経済翻訳で上達したいならこの本『金融英語の基礎と応用』
金融分野の翻訳トレーニング本は意外といろいろ出ていますが、比較的新しい良書が『金融英語の基礎と応用 すぐに役立つ表現・文例1300』。
著者の鈴木立哉はマクロ経済や金融の実務翻訳者です。
これがかなり強力な本で、僕はうっかり3周してしまいました。
入門レベルを終えて中級者レベルに挑戦したいという学習者におすすめです。
金融分野の言い回しを習得できる
このテキスト、英語の勉強になるのはもちろんですが、それ以上に日本語の勉強になります。ここがポイント。
どういうことかというと、経済や金融の分野で使われる独特の言い回しが学べるのです。
たとえば次の英文をみてみましょう。
We expect more strength.
(『金融英語の基礎と応用 すぐに役立つ表現・文例1300』より引用)
ふつうに訳せば「われわれはさらなる力強さを予想している」みたいな感じになりますよね。
しかし本書ではmore strengthを次のように訳しています。
「われわれは今後さらに強含むと予想している」
(同書より)
強含むという言い回しは、経済や金融に慣れ親しんだ人でないと出てこないですよね。
このように、なんということもない英語表現でも、金融分野ではその分野独特の言い回しで訳さなくてはならないケースが多いのです。
本書ではそれが学べます。まさに翻訳のトレーニングにぴったりなテキストだといえるでしょう。
1300の短文を収録
本書の内容ですが、ぜんぶで1300の英文が掲載されています。だいたい2行か3行の短文ですね。そして英文の下に和訳を記載してあるという構成。
英文と和訳を対照させて読むことで、金融翻訳の勉強になります。
文章は専門的な媒体から引用されたものが多く、実践的です。読者はファンドの運用報告書や投資レポート、財務諸表、決算書類、経済学の論文、市場アナリストのレポートなどから抜粋された英文を読むことになります。
ページ数は263ページ。巻末には索引もついています。
また巻末の推薦図書がきわめて有益。金融翻訳の勉強に役立つ本や、仕事のときに備えておくべき本などを25冊ほどオススメしています。
著者が推奨している翻訳トレーニングとは
巻末では、翻訳トレーニングの方法にもさらっと触れられています。それが「原文と訳文の書き写しまたは音読」というもの。
使用するテキストはミルトン・フリードマンの『資本主義と自由』やガルブレイスの『大恐慌1929』など。訳者はいずれも村井章子ですね。
原書と翻訳書を両方とも用意し、原文と訳文を照らし合わせながら書き写していきます。
僕は本書の教えにしたがって、フリードマンの『資本主義と自由』でこのトレーニングをしました。たまたま原書と訳書の両方をもっていましたから。
名人のテクニックを体得できるので、オススメの勉強方法です。
初心者は柴田真一『金融英語入門』から
『金融英語の基礎と応用』は中級者向けのテキストだと思います。すでにマクロ経済や金融の仕組みをある程度理解している人が、英語と日本語のボキャブラリーを増強させるために読む本ですね。
経済や金融の仕組みもあまりよくわかってないという人は、本書のまえにまず入門書を読んだほうがいいでしょう。
オススメは柴田真一の『金融英語入門』。金融の基本的な仕組みを学びながら、金融英語の基礎を勉強できます。
巻末の参考図書も充実していて、初学者に超オススメ。
その他のおすすめ翻訳本についてはこの記事↑にまとめています。
参考にしてみてください。