三国同盟と日米交渉の裏話 加藤陽子『戦争まで』【書評】

2021年2月8日

加藤陽子の『戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗』(朝日出版社)を読みました。

ベストセラーにもなった『それでも日本人は戦争を選んだ』(新潮文庫)の続編です。

こっちのほうが話が専門的でおもしろいですね。

本書が取り扱うのはリットン調査団、日独伊三国同盟、日米交渉の3つ。驚愕の事実が次々に出てきて、目からうろこが落ちます。

ただ前作でもそうでしたが、学生との講義形式が個人的には苦手。生徒とのやりとりが鼻につく感じ。とはいえ内容の良さを打ち消してしまうほどの短所ではありません。

 

戦前日本は巨大な植民地帝国

日本が戦争に突入していく話の流れとして、以下のような筋書きが一般的ですよね。

世界恐慌が起きる→欧米の列強はブロック経済を作り上げる→日本はそこからはじき出された持たざる国だ→劣勢をひっくり返そうとして戦争に突入

 

しかし現在の歴史学からすると、この常識的な見方は間違っているそうです。

当時の日本は決して弱小なもたざる国ではなく、むしろ巨大な植民地帝国でした。本書は多数のデータを引用しつつ、それを明らかにしていきます。

中村隆英が『昭和史』で指摘していたように、1930年代の日本は工業化の時代だったのですね。そしてその工業製品を、朝鮮や中国に輸出しまくっていたのです。

 

日独伊三国同盟はドイツへの牽制球

日本・ドイツ・イタリアが結んだ三国同盟。これはアメリカを大戦に参戦させないための同盟でした。

ドイツはアメリカの参戦をなによりも恐れていて、それを阻止する役割を日本に望んでいたのですね。

では日本の側は三国同盟に何を期待していたのでしょうか?実はこの同盟は日本からすると、アメリカへの牽制ではなく、ドイツへの牽制でした。

当時破竹の勢いで連勝するドイツが大戦の勝利者になることはほぼ確実と考えられており、日本は戦勝国ドイツがアジアに向かってくることを恐れたのです。

ドイツからアジアの植民地を確保すること。これが日本の望みであり、三国同盟にはそのための秘密項目がバンバン盛り込まれていたといいます。

 

独ソ戦のときに日本がソ連を攻めていたら…?

1941年、ドイツがソ連を攻撃し、人類の戦史史上にも名高い独ソ戦が始まります。

このとき、松岡洋右と参謀本部がソ連を攻撃するべきだと言い出しました。実際にはこの動きは封じられ、日本は南へ向かいます。そしてこの動きがアメリカの逆鱗に触れ制裁発動、やがて日米戦争につながっていく。

独ソ戦が始まったとき、日本が北へ向かい、ソ連を挟み撃ちにしていたらどうなったのだろう?ここめちゃくちゃ興味がわきます。この辺を扱った本を色々と読んでみたい気持ち。

 

また南部仏印進駐に対するアメリカの制裁発動に関しても、裏話があります。

実はローズヴェルト大統領とハル国務長官は、日本への制裁を考えていなかったらしい。

しかし二人の留守中に、アメリカのタカ派が勝手に強硬路線を取ったというのです。大統領は後々までこれを知らなかった。

嘘のような話ですが、現在では実証されているようです。

歴史の本

Posted by chaco