『日本人なら必ず誤訳する英文』英語に自信のある人を打ち砕く良書
精読のおすすめテキストといえば、伊藤和夫の『英文解釈教室』(研究者)があります。
そしてそれに次ぐ存在として推したいのが、この『日本人なら必ず誤訳する英文』。
高名な翻訳者である越前敏弥(ダ・ヴィンチ・コードとかを訳した人)が2009年に発売し、ベストセラーにもなった本です。
この人は『英文解釈教室』を書いた伊藤の教え子らしいです。学生の頃は伊藤のテキストで勉強していたと、本書のコラムに書いてあります。
僕が初めて本書を読んだのは2009年の12月。もう10年も前ということに震えます。今回、洋書枠で読み返してみました。たまには精読の訓練もしようと思って。
調べてみると、前回間違えた問題の数は140問中46問。しかし今回は20問しか間違えなかった。いちおう成長していたらしく、安心しました。
それでも最後のほうの問題はきわめて難易度が高く、読むのがきついですね。翻訳学校での正答率が10パーセントといった問題も出てくるのですが、むしろどこの誰がこんな難問に正解できたのかと思うほどです。
中級者~上級者向けのテキスト
本書は全部で140の英文から構成されています。短文ばかりなのでストレスは少ないですが、どれも癖のある文章ばかりで、脳みそへの負担は相当なものになります。
すでにある程度の実力をもった学習者を、さらなる高みへと導く本ですね。
文法の基礎があやふやな人が本書を読んでも、あまり効果を引き出すことはできないと思います。むしろ英語が嫌いになるリスクがあるかも。
はっきり言って本書を最後まで通読できるだけでも相当な実力だと思うので、間違えまくったという人も気を落とす必要はないと思います。
こんな英文が登場
本書の難しさを伝えるために、二つほど英文を引用してみようと思います。
まずは本書の核の一つである「否定」表現を扱った文章。
We can hardly imagine thought without language – not thought that is precise, anyway.
前半はまあいいですよね。「言葉なしの思考は、想像するのも難しい」といった感じです。問題は後半、とくに否定のnotです。
このnotはなんなのか?
後続するthought以下を否定しているのではありません。そのように読んだ人は間違いです。
この問題がわからない人は、ぜひ『日本人なら必ず誤訳する英文』を読むことをオススメします。本書ではこの否定表現がなんども登場し、メインテーマの一つといっていいほどの扱いを受けています。
この否定表現の読解をマスターできるだけでも、本書を読む価値があります。この読解技術があるだけで、洋書などを読むのがぐんと楽になりますからね。
ではもう一つ引用してみます。
今度は数学の問題文です。読むだけでなく、問題の答えを出してみてください。
What is the greatest whole number such that sum of 5 and the product of 5 and that whole number is less than 20?
わかりますか?ちなみに僕はわかりませんでした。
ちなみにsumは足し算、productは掛け算のことです。肝は、andが何と何を結びつけているのかを読み解くことですね。
正解は「2」です。おそらくほぼすべての日本人が間違えると思います。なぜ答えが2になるのか知りたい人は、本書を読んでみてください。
今から買うなら決定版がオススメ
この本には続編もあります。『日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編』ですね。
しかし今では両者を合わせたお得なバージョンが発売されているので、今から買う人にはこちらをおすすめします。
英語には自信がある、という方こそ一読してみるべきでしょう。自分に欠けていたものに気づかされ、それが飛躍につながります。