ディケンズ『骨董屋』ちくま文庫版は訳が読みにくい
19世紀イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの名作『骨董屋』。
ドストエフスキーの『虐げられた者たち』など、本書から影響を受けた作品も多いといいます。
主人公の少女ネルとその祖父のふたりが、悪徳高利貸しのクウィルプから逃れて旅をする話です。
ちょっとRPG感があります。こういう話を読むと、もしディケンズが20世紀に生きていたらトールキンに触発されてファンタジーを書いたんじゃないかという気がする。そしてディケンズの力量からいって、それはとんでもない傑作になっただろうなと。
日本語訳がひどすぎた…
ドストエフスキーがこの本から影響を受けたと聞いて以来、ずっと興味をもっていたんですよね。
そしてある日、運良くブックオフでちくま文庫版を見つけました。
そのまま帰宅し、ウキウキの気分で読み始めるとびっくり。訳がひどいのです。日本語の流れが異様なほど悪く、音楽的な心地よさがまったくない。というか、心地の悪さがある。あたかもジャイアンのコンサートを聞いているかのような気分になるほどです。
ユーモアを上手く再現できていない点も痛い。ディケンズ作品の肝はユーモアにあるのですから。
どうしてこんなにひどいのか?
訳者は間違いなくすごい人なんですよね。東京大学の教授ですから頭はいいはずだし、英語力も半端ではないでしょう。
翻訳力のコアは外国語力ではなく日本語力の方にあると実感しますね。いくら頭が良く英語力に秀でていても、日本語の文章力に欠ける場合、上手な翻訳はできないということです。
結局原書を買って読むことに
結局、原書を買って読みました。原書のタイトルはThe Old Curiosity Shopです。
意味が取りづらいところだけちくま文庫で確認しました。ディケンズの文章はとてつもなく難解ですから、だいぶ無茶をした感があります。
内容はまあそこそこおもしろいです。『デイヴィッド・コパフィールド』のような傑作や、『オリバー・ツイスト』のような良作に比べると、一段か二段は落ちる感じですが。
ちなみに『デイヴィッド・コパフィールド』と『オリバー・ツイスト』は日本語バージョンで読んだ後に原書でも読破しました。先に和訳を読んでおくと、ディケンズ級の英文でも案外スラスラ読めますよ。
ディケンズの訳者で僕が好きなのは石塚裕子ですね。岩波文庫の『デイヴィッド・コパフィールド』は素晴らしい出来です。文章がうまい上に、ユーモアを表現できているところがディケンズの訳者として適任。
ディケンズの前期作品は入手困難なものが多いのですが、こういう人に訳してもらいたいものです。