分散社会かビッグブラザーか 野口悠紀雄『ブロックチェーン革命』【書評】

2020年10月24日野口悠紀雄

数々のベストセラーを出しているエコノミスト・野口悠紀雄による、ブロックチェーンの解説書です。

ブロックチェーン技術やそれに関連するビジネスだけでなく、社会制度の変革にまでふれている点が、類書には見られないこの本の魅力。社会科学者・野口悠紀雄の面目躍如といった感があります。

入門書を読んだ後の2冊目か3冊目に読むべき本ですね。1冊目に読む本ではないのでご注意を。

海外の本(タブスコットの『ブロックチェーン・レボリューション』など)と違い、冗長さがないところが好印象です。

 

中央銀行がビッグブラザーになる日

いちばん興味深かったのは、ブロックチェーンによる決済システムをどの主体が担うのかという話。3つのパターンがあり、それによって未来の社会は形が変わるといいます。

まず民間の組織が担うケース。この場合は中央集権的な組織は排除され、自律的分散社会が実現する可能性があります。そして究極的には中央銀行が消滅するかもしれない。

次に銀行が運営するケース。この場合はネットワークがクローズドなものとなり、完全な自律分散型の社会は実現しません。ただし中央銀行が消滅する可能性はあります。

最後に中央銀行が運営するケース。この場合、政府と中央銀行がビッグブラザーと化し、すべての金融コントロールを手中にする。かつてない管理社会が出現する可能性があります。

 

ブロックチェーン技術による決済システムを支配する主体がだれになるかで、未来の社会はまったく違った形を取るというわけです。また中央銀行などの制度、さらには国民国家というシステムのあり方にまで影響はおよぶでしょう。

言うまでもなく、野口悠紀雄は中央銀行による決済システムの独占を警戒しています。この人にはアナーキストに通じるほどの自由主義者精神が見られますが、本書においてもそれが遺憾なく発揮されています。

 

世界経済バブルと中央銀行

中央銀行がどこまで金融をコントロールするかという話は、現在の世界経済バブルの顛末にも左右されそうです。

リーマンショック以降、世界中の中央銀行が緩和マネーをばらまき、今では政府の株価維持政策とも結託してバブルを膨らませています。

 

この借金漬けの世界経済がクラッシュした場合、中央銀行がバッシングの対象になると思うのです。ちょうどリーマンショックの際に、投資銀行がバッシングにさらされたように。

そこまで行ってしまえば、中央銀行が金融コントロールを支配する方向には進めなくなると思う。世界世論がそれを許さないでしょう。

逆にいうと、バブルが延命しているうちに中央銀行が動き出したら、まずいことになるかもしれません。