覇権国なき世界の行方4つの可能性 ブレマー『Gゼロ後の世界』【要約】

2022年2月18日政治

名著と名高いイアン・ブレマー『Gゼロ後の世界 主導国なき時代の勝者はだれか』。

今更ながら読んでみました。

2011年の本ですが今でもぜんぜん有効。現在の国際社会の置かれた文脈を完璧につかむことができます。現代史は本書でブレマーが予想した通りの展開をしているといえるでしょう。

もっと早く読んでおけばよかった。

タイトルにある「Gゼロ」とはどういう意味でしょうか?簡単に言えば、世界にリーダーがいないということです。

アメリカは膨れ上がる債務の影響で世界の警察ができなくなりつつあります。2020年現在、その状況はさらに悪化中。

一方で、中国を始めとする新興国は国内問題への対処に精一杯で主導国としてのコストを負担する用意も意欲もないとのこと。みんなのためにコストを負担する暇があったら自国の利益を追求するわ、というわけですね。

 

本書の大まかな内容は次のとおり。

・第1章…Gゼロとは何かの定義。

・第2章…Gゼロへの道。第二次世界大戦終結直後のG1(アメリカの圧倒的覇権)から現在にいたるまでの国際政治史がざっくり説明されます。

・第3章…Gゼロがもたらす悪影響について。IT分野での競争、食料や水の争奪。

・第4章…Gゼロで得をする国や企業と、Gゼロで損をする国や企業について。日本は損をする模様。

・第5章…Gゼロ後の未来予測(後述)。

・第6章…アメリカはいかに行動するべきかを提言(後述)。

 

Gゼロ後の世界、4つの可能性

Gゼロは存在するだけで世界に悪影響をもたらす構造であり、長きにわたってそれが存続することはできないとブレマーは言います。

ではこれからの世界はどうなっていくのか?

著者は以下の4つのパターンを展望しています。

・G2
・協調
・冷戦2.0
・地域分裂世界

まずG2とは他に抜きん出た国力を持つ2国すなわちアメリカと中国が協調する体制のことをいいます。リーダーが二人いるということ。

しかしこれが実現するためには中国がリーダーとしての能力と自信をもつ必要があります。中国はその段階に達していない、とブレマーは見ています。国内問題に対処するだけで精一杯であり、主導国としてのコストを負担することはできない、と。

実際、中国の上層部もそのように考えているようです。おそらくこれは2020年の現在でも変わっていません。対外的な拡張があっても、世界の政治や経済のインフラを管理するリーダーとしての役目を目指しているというより、あくまで国内の経済問題や社会問題への対処の観点からそうしているのだと思われます。

 

次に協調。これは19世紀ヨーロッパのウィーン体制のようなシステムのことをいいます。G20を中心とした各国が協調して平和な世界を作るみたいなことですね。

しかしより複雑化した現代社会でそんな芸当を演じるのは無理だとブレマーは断じています。

 

次は冷戦2.0。アメリカと中国が主に経済分野で戦争状態に突入するシナリオです。

ブレマーはこの可能性は低いと見ています。ほぼ完全に別世界に住んでいたソ連とアメリカの関係と違い、中国は世界中の国と強固に結びついていて、紛争が発生したら自らにとっても多大なマイナスとなるためです。

 

最後は地域分裂世界。世界が複数のブロックに分かれ、それぞれがそれぞれの大国を中心にやっていくというシナリオ。

これがもっとも実現性が高いとブレマーは見ています。たしかに実際こうなりつつあるように思う。

ただしブレマー本人はこういうのを望んではおらず、むしろアメリカが復活し、かつてのように世界的公共財の提供者に戻ることを期待しているようです。

 

ブレマーいわくアメリカと日本はこうすべき

ブレマーは、アメリカは世界に積極的に関与しリーダシップを取るべきだといいます。

これだけグローバル化が進むと、経済だけでなく環境問題も安全保障も国際的な協調がないと解決できない。しかし国際協調にはリーダーシップが必要。リーダーは損ばかりする役回りなわけで、余裕のある大国にしか務まらない。

それができるのは復活したアメリカしかないというわけです。

そのためにはグローバル経済への投資が不可欠であり、債務の削減も必須(これのせいで外部に展開できなくなったのだから)。これをどうやってアメリカ国民を納得させるのかが政治家たちの腕の見せ所だ、と著者はいいます。

 

「日本語版への序文」には日本についてのコメントもあります。

日本はGゼロ世界においてアメリカと中国の板挟みになる厳しい状況に置かれます。しかし希望はあるとブレマー氏。

他のアジア諸国は、中国に100%飲み込まれてしまうことをよしとはしません。経済でも安全保障でも、なるべくリスクを分散させようとします。

そしてその選択肢のひとつに、日本との関係強化があります。

多角的にアジア諸国と関係を深めることで日本は強くなり、アジアにおけるアメリカや中国の独善も抑止できるのだ、とブレマーは言っています。

 

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