもの。

小室直樹は天才的な社会科学者として有名な人。異常にクセが強いですが、文章は読みやすく、難しいことをわかりやすく伝える能力がすごいです。

憲法がどういう歴史から生まれ、なにを意図してどのように機能するか、初学者向けに丁寧に教えてくれる名著。

フランクな対話形式で読みやすい。なぜか北斗の拳が多数引用される。

 

長尾龍一『法哲学入門』

法哲学の入門書としてもっとも有名な本。

著者は法哲学の専門家らしからぬユーモラスな文章が持ち味で、本書でもそれが炸裂しています。

常識が形成しまた常識を形成していく法(ローマ的精神)と、常識の外に立ち常識を打ち破る哲学(ギリシア的精神)が、いかに法哲学において融合していくか。

「象について」という論文を課されたところ、フランス人とイギリス人は早速動物園で象を観察し、各々「象の恋愛」「象飼育の収益性」という論文を書いた。ドイツ人は動物園ではなく図書館に行って万巻の書を読み、「象の本質」という論文を書いた。日本人も図書館に行って万巻の書を読み、「ドイツにおける象本質論の系譜」という論文を書いたという(日本人の部分は碧海純一教授の創案による)。

長尾龍一『法哲学入門』

 

碧海純一『法と社会 新しい法学入門』

中公新書を代表する名作のひとつ。

碧海純一は法学界の重鎮みたいな人で、長尾龍一の先生でもあります。

社会統合の観点から法律を考えていくのが本書の特色。とくに前半は法社会学的なトーンが強いです。非常に原理的な考察。

後半は法学の歴史に焦点をあてて簡潔にまとめています。法学の知識を得たいだけなら、後半から読んだほうがいいかも。

 

川島武宜『日本人の法意識』

岩波新書を代表する名著のひとつ。

日本は近代化にあたって、法体系を外部(ドイツ)から取り入れ、それを強引に社会に適用しました。

しかし法律を変えたからといって、そこに暮らす人々の法意識が自動的に変わることはないですよね。

ということは、日本のようにして近代化をはかった社会には、法体系と、その下にある法意識とのあいだで、大きなズレが存在することになります。

このズレはどのような問題をもたらすのか。

日本という特殊一ケースを取り上げることでこの問題を探求する、ハイレベルな新書です。

 

阿川尚之『憲法で読むアメリカ史』

アメリカの歴史を合衆国憲法の観点から読み解いていく有名な本。もともとはPHP新書にて上下巻で発売されたもの。現在はちくま学芸文庫に収録されています。

アメリカは巨大な事件と遭遇するたびに、それに対応するため憲法を修正してきました。

・連邦政府と州政府の争い
・奴隷制度をめぐる争い
・南北戦争の勃発とその決着
・世界大戦と大統領の権限強化
・世界恐慌とニューディール政策
・冷戦下における言論の自由
・黒人差別の撤廃

こうした時代の流れを、アメリカ最高裁はどのように受け止め、いかなる判例を残してきたのか?

アメリカ史と法学を同時に学べる一石二鳥の本です。

 

イェーリング『権利のための闘争』

法学の古典でもっとも有名な本はたぶんこれ。岩波文庫で100ページくらい。すぐ通読できる。

法学は基本的に法を静的なシステムとして捉える傾向があります。社会から超然とした場所に確固たる法律が君臨しているみたいな感じ。

しかしイェーリングはそれに反対し、法=権利はむしろ先人たちによって闘い取られたものだと言うんですね。静的なシステムではなく動的なシステムとして法を捉えているわけです。

ということは、それは放っておいたら崩れ去ってしまうということ。現在の法=権利を維持することも、実は不断の闘争なのだとイェーリングは熱く語ります。

ある国において法と正義が栄えるためには、裁判官がつねに裁判官席で待ち受けていること、警察が刑事を張り込ませていることだけでは足りない。誰もが、それぞれの役割を果たさなければならないのである。恣意・無法という九首の蛇が頭をもたげたときは、誰もがそれを踏み砕く使命と義務を有する。権利という恵みを受けている者は誰でも、法律の力と威信を維持するためにそれぞれに貢献せねばならぬ。要するに、誰もが社会の利益のために権利を主張すべき生まれながらの戦士なのだ。

(イェーリング『権利のための闘争』村上淳一訳)

 

日向清人『ビギナーのための法律英語』

法律英語の入門にはこれ。契約書などの法律英語を読むコツが身につきます。

単純な文章を好む英語圏においてすら、法律文書は摩訶不思議な文体で書かれるのが常です。

最初は「こんなの読み解けるわけない」と感じるんですが、慣れてくると法律英語に独特のパターンがすぐに見いだせるようになり、途中からはある種の面白みすら感じるようにすらなってきます。

ちなみに日経文庫から出ている『英文契約書の読み方』も、日経文庫らしからぬ分かりやすさの良書です。

 

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