ジョジョの小説はどれが面白いのか【まずはこの4冊】
週刊少年ジャンプが誇る人気漫画の一つ「ジョジョの奇妙な冒険」。
1987年に荒木飛呂彦によって開始された作品です。
現在でもシリーズは進行中(2005年からは媒体を少年ジャンプからウルトラジャンプに移行)。
21世紀に入り、アニメ化やゲーム化によって新規ファンも獲得。
最近ではアメリカでも人気が急騰し、Youtubeのコメント欄では英語のコメントが多数ついています。
そして実はこのシリーズ、小説化もされています。しかも何冊も出ていて、基本どれも出来が良いんですね。
ジョジョが小説化されていることを僕が知ったのはつい最近で、興味本位で揃えてみたのですが、普通にハマってしまいました。
以下、とくにオススメの4冊を紹介します。
上遠野浩平『恥知らずのパープルヘイズ』
一番出来がいいと思ったのがこれ。第5部の外伝作品です。
これは、一歩を踏み出すことができない者たちの物語である。
将来になんの展望もなく、想い出に安らぎもない。過去にも未来にも行けず、現在に宙ぶらりんにされている者たちが足掻いている――そのことについての奇譚である。
(上遠野浩平『恥知らずのパープルヘイズ』)
ディアボロを倒し組織の乗っ取りに成功したジョルノ・ジョバァーナ。本作はその直後の顛末を描いた物語です。
主人公はあのパンナコッタ・フーゴです。ディアボロとの対峙後、ブチャラティらと袂を分かつことになったフーゴ。
彼はあのあとどうなったのか?本作でそれが描かれます。
フーゴのもとに組織の新しいボス(ジョルノ)からの指令が届きます。「麻薬チームを殲滅せよ」と。
ジョルノへの忠誠心を試されているわけです。彼はジョルノが派遣したシーラEやムーロロと共に、麻薬チームの殲滅へと向かいます。
本作はジョジョ好きなら必読ですね。世界観の再現性が高く、文章から用意に絵をイメージできます。ミスタもトリッシュもジョルノも登場します。
フーゴの回想という形で、フーゴを残して他のメンバーが船に乗り込むあのシーンが完全再現されるところも見どころ。
漫画を文章に「翻訳」していて、文章にするとこうなるのかとか、この文章を漫画にするとああなるのかといった発見があります。
欠点があるとすれば戦闘シーンがさらっと終わりすぎるところでしょうか。フーゴのパープルヘイズは大活躍しますが、わりとあっけない感じ。このへんは漫画の演出には敵わないですね。
とはいえ作品としての面白さ、ジョジョの世界観の再現性、その両者を高いレベルで実現している傑作です。
『岸辺露伴は叫ばない』
こちらは第4部の外伝短編小説です。
主人公は岸辺露伴。残念ながら他の4部キャラクターは登場しません。とりあえず露伴がよく叫びます。
以下の5作品が収録されています。
・北國ばらっど「くしゃがら」
・吉上亮「Blackstar」
・宮本深礼「血栞塗」
・維羽裕介「検閲方程式」
・北國ばらっど「オカミサマ」
どれも第4部的なホラーっぽさがあります。スタンド使いと戦う展開はありません。もっと純然とした怪奇現象や超常現象に露伴が巻き込まれ、ヘブンズ・ドアーを駆使してそれを切り抜ける、という展開がメイン。
なお「くしゃがら」はNHKでドラマ化もされた模様。
出来がいいのはこの「くしゃがら」だと思います。いちばんジョジョっぽさを感じました。台詞回しや演出の間が秀逸なんですよね。漫画が容易にイメージ化できます。
全体的に面白いですが、書き下ろしの「オカミサマ」は完成度で劣る感はあります。
『岸辺露伴は戯れない』
『岸辺露伴は叫ばない』に続いて発売された姉妹編。
構成は同じで、やはり岸辺露伴が主人公となり、さまざまな超常現象をくぐり抜けていきます。残念ながら4部の他メンバーは登場しません。
収録作品は以下の通り。
・北國ばらっど「幸福の箱」
・宮本深礼「夕柳台」
・北國ばらっど「シンメトリー・ルーム」
・吉上亮「楽園の落穂」
とくに印象的なのは宮本深礼の「夕柳台」。
なかでも岸辺露伴が公園の子どもたちを追っ払うシーンが秀逸です。
「すンませェーーん!ボール投げてくださァーーいっ!」
「あと棒も!棒もォ~~!!」
悪びれもせず子供たちが叫んでくる。あと少しズレていたら、ベンチではなく人に当たっていたかもしれないのに。
露伴は彼らの顔をたっぷり数秒見つめたあと、足下に視線を落とした。
「これを投げればいいのか?」
子供たちが頷く。露伴はスケッチブックをわきに置くと、億劫そうに腰をあげてボールと棒っきれを拾いあげた。
「いいとも」
応じるや否や、露伴は公園に隣接する民家の庭にボールを投げ入れた。続けて棒っきれを膝でへし折り、〈くの字〉に曲がったそれも投げ込む。
「たしかに投げてやったからなッ!」
(宮本深礼「夕柳台」)
ちなみに岸辺露伴を主人公とした短編シリーズは、荒木飛呂彦本人の手による短編漫画「岸辺露伴は動かない」が有名です。
上記の2冊はそこからスピンオフとして派生したオリジナル小説作品というわけです。
乙一『The Book』
こちらも第4部の外伝小説。小説家の乙一による長編です。
主人公は蓮見琢磨という名の高校生。東方仗助や広瀬康一らと同じ高校に通うオリジナルキャラクターです。
『恥知らずのパープルヘイズ』はジョジョの世界観を内部から描きました。一方でこちらは蓮見らオリジナルキャラの物語が、ジョジョの世界と交差するイメージ。
広瀬康一、岸辺露伴、東方仗助、虹村億泰、山岸由花子ら4部のメンバーはちゃんと登場しますが、彼らが話の中心になることはありません。
後半で虹村億泰の戦闘シーンが見られるのが貴重。仗助もがっつり活躍します。
全体的に暗い話なので好みはわかれそう。質は『恥知らずのパープルヘイズ』と双璧をなすと言えそうですが、人を選ぶ作品です。
ジョジョ自体も暗い面の多い作品ですが、その底にはつねに明るい光がある作風なんですよね。しかしこちらはベースに闇があります。だから作品としての手触りはまったく違いますね。
ただしキャラクターのセリフ回しや戦闘の演出などはジョジョを見事に再現しています。
ジョジョはアニメ化もされてます
ジョジョは第1部から第5部までアニメ化もされています。
第4部だけ作画が残念なのが痛恨の極みですが、全体的に非常に評価が高いです。
ちなみに海外でも人気が出た模様。遅咲きどころの騒ぎじゃないですが、この唯一無二の作品が外国でも評価されるのは嬉しいですね。
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